見出し画像

飼養衛生管理基準改正案のこと農水省に問い合わせてみた

6月15日追記

こんにちは。動きがあったようですね。

パブリックコメントが締め切られた翌日6月12日にこのような記事が出ました。

農水省は12日、飼養衛生管理基準の最終案を示した。防疫対策を強化する大臣指定地域の「舎外飼養の中止」の文言を削除し、豚は条件を満たせば日中は放牧可能とする考えを明らかにした。また、放牧の停止や制限があった場合の「畜舎の確保」の文言は「避難用の設備の確保」に変更し、同省は「放牧する農家全てが畜舎を建てる必要はない」とした。

・大臣指定地域の舎外飼養の中止の文言を削除ということで、放牧農家一安心ですね。削除まで行くとは思わなかったので驚きました。

・畜舎の確保を強制しない、避難用の設備の確保に変更。このくらいなら協力できそうですね。もちろんそこにかかった費用の補償も求めていいと思います。

同日の食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会で提示した。来週答申としてまとめる予定だ。

・来週まとまって、最終決定という感じでしょうか。

5月13日~6月11日の国民からの意見募集を踏まえ、豚、牛などの両基準から「大臣指定地域においては放牧場、パドック等における舎外飼養を中止」の文言を削除した。

・パブリックコメントに意味があるのだなと実感しました。 

豚は新たに、大臣指定地域の放牧場の取り組みとして「給餌場所における防鳥ネットの設置及び家畜を収容できる避難用の設備の確保」を盛り込んだ。避難用設備は、夜間にパイプなどで囲い、豚をまとめて管理できれば良く、新たに畜舎を建てる必要はない。必要設備の補助は検討中。施行は20年11月だが、21年4月まで猶予期間を設けた。

・必要設備の補助はぜひお願いします。日付の部分は、家畜や内容によって色々と違うようなのでややこしいです。個別にチェックが必要そうです。

また、「放牧制限の準備」で、都道府県知事による放牧停止や制限があった場合の備えとして、豚、牛ともに、家畜の体調を管理しやすいように放牧の範囲を狭めて目が行き届くようにする移動や、避難用の簡易設備の確保、出荷などの準備を農家が自分の経営に合う形で選び、対応するよう明記した。「畜舎の確保」という表現はなくなった。

・柔軟に変えて頂いたと思います。ありがとうございます。こちらもできる限りの努力をします。

大臣指定地域は、野生動物が豚熱やアフリカ豚熱、口蹄疫(こうていえき)に感染した場合に設定する。

・今後このような地域が出ないことを祈ります。そして、現在も続く豚熱の流行が早く収束しますように。

・最後に。6月12日に開かれた家畜衛生部会のリンクを張っておきます。様々な資料が載っていますので目を通しておくとよいかもしれません。

それではこの件の投稿はいったん終わります。ご協力頂いた皆さま、お読み頂いた皆さま、ありがとうございました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

こんにちは酪農家ヤコです。

農林水産省による飼養衛生管理基準改正案がニュースになっていました。皆さんはご存知でしたか。私はこちらの記事で知りました。

日本農業新聞  2020年6月8日
農水省が7月決定を目指す家畜の「飼養衛生管理基準」の改正案に、豚や牛などの放牧制限につながる事項が盛り込まれたことで、放牧で豚を飼育する農家に波紋が広がっている。豚熱のワクチン接種地域の24都府県で豚の放牧が実質できなくなり、それ以外の地域でも豚や牛は畜舎の整備などを義務化する。長年の経営を抜本的に見直さなければならない農家もいる中、科学的根拠を示さず案を示した同省の姿勢に疑問の声が相次ぐ。

豚だけでなく牛も放牧制限となれば我が牧場にも影響が及ぶ可能性があります。畜舎の整備の義務化というのも、畜舎を持たずに放牧している農家さんもいるのでなかなか厳しそうです。なんでも罰則もあるとか。大丈夫かなぁと心配になりますね。

でもここでいったん落ち着いて。

この手の話はたいてい記事を読んだだけでは実態をつかむことが難しいです。ましてや日本農業新聞なので、どうしても農家に同情的な記事の書き方になるものです。いやもちろん心配して頂けるのはありがたいんですけど。

というわけで、農林水産省に電話して問い合わせてみました。(私こういうの好きなんですw)

