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”終わりよければ全てよし!?”さようならエジンバラ!

エジンバラフリンジ最終日!!!

この1ヶ月間スタンダップコメディーと向き合い、自分の未熟さを痛感したと共に、改めてスタンダップコメディー極めるとは、長く険しい道のりなのだと感じたのであった。

ただ、すごくやりがいのある楽しいジャーニーであるとも(ウケれば…)

小さなカラオケルームで満席になると、30cm前にお客さんがいるという、中途半端に満員な電車の手すりにつかまり立っている乗客と、その前に座ってる乗客の距離感である。

笑わせるのは至難の技であった。(そしてほとんど最前列を笑わせることはできなかった…)

満席にカラオケルーム

さらに明るい部屋の中では、誰が笑っていて、誰が笑っていないか、お客さんの表情が、はっきりくっきり見えるのである。

25人満席になると、必ず1人か2人は、無反応のお客さんが出現するので、彼らの退屈そうな表情と1時間向き合い続けなければならない。(まさにメンタルトレーニング!)

そして、何よりも、情緒不安定なエアコンに僕らコメディアン達(カラオケルームフレンズ)は苦しめられた。

そのカラオケルームに設置されたエアコンは、フリンジ期間中の半分以上は、水漏れをしていた。

二箇所からポタポタと水を垂らし、その水の垂れる場所にビールグラスを置いて対処していたので、ショウの中盤くらいになるとグラスに水が溜まりだし、ポタポタと音を奏でるのである。

何よりも辛かったのは、スベッた時に、水の音がポタ…ポタ…とカラオケルームに反響することであった。

その悲しい響きは、静観な日本庭園で、池のコイが飛び跳ねた後の、静寂を感じさせた。

一度、お客さんが数人で、スベり続けた日があったのだが、その時のお客さん達は、無の境地に達したような僧侶のような表情で僕を見つめ続けた。

僕は、笑わせようと踠くのをやめて、心を無にして、己のためにパフォーマンスするというゾーンに入っていた。(コメディアン失格である)

そして、一か八かで、普段やらない、ブラックなジョークを言ってしまったのだ。

案の定、こんな美しいスベり方があるのか?と思うほどに、エレガントにスベった。

その時、カラオケルームは、感情が消滅した無の世界に覆われた。

そして、エアコンディショナーがビールグラスに垂らす水滴の虚しい音が、カラオケルームに鳴り響いた時、

僕は、侘び寂びを感じた。

コメディー中に感じた世界

そして、禅の修行の行く末にある無の境地とは、このことなのではないか?

と思ってしまうほどの、これまでに体感したことのない、感情のない、無の領域(もうどうにでもなれ)に心が達したのである。

おそらくお客さんも…

しばらくの静寂の後、耐えきれず「ようこそ禅の修行へ」と自虐的なジョークを言ってしまったのだ。

それを聞いたお客さん達は、さらに深い瞑想に入り込み、悟りを開きそうになっていた。

僕から見たお客さん達

そんな、禅を感じた、虚しい夜もあったなと、フリンジの最終日の朝に、ふと思い出した。

まさにコメディーブートキャンプと言える、25日間のフリンジが今日で終わりを告げるのだ。(ようやく、、、)

「終わりよければ全てよし」という言葉が大好きである。

最後さえよければ、なんとなく全ての思い出や出来事が、成功体験に塗り替えられる気がするからである。

そして、嬉しいことに「終わりよければ全てよし」の言葉通り、最後の夜はノリの良いお客さんが集まり、かなり盛り上がったのだ。

ラストのショウの後の記念撮影!

ショウの後は、最終日ということで、奮発して、地下のカラオケルームの1階にあるハンバーガーショップで、初めてハンバーガーを食べることのした。

(円が安すぎて、僕にとってそのハンバーガー屋は高級レストランなのである…)

カラオケルームでコメディーをしたバディーたちと

そこで同じカラオケルームでショウをやっているアイルランド人のコメディアンと遭遇し、レビューの話になった。(エジンバラフリンジでは、レビュアーからレビューをもらって評価してもらうことが大切なのである。)

すると、彼は僕のレビューを見たという。

すぐさま彼にレビューを送ってもらい、確認すると…

僕のレビューは5段階中"3"であった。反応に困る一番中途半端な採点である。

彼は「僕は3.5だったよ」と少し上から目線で話してきたのに、少しイラッとしたが、個人的には3という評価にはしっくりきた。

(評価を見てしばらくは、中途半端な採点に少し落ち込んだが…)

そのアイルランド人のコメディアンは「君が評価を受けたレビュワーは厳しめなので、3という評価は悪くない」とフォローをしてくれたが、

どこか「俺は3.5だけどね」というマウント風を吹かせてきたので、さらにイラッとしてしまった。笑

ただ、その評価"3"のレビューに書いてあることは、全て的を得ており、自分がフリンジフェスティバルの終盤で、自分のネタに自信がなくなってきていた理由が明確に述べられていた。

レビューを読んで、(やたら難しい単語が使われていたので解読するのに時間がかかったが…)レビュアーの人たちは、すごいなと感心させられた。

今回、この円安の中、満を辞して、エジンバラにやってきたのは、このレビューをもらうためなんだと思うほど、心に刺さるレビューであった。

心のどこかで、4くらいの評価がもらえるのでは?と期待していた部分もあったので、悔しい気持ちがあったことは否定できないが、これが今の僕への評価なのだと思う。

レビュアーが来た日は、自分の中で全力を出し切ったし、お客さんも満席でそれなりに盛り上がった日だった。

今の自分を最大限を出して、評価は3だったのだ。

今回、コメディアン人生で初めてプロのレビュアーに評価してもらい、グローバルなコメディシーンにようやく足を一歩踏み入れることができた気がした。

さらに、"3"という中途半端な評価をもらって、もっともっと面白いコメディアンになりたいなと心から思ったのである。

今回僕のショウを採点してくれたレビュアーのジェイさんは来年も自分がエジンバラフリンジでパフォーマンスすれば来てくれるということなので、この1年、全力でコメディーに打ち込み、来年は3よりも高い評価を貰えるようにリベンジすることを決意した。(もちろん目の前の観客を笑わせることが一番である)

前提として、まずは、来年のエジンバラの資金を稼ぐという高いハードルがあることは、今は考えないでおこうと思う。せっかく超ポジティブなゾーンに入っているので。

ただ一つ言えることは、スタンダップコメディーを極める道はとてつもなく厳しい道なので、日本に帰ったら、毎日が東京コメディーフェスティバルだと思って、コメディーに打ち込みたいと思う。

一番右のノルウェー人のコメディアンはおそらく将来有名になるだろう
(毎日満席で爆笑を取っていた。)
ありがとう、魔のカラオケルームよ!

25日間のエジンバラフリンジが終わり、自分のコメディーを見つめ直す良い機会になったし、これからもっと真剣にコメディーに打ち込もうと思えたことが何よりの財産になった。

東京の浅草で、週3回から4回、英語のスタンダップコメディーショウをやっているので、興味がある人がいれば、是非是非お待ちしてまーす!



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めしだ
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