映画3本、覚え書き
アマゾンプライムビデオにて視聴したのは下記の2本……
第3婦人と髪飾り(2019年 ベトナム アッシュ・メイファ監督)
レベッカ(1940年 アメリカ アルフレッド・ヒッチコック監督)
NHKbsプレミアムシネマで放送された映画は
8月の家族たち(2014年 アメリカ ジョン・ウェルズ監督)
まず、ベトナム映画『第3婦人と髪飾り』はとにかく映像が美しい。
女性たちの清楚なアオザイとその肩にかかる長い黒髪。山影にたゆたう朝もやと、たっぷりとした水が流れゆく河の風景。そして、14歳の少女が顔も知らない夫のもとへ「もう一人男児を生ませる必要がある」富豪の家に「3人目の妻」として迎えられる残酷さ。
新妻・メイが妊娠、出産するまで、その豪邸ではさまざまな事件が起こります。
使用人たちの密通がばれて、男はムチ打たれ女と子どもは寺へ追放。
第1婦人が産んだ富豪の跡取り息子サンは「父の第2婦人」に恋するあまり、自分のもとへ嫁してきた少女には手をつけません。離縁の話し合いがもたれますが実家の父親に拒まれ、その少女は自殺。
最初のうちは自我がないかのようだった無邪気なメイもまた、女であるがゆえに品物のように扱われ、幸せにはなれないのだと悟っていきます。
やがて無事に出産。生まれたのが「娘」であることを悲しみ、「毒がある黄色い花」を我が子の口にふくませてしまうのです。
唯一の救いは第2婦人の次女(たぶん7~9歳)の存在でしょうか?
弱った家畜を救おうとしたり、嫌いなものはガンとして食べなかったり、意志の強さを示します。
ラストにこの少女が自分の髪を短く切りそろえるシーンは「新しい時代を前にして歩み始める女性」を印象づけていました。
ヒッチコック映画の『レベッカ』こちらは白黒映画です。
言わずと知れたサスペンスの名手・ダフニ・デュ・モーリエの原作。ちなみに代表的ヒッチコック映画『鳥』もこの方の原作とか……。
ボートの事故で美しい妻・レベッカを亡くした貴族、マキシム・ド・ウィンザーのもとに、後妻として入った若い女性。屋敷には亡き前妻の「影」がそこここを支配していて……。
幽霊の出ないホラーとして成功しているのは、ひとえにレベッカ付き(憑き?)使用人ダンヴァース夫人の存在。無表情で物音一つさせずにヒロインを追い詰めていきます。
やがてレベッカの素顔と死の真相が明らかになり……。
黒い小型犬の使い方が「上手いなぁ」と感心したのはわたしだけでしょうか?
豪華キャストの『8月の家族たち』にジュリエット・ルイスとベネディクト・カンバーバッチが出演している! ユアン・マクレガーは最後まで気づかなかった!
……ガンをわずらっている毒舌家のバイオレット(メリル・ストリープ)の夫が失踪。彼は遺体で見つかります。その葬儀とその前後のスッタモンダな群像劇です。
バイオレットの娘たち三人は長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)次女のアイビー、三女カレン(ジュリエット・ルイス)
バイオレットが貧しい少女時代を物語り、娘たちを激しく責めれば、長女バーバラの娘(14歳)にカレン(三女)の婚約者がマリファナを勧め、次女アイビーは従兄弟のチャーリー(ベネディクト・カンバーバッチ)とこっそり付き合っていて……しかしチャーリーは実は異母弟だったことが暴露されてしまう……。
なんというか、酒好きな亡き夫と薬漬けのガン闘病妻の取り合わせも壮絶ですが、その娘たちの背景も壮絶。
今回視聴した3本は作風こそ違うものの、どれも「夫婦」や「家族」をテーマにしていたような気がします。
「で、この中で一番人に薦めたいのはどれ?」
と聞かれたならば、ゆったりとした独自の美しい時空間を放つ『第3婦人と髪飾り』をオススメしたいところです。