【5/16】過度な楽観?原油価格の行方
年初のリスクオフ相場に比べると世界市場は安定して推移しています。
特に米株と新興国通貨を安定させ、ゆっくりとしたドル安進展とあいまって、現在はリスクオン相場となっています。
■原油6カ月ぶりの高値
米原油先物(WTI=ウェスト・テキサス・インターミディエイト)CLc1は一時1バレル=47.02ドルと、6カ月ぶり高値に上昇しました。
ただその後は上げ幅を縮小し、0.47ドル高の46.70ドルで清算しました。
国際エネルギー機関(IEA)が2016年の世界原油需要の伸びを日量120万バレルとし、4月に示した予想の同116万バレルから上方修正したことを受け、WTIは朝方の取引で上昇しました。
ただその後、市場情報会社のジェンスケープが公表した統計で、米原油先物・指標原油の受け渡し地点であるオクラホマ州クッシングの10日までの週の在庫が54万8923バレル増加したと判明すると、原油先物は上げ幅を縮小しました。
■世界的楽観視化
年初は原油価格の下落が猛威を振るい、世界市場は大混乱となりました。
この基調が変わり出したのは、3月のIEAの見解表明でした。
原油価格が底を打った可能性があるとし、その根拠として、米国と他の石油輸出国機構(OPEC)非加盟国の生産が急速に減少し始め、イランの増産がそれほど大規模でないことを挙げました。
この原油価格の楽観視がリスクオンを促進し、様々な状況に影響しています。
日銀が4/28に現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)を維持することを表明した途端、追加緩和期待への反動で円高と株安が進んでも、ドル/円JPY=EBSが105円を割り込まず、日経平均が足元で1万6500円台を回復しました。
世界的にリスク許容量が今年1、2月ごろよりも大きくなっていることが影響しています。
さらに2017年3月期のトヨタの営業利益見通しが前年比マイナス40%だったにもかかわらず、「トヨタショック」のような市場変動が抑えられている背景には、この原油価格の堅調さを起点にした世界的なリスクオン相場への安心感があります。
このように原油価格の安定が東京市場でも安定的な価格変動をもたらしています。
■リスクはゼロではない
しかし、原油価格についてはあまり楽観視はできません。
最も大きなリスク要因は、サウジアラビアの動向です。
同国の構造改革を推進しており、改革派のムハマンド副皇太子が旗振り役なって、5月からそれが表面化しています。
その内容として、エネルギー・産業・鉱物資源省という同国の国内総生産(GDP)の53%を所管する巨大官庁が誕生しました。
また、1995年から石油鉱物資源相を務めてきたヌアイミ氏に代わり、新エネルギー相に国営石油会社・サウジアラムコIPO-ARMO.SE会長のファリハ氏が就任しました。
そして、サウジアラムコは新規株式公開(IPO)をめぐって、近日中に選択肢を公表するとの見解を10日に示しました。
公開される株式は企業価値の5%未満とみられているが、高めの株価を意識した場合、生産量を上げて売り上げと利益を確保する必要があります。
原油価格は増産凍結、そして減算合意へと動いているようにみえますが、実態としてサウジアラビアに増産凍結、減産合意のメリットはありません。
4月の主要産油国の会合でイランなしで増産合意をサウジアラビアが拒否したのはこのためです。
今後、原油価格を巡って様々なニュースが流れると思いますが、徐々に神経質な展開となっていくでしょう。
あまり楽観視せず、ニュースをチェックしていきましょう。
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