メスギツネ
魔法少女がやられます。ソフトリョナ、ヒロピン。
「さっきの魔法少女、大丈夫かな。どこに吹っ飛ばされたんだろう」 教室では、ざわざわと重い空気が漂っていた。 窓に張り付いて戦闘を見守っていた生徒たちだが、運動場に2人の姿がなくなり、それぞれ席へと戻っていた。 「俺たちを守ろうとしてくれていたんだよな」 「でも敵が強すぎる…。その差は圧倒的だったよ」 正義のヒーローが大ピンチという異常事態だ。誰も、百合がいないことなど気が付かない。リリーの正体はばれていないようだ。 「何これ…!みんな見て!」 突然、一人の女子生徒が
リリーは、ハクにステッキを向けた。その先端から、光の玉が発射する。 それは真っ直ぐ直進し、彼に命中した。 (やった!このまま…!) 運動場は、瞬く間に砂煙に覆われる。 リリーは攻め時と判断し、そのまま何発も追加で発射した。 (反応がない。倒したのかしら?) 20発ほど打ったところで、ようやく攻撃をやめた。 そして、土煙が晴れるのを待つ。その時だった。 「なっ…!?」 突如、足元が光り出す。そこから植物のように鎖が生え上がると、あっという間にリリーを拘束した。 両手
「なんか運動場にやばい人いてるみたいだよ」 「え?なにー?不審者?」 「やばいじゃん。避難とかしなくていいの?」 昼休みの教室は、いつもと違う不穏な空気に満ちていた。 窓から見える運動場の中心に、異様な格好をした男が1人立っている。 夏の太陽の下、いかにも暑そうな白衣姿。しかし、その手には黒いグローブが付いている。 何をするでもなく、ただ突っ立っている。 彼の姿を見て、はっとした表情を浮かべた生徒が、1人だけいた。 長瀬百合だ。 彼女は可愛らしい顔に似合わず、嫌悪に
「さあ、早く仲間になりなさい。これ以上情けない姿の魔法少女なんて、誰も見たくないでしょう?」 「ああっ!ぐう…っ」 頭をぐりぐりと踏み続けられ、リリーは屈辱的だった。 全く相手にならない。相手が強すぎる、そして自分が弱すぎる。今まで順調に悪を倒して来たのに。 「それか、もっと楽しませてくれるわけ?」 (こんなところで…終わりたくない…!) レイの足がどけられたのを確認すると、リリーはゆっくりと立ち上がった。 途中に体が痛み、倒れそうになりながらも。また立ち上がった
レイの鞭が迫る。 リリーはとっさに身を翻した。が、避けきれず、右肩を掠めた。 「くっ…!」 思っていた以上の鋭い痛みに、顔を顰める。しかし休む暇なく、また鞭が振るわれた。 しかし今度は、直接痛めつけるためではない。生きているようにぬるぬると動く鞭の動きに、リリーは翻弄された。 そして、片方の足首に鞭が絡みつくのを許してしまったのだ。 (しまった!) 「ふふ、つーかまえた」 レイのにやり笑いに、ぞくっと背筋が凍る。 まずい!そう思った時には遅かった。 足が右に引っ張られ
「今日は満月。儀式には最適ね」 ところどころ壊れた天井の隙間から、月明かりが差し込む。薄暗く、埃っぽい空間。 港近くの廃倉庫。元々、貿易関係の荷物置き場として使われていたらしい。木箱や鉄筋が、無造作に置いてけぼりのままだ。 そんな廃墟に似合わない、美女が1人。 ブロンズのウェーブががった髪に、青い瞳。薔薇のような真っ赤な唇。そして、体にぴったりと吸い付くような、黒光りのスーツ。大きな胸が収まり切らず、髪を搔き上げるたびに、むちっと揺れる。 現実離れしたその見た目は、映画で