学問に「理」と「情」を 〜中野剛志先生 ファン10周年 小語り
◼️たまたま見た朝の情報番組で中野剛志という人物を知り、その日のうちに氏の本を注文してから今日で10年となる。
今回は、これまでたくさんの知識や考え方をもたらしてもらった感謝と共に、ファンの1人として少しばかり語ってみようと思う。
◼️私はもともと文学の方面から来た人間であり、そのためか、最も心に残っている中野剛志先生の文章は実は先生の自著の中にはない。
数々の作品を押さえて心のベストテン第1位になったのは、
政治史学者・河原宏さん(1928-2012)の遺作である、『秋の思想 かかる男の児ありき』(幻戯書房 2012)に寄せられた解説文である。
解説であるから。随筆風で、普段の理論展開の文章とは雰囲気違うでしょう。中野剛志という1人の青年の姿が見えてくる。
◼️ちなみに。中野先生はスコットランド・エディンバラ大学に留学していたが、その頃の論文の1つのタイトルは
であり、これはデイヴィッド・ヒュームの言葉からとったものだ。
「あなたの科学を人間らしく」。
そして学問において理と情を兼ね備えよと、若き中野先生が呼びかけている。
中野先生が、今でもこの考えを大切に持っていればいいなと思う。きっとそうであると信じたいのである。
◼️続いて『保守とは何だろうか』(NHK出版 2013)、これが2番目によく読んだ作品だ。
生まれてから経済学など縁の無かった私が、この本で初めて財政政策や金融政策の流れや役割を知った。
まだケインズとハイエクの区別もつかず、受験生さながら蛍光ペンを引いて理解しようとしたものだ。正に勉強だった。
加えて、この本の中でも日本の農業を応援してくれていて大変嬉しかった。
本州から北海道への移住への決心・引越し・研修・就農と色々あった時期と、TPP騒ぎや農協改革が叫ばれた時期が重なり何かと不安だった頃。先生の日本の農業へのエールにとても励まして頂いた。今もなお感謝している。
◼️さて現在は2021年、10月。岸田内閣がスタートした。新しい資本主義とはどのようなものだろうか。
そろそろみんなコロナのあれこれから抜け出しそうな、もうちょっとなような。幾分まだ社会にもどかしさが残る。
中野先生はこの10年の間もずっと精力的に本を出し続けていた。日本はどのように変わっただろうか。
まぁねえ…。笑
智に働けばMMT、情に棹させば小林秀雄、意地を通せば新型コロナ…とかくこの世は…とでもいいますか、相も変わらず住みにくい。中野先生はずっとずっと、とても大きなものを相手にして戦い続けていると思う。
◼️終わりに。私は若い頃、伝統工芸の職人から技術を教わっていたことがあった。ある時に親方が、「職人は60代で半人前、70、80代でようやく一人前だ」と冗談混じりに口にしていたのを覚えている。
これ、保守思想家も似たようなものだとすると、中野先生の年代はまだ血気盛んな学生くらいでしょうか。季節で言えば春か夏か。
今後もますますのご活躍を期待しております。
10年分の感謝を込めて。 2021.10.27
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※2022.9.17追記 中野剛志先生と三橋貴明さんの対談動画を拝見し、これをもちまして先生からいったん離れる決心がつきました。今まで多くのことを学ばせて頂きました。本当にありがとうございました。