【中編】ゼロ富士ゼロの思い出:雲海荘まで
前編
ついにゼロ富士ゼロの実行
9月15日(木)スタート「富士塚」まで
仕事を終えて一時帰宅。
仮眠する予定がほとんど寝られず。
ちょっと贅沢して新幹線を使う予定だったので、
東京駅から三島へ向かう。
崎陽軒のシュウマイ弁当を食べようと朝から思っていたのだが、
終電に近い時間だと売り切れていることは想定外だった。
売れ残っていたお弁当(1,000円くらい)を購入したのだが、
「それならおにぎりでいいじゃん」と後から気づき後悔した。
三島から電車を乗り換え、吉原駅へ。
この時点で2330くらい。
ここから海に向かって歩いて行き、
2400に海タッチからのスタートを想定していた。
この辺りからルート3776の旗を見かけるようになりテンションが上がる。
地面にもルートガイドがペイントされており非常に分かりやすい。
海に近づいていくのだが、想定外の出来事が起こる。
真っ暗すぎて怖いのだ。夜の海はとても怖い。
そして海岸に降りるための階段を見つけることができず、
一段上がったところから海を眺めてスタートとすることにした。
どちらにしろテトラポットだらけで海タッチはできなかったと思う。
この辺りは事前調査と余裕を持った時間設定をするべきだった。
私は「富士塚」からスタートしたのだが、
もう一つの「田子の浦みなと公園」だと海タッチが容易だったのかもしれない。
9月16日(金)第1チェックポイント「よもぎの湯」まで
「さてスタートしますか」と呟いて歩き始める。
YAMAPでログを取ろうとしたのだが、興奮して忘れていた。
それ故にログは一切残っていない。心のログだけ。
最初は市街地をひたすらに歩くだけである。
いい感じの喫茶店や飲食店、フィリピンパブを眺めながら。
途中のセブンイレブンで補給をしようと思っていたのだが、
一発目に出会ったセブンイレブンはまさかの営業時間外。
ちょっと不安になったが、まあ大丈夫だろうと信じこむ。
大通りに合流すると、そこからはひたすら一本道。
分かりやすい道をずっと歩く。
微妙に傾斜がついているのが面白い。
富士山の裾野を歩いているんだという事実を感じる。
途中のミニストップでアイスを買って食べたり、
自販機でジュースを買って休憩しつつ歩いた。
徐々に車も減り、民家の数も減ってくる。
明るさよりも暗さが目立つようになってくると急に心細さが出る。
ヘッドライトを手に持ちつつ、ザックにも赤色ライトを装着した。
大型トラックに追い抜かされることが何度かあり、
安心しつつ怖さもあるので、ライトの準備を絶対にお勧めする。
そんな感じで歩いていると0240頃に「よもぎの湯に到着。
公式ルートではここまで約12kmとなっているので、良いペース。
1時間で5kmくらいのウォーキングといった感じか。
ここで1泊することが公式プランでは推奨されている。
確かに7月や8月に実行するなら、それがいいのかもしれない。
炎天下の中でアスファルトをここまで歩くとかなり疲れるだろう。
日陰もほとんどないので、余計に体力が削られているはず。
9月16日(金)第2チェックポイント「PICA表富士」まで
ひたすらに暗い。暗黒の道。
ヘッドライトの光を頼りにずっと上がっていく。
夜の山ってこんなに怖いんだなと考えていた。
この区間はダイアンのポッドキャストをリピートしてた。
ありがとうダイアン。
2時間くらい歩いていると徐々に空が明るくなってくる。
朝が来ることに感動したことを覚えている。
雲もなく、雨のリスクが低そうなことに安堵した。
地図上だと破線ルートが出てくる。
明らかにショートカットなのでどうしようかとても悩んだが、
徐々に明るくなっているものの登山道はとても暗い。
さらには「熊目撃情報」の看板がかかっており心が折れた。
多少時間がかかるだろうが、アスファルトの道を選択した。
道にこういう看板が出てくるようになる。
着実に進んでいることが実感できて嬉しい。
0600頃に「PICA表富士」に到着。
入り口にあるベンチに座って一休み。
