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(かつての)読書感想文が良くなかった

 映画や本を他人にオススメするのが苦手になったのは多分読書感想文のせいだ。感想文では本の中からなんとか自分の人生における学びを見つけて表現しなければいけない。「かくかくしかじかで主人公は逆境に立ち向かい打ち勝った。それは〇〇のおかげである。私もそうありあたい。」これが正解。子供が本を読む上で大事な姿勢ではある。すべてのことに教訓を見出す発想力は人間の大きな力だ。冷たい石が温まって「石の上にも3年」などと言うような力だ。だが作品に向き合う姿勢を学習する場が、読書感想文や読解問題だけではレビューが上手くなるはずもない。

魅力的な作品紹介のパターンは3つだ。

① 作品に触れて迸る情熱を熱く語る。・・・自分が何に感動したのか。読書感想文と正反対。特殊な視点、その一点だけを推して推して圧倒する。ラジオで新曲を聴いて「Bメロのひとことめの歌詞の最後に伸ばした母音の響が美しいと思った」ならばなぜ美しく感じたのか、どんな情景を思い浮かべたのかそれをひたすら深める。受け手はその情熱に「世間では凡作だと言われている曲だが、そこまで言うならその母音だけ聞いてみるか」となる。絶対に気になるはずだ。

② 類似性で語る。・・・「インド版パイレーツオブカリビアン」「ここがあの作品のオマージュ」「〇〇の流れを汲む…」「A系の作品群にBという新機軸を持ち込んで…」など、ジャンルの知識量で説得する。似ているものが好きな人は興味を持つ。

③ 技術力を解説する。・・・「この筆遣いのここがこう凄い」「凡人では思いつかないコード進行」「この映画でステディカメラが発明された」専門家がよく言うやつ。素人に干渉のポイントをわかりやすく解説する。そう言われると自分の目で確認したくなる。だが冷静になって聞くと、技術力のすごさを褒めているだけだったりする。

 もっとある気はするけど①が言いたいだけだからこれ以上のことは詳しい人にかいつまんで教えて貰えれば良い。

 これは人のオススメ紹介文を添削させられて分かったことだ。それは完璧な感想文だった。どんな教訓、知識が学べるのか、その作品に出会って自分の人生がいかに好転したかが書かれている。だが少しも魅力を感じない。それはそうだ。基本的にどんな作品も興奮したいから、笑いたいから、泣きたいから、感動したいから手に取るものだ。学びは後から自分で掴むもので、人から押し付けられるものではない。我々のように大した専門知識や審美眼を持たない一般人がもうひとりの一般人に対して好きな作品の興味を持ってもらいたいなら、これはもう①の手法しかないのだ。

 ということを忘れずにいたいと思って「読書感想文のせいでこんなことにも気づけなかった」と書いてみたが、もしかしたらコンクールで入賞するような子どもたちの作品は①がよくできていたのかもしれない。

 ならそれを教えてくれよ〜

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