そんなにしょっぱくない料理
最近スーパーを皮切りに、会計時、機械がお金を吸い込む仕組みに変わってきている。
画面をタッチする場所を間違えたら大騒ぎだ。何度もふりだしに戻され、なかなか会計が終わらない。しかもスーパーによっては、楽天のポイントがついたり、追加でスーパーのポイントがついたり、どちらか一方だったりする。
あれ、このスーパーはどっちだっけ?いつもレジ前であたふたしなければいけない。やることが色々ありすぎてわたしの脳みそでは処理しきれなくなっている。ややこしい仕組みは苦手だ。いつもスーパーで買い物をしたあとはぐったりする。
ぐったりしながら、お昼に食べるためのおにぎりを惣菜屋で買った。隣にはスペイン料理のパエリアやら、じゃがいもをハーブで炒めたものが所狭しと並べられている。
お、おいしそう。
誘惑に負けそうになりながら、ぐっと堪えていたら、ひとりの青年がスペイン料理の惣菜屋の前で立ち止まった。
肩にかかったリュックは年季が入っていた。
「こういう料理って塩辛いですよね?」
「いえ、うちのは塩加減を抑えているので、ちょうどいいお味ですよ」お店のお姉さんは笑顔を崩すことなく言った。
「へーそうなんですか。ぼくが食べたロシア料理もそんなにしょっぱくなかったな」
「はーそうなんですかぁ。いかがですか?こちらのスペイン料理もおいしいですよ」お姉さんは、陳列された惣菜を示しながら青年に勧めた。
青年は、お姉さんとスペイン料理を見比べながら言った。
「うーん、でもたったいまロシア料理食べて来ちゃったから、お腹いっぱいなんで!」
そう言い残すと颯爽と人の波を掻き分けて歩いていき、いつのまにか姿が見えなくなった。
ひとのほうがよっぽどややこしかった。