この辺りから疲れが出てくる。
仮眠しようかなと思ったが、もう少しで山小屋だし頑張る決意。
テン泊している人たちやバンガローに泊まっている人たちがいて、
楽しそうで羨ましさを感じた。
「なんで俺はこんなに急いで歩いてるんだ?」
「もっとゆっくり楽しめばいいのに」
という自問自答が始まる。
キットカットと柿ピーを食べながら山小屋までのルートを確認。
①このままロード道を歩き、料金所から登山道に入る。
②ここから登山道に入り、直接山小屋に向かう。
のルートがおそらく存在している。
もうアスファルトに飽き飽きしていたこともあり、
②に進むことを決意し、ランニングシューズから登山靴に履き替えた。
9月16日(金)第3チェックポイント「雲海荘」まで
ようやくアスファルト地獄から解放されたことに安堵。
柔らかい登山道を進んでいく。
楽しく歩けており、これなら余裕やんという甘い考えが浮かんだ。
(この数時間後に絶望することになる。)
1時間程度歩くと、高鉢駐車場に到着する。
時刻にすると0730頃。
トイレもあるが、閉鎖されていて悲しさを感じる。
ここからまた登山道に突入する。
熊注意のテープも貼られており、ちょっとピリッとする。
熊鈴も必携である。
途中で高鉢ルートから破線ルート(村山古道)に分岐するのだが、
その分岐点を通りすぎてしまい、15分くらい進んでから戻った。
気持ちの良いトレイルをサクサク歩くことは注意。
その分岐の写真をとっておらず申し訳ない。
ヤマレコに残しておいて下さってる方がいたので参照。
ここからが結構しんどかった。
急に斜度が上がるのだ。そして日も上がってきたことで暑い。
眠気も出てきた。
破線ルートだけあり、あまり整備されておらず、
倒木を跨いだり、しゃがんで抜けたりと動作が大きくなる。
一方で歴史を感じることが出来るので、
そういう意味ではとても面白いルートだと言える。
途中でお地蔵さんがいる開けた場所に出たので休憩。
昔の人はこの道を歩いたのかと思い、感慨深くなる。
御供物のつもりで、柿ピーを食べて再スタート。
徐々に森林限界が近づいているのが分かる。
そうするともう少し山小屋なので気持ちも楽になってくる。
ここで地元のおばさま二人組に遭遇する。
きのこ取りをしているらしい、元気で何より。
「海から来たんですよ〜」と伝えると、
「じゃあこれ食べえ」と自分のザックから果物を出してくれた。
カットされた梨と瓜を数切れいただき、
体力と心が回復する。とてもありがたい。
ただ単に好きで歩いているだけなのに、
こういう無償の好意を受けることが申し訳なくなるが、
自分も誰かにこういうことをしてあげようと強く思った。
おばさまに別れを告げて、再度歩き始める。
五合目の看板が見えてきて、徐々にゴールを感じる。
ついに森林限界を超えて、山小屋が目に入った。
1030ごろに「雲海荘」に到着。
海をスタートしてから10.5時間かかったことになる。
お腹も減っていたが、何よりコーラが飲みたくて仕方なかった。
「今日予約しているものです」と名前を告げると貸切であることが判明。
大部屋を1人で使えるとのことだった。
ラッキーと思いつつも、ちょっと寂しい。
山小屋は知らない人と会話するのも楽しかったりする。
コーラと焼きそばを注文し、美味しくいただく。
おそらく6合目までは観光でくる人も多いのだろう。
登山風ではない人が小屋の外で写真を撮っているのが見えた。
お腹もひと段落したところで女将さんとおしゃべり。
「明日朝イチで登って、海まで戻ろうと思います」と伝えると、
「明日天気悪いから今日行った方がいい、若いから行ける」と悪魔の囁き。
なんてことを言うんだと思ったが、翌日は確かに天気が悪かった。
流石のアドバイスである。ありがとうございます。
ザックの中から不要なものは置かせてもらい、
荷物を軽くして、山頂を目指すことにした。
続きは【後編】で
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