そして分かったことをいくつか→

・今回の基準改正は、今年の4月3日に公布された改正家畜伝染予防法を受けてのものである。

・特に豚と猪に感染する伝染病拡大の防止が大きな目的となっている。

・内容は、家畜飼養者が普段からできる対策(野生動物進入防止対策、人や車両等の出入り対策など)~病原体が農場に侵入した場合の緊急の措置など様々である。

・罰則規定もあるが、まずは指導などから始まる。

・6月11日までパブリックコメントを募集しており、既に多くの声が寄せられている。

・法律の運用については、まだ細かいことは決まっていない。

・豚や牛の全ての放牧を直ちに制限するというものではない。

・現在、豚熱が流行している地域でも、直ちに放牧を制限するかは決まっていない。おそらく猶予期間を設けると思う。パブリックコメントを募集中である。

・放牧制限を行う場合、農場1件ごとか、自治体単位か、全国規模になるかも分からない。

・7月1日からは、とりあえず消毒や衛生管理区域の設定など、伝染病予防のためにできることから始めてもらえたら。

・豚の放牧農家では、放牧制限がなされる場合の畜舎の確保が規定されているが、現在畜舎を持たない農家がいきなりコンクリート製の立派なものを建てる必要はない。簡易的なビニールハウスなどでもかまわない。

・実際に伝染病が発生しても畜舎が用意できていなかった場合は、家畜の早期出荷など別の方法でで対処してもらう。豚(や他には肉用牛)ではそのように想定しているが、では乳用牛はどうするか、といったことは、細かいことはまだ決まっていないパブリックコメントを募集している。

・放牧制限に伴う損失や費用の増大に対する財政支援は当然考えている。根拠になるのは家畜伝染予防法第34条、第60条である。

・愛玩動物の飼育禁止というのは、伝染病が発生した場合に衛生管理区域内にそのような動物を入れないようにすること。想定は猫や犬。愛玩用のヤギやめん羊は想定外である。

ざっとこのように教えて頂きました。いかがでしょうか。

ちなみに⤵︎が農水省による基準改正の説明です。目を通しておくのが良いと思います。

下の添付画像にありますように、家畜ごとに内容が少し違うようなので、ご自分の農場にあてはまる箇所を確認して下さい。

画像1

画像2

まとめ

・放牧制限や畜舎の確保など放牧農家の生活が変わるような大きな変化は、少なくとも伝染病が蔓延していない地域ではすぐに求められるわけではない。蔓延している地域でも猶予期間や代替え案もある。内容をよく読み落ち着くことが必要。

・改正前の現段階ではまだ細かい部分は決まっていないことも多い。

・担当者さんがパブリックコメント(皆さんからのご意見)を送ってもらいたがっている。

・まだ不安が残る農家さんは、その不安を農水省に直接伝えるべし。

・そしたら、けっこうこちらの意見も鑑みてくれそうな感じはある。法律の内容が変わるとか施行日が遅らせられるとかではないだろうけど、実際の運用面に働きかけることはできそうかなと。

農水省へのパブリックコメントは6月11日まで。 

期日が過ぎても、メールでも電話でも。農家の声を伝えましょう。

先ほど貼り付けた基準改正の説明リンクの下の方に、担当部署への電話番号、またはご意見・お問い合わせフォームが掲載されています。

周知が足りないために農家さんの不安が増大している案件のように思えました。こちらも落ち着いて。冷静に行政側とコミュニケーションを取り、心配事の解消を図っていきましょう。

相手は農水省だけではないですよ。農協、自治体、ご近所さんでも。話をして、気持ちを伝えていくことで、きっと農政が動くはずです。

これから続報も出てくるでしょうから、しっかりチェックしておきましょうね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここまでお読み頂きありがとうございました。それでは最後に、今回私が農水省の担当者さんに電話で直接伝えたことを書き出して、終わりにしたいと思います。


・豚熱の全国的な広がりは、政府が進める畜産物輸出促進政策の影響もあったのではないか。清浄国から汚染国になることを恐れてワクチン接種が遅れた可能性はないか。もしそうであるなら、その結果生じた影響を放牧農家が受け過ぎるようなことは避けてほしい。


・うちの牧場は冬以外放牧をしているが、伝染病の蔓延予防のために仕方ないとは言え放牧が全くできなくなると、外に生えてる青草を食べられないので乾燥させた牧草を食べさせなければいけない。

自家で作ってある牧草の数には限りがあるので足りなければ外部から購入することになる。その費用がかさむことが考えられるので、このような場合の補償もしっかりお願いしたい。

・パドック(遊び場)に出すことも制限の対象とあるが、うちの場合はパドックにさえ出せないと牛舎の糞尿掃除が満足にできず、かえって不衛生な環境になってしまう。その辺りは柔軟に考えてほしい。

・農政の予算確保は難しい状況が続いているようだけど、ぜひ頑張って頂きたい。よろしくお願いします。