日商簿記範囲外のEX論点【有価証券⑥】~有価証券の信用取引③~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、有価証券の論点から「信用取引(ヘッジ会計)」を紹介します。
1.信用取引のヘッジ会計
概要
保有しているその他有価証券のヘッジとして信用売りを行っている場合(信用売りをヘッジ手段としている場合)は、ヘッジ会計の適用が認められます。
また、信用売りと類似した取引である、有価証券の空売りの場合も、ヘッジ会計の適用が可能です。
ヘッジ会計そのものに関しては、日商簿記1級・全経簿記上級において出題されるため、この部分の意味合いは解説を省きます。
仕訳(繰延ヘッジ)
いずれも、ヘッジ会計適用時に追加・変更される取引のみ紹介します。
期末時の仕訳 (信用取引)
繰延ヘッジを採用している場合、評価損益は繰延ヘッジ損益として計上します。
反対売買による決済時の仕訳 (信用取引)
※その他有価証券を売却しない場合
ヘッジ手段である信用売りの決済が、その他有価証券より先に行われた場合は、ヘッジ会計の適用を中止する必要があります。
その為、繰延ヘッジ損益を、その他有価証券の決済まで繰り延べることとなります。
仕訳(時価ヘッジ)
期末時の仕訳 (現物)
時価ヘッジを採用している場合、ヘッジ手段の損益を投資有価証券評価損益勘定で処理し、残額はその他有価証券評価差額金で計上します。
2.例題
<1>信用売りのヘッジ(繰延ヘッジ)
以下の資料に基づき、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
当社は、A社株式をその他有価証券として保有しており、取得価額は6,000千円(単価:@6,000、株式数:1,000株)である。
税効果会計は考慮しない。
ヘッジ会計の処理は、繰延ヘッジを採用している。
評価差額の計上方法は、全部純資産直入法を採用している。
信用取引に係る消費税、手数料等は考慮しない。
①当社は、A社株式の値下がりが予想される為、同株式(取得日時価:@5,900)を1,000株、信用取引で売り付けた。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
②期末日を迎えたので、時価評価を行う。
A社株式の決算日時価は@5,800であった。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
③翌期になったので、再振替仕訳を行う。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
④決済日を迎えたので、反対売買によって決済を行った。
A社株式の決済日時価は@5,600であった。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
<2>信用売りのヘッジ(時価ヘッジ)
以下の資料に基づき、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
当社は、B社株式をその他有価証券として保有しており、取得価額は5,500千円(単価:@5,500、株式数:1,000株)である。
税効果会計は考慮しない。
ヘッジ会計の処理は、時価ヘッジを採用している。
評価差額の計上方法は、全部純資産直入法を採用している。
信用取引に係る消費税、手数料等は考慮しない。
①当社は、B社株式の値下がりが予想される為、同株式(取得日時価:@5,300)を1,000株、信用取引で売り付けた。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
②期末日を迎えたので、時価評価を行う。
B社株式の決算日時価は@5,200であった。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
③翌期になったので、再振替仕訳を行う。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫
④決済日を迎えたので、反対売買によって決済を行った。
B社株式の決済日時価は@5,250であった。
≪ヘッジ対象≫
≪ヘッジ手段≫