たゆたう歌声と躁なリズム 大貫妙子 / タンタンの冒険
「ゲートリバーブ」という80年代に一世を風靡したドラムサウンドの音響処理があります。
ヒュー・パジャムというエンジニアが発明して、1980年、XTCの"Black Sea"とかピーター・ガブリエルの"3"あたりから使われはじめたとか。
ドラムの、特にスネアの音に思いっきりリバーブを掛けた上で、ばさっと残響をカットすること(ノイズゲート)で、めっちゃ奥行きがあるようで全然奥行きのない独特の音色が出来上がります。
こんな異様な音響処理が10年近くもの間世界中のポップミュージックの音作りを席巻したんですから、世の中何が流行るか分かりませんね。
実際聴いてもらうのが一番分かりやすいと思うので、分かりやすい例をひとつ。
ニューオーダーの"True Faith"
これはゲートリバーブが掛かったドラムサウンドに更にディレイが掛かってますが、冒頭のビンタし合う二人の動きがいかにもゲートリバーブ感があって視覚的にも分かりやすいかと。
なんでゲートリバーブの話から始めたかといえば、今週のDiscover Weeklyに流れてきたこの曲が、ゲートリバーブここに極まれりって感じの曲だったから。
大貫妙子 / タンタンの冒険
ゲートリバーブ全盛時代1985年発売の『コピン』というアルバムに収録されている曲だそうです。
世代的に、大貫妙子と云えばこれです。
みんなのうたの「メトロポリタン美術館」
http://www.nhk.or.jp/minna/ より
「メトロポリタン美術館」は84年発表だそうなので、ちょうど同時期。
この曲の、この世ならざる不気味な…しかし強烈にノスタルジーを喚起する感じは、何より映像の力が大きいですが、84年当時のゲートリバーブ的なサウンドプロダクションもかなり影響してる気がします。
で、今週のDiscover Weeklyに流れてきた件の曲。
全体的にリズムの立った曲に聴こえますが、よくよく聴いていると、バックトラック次第でもっとふんわりした雰囲気の曲にも仕上げられたはず…という気がしてきます。
まず、ボーカルは始終ふわっとした語り口。それに合わせてアンビエントな音色のシンセが鳴ったり鳴らなかったり。
対して、先述のゲートリバーブがばっちり掛かったドラム、スラップベース、シンセの「ジャン!」って音(プリセット音で通称「オーケストラヒット」と呼ばれる音)、この3つの音だけが異常にアタック(音を鳴らした最初の音量の大きいところ)が強いのです。
最早アタックだけでサスティン(音の伸び)がない。
逆に、ボーカルとアンビエントめなシンセ音はアタックが弱くてサスティンが長い。
そのために、ボーカルとトラックが異常にハイコントラストな取り合わせになっていて、妙な印象を残します。(その中でギターがその両極の中間を埋めてバランスを取ってる)
だいたい、イントロはアンビエントなシンセでふわ~っと始まって、最後は何の残響も残さないオーケストラヒットの音で終わるのです。
異様です。
ところで、これは単に世代的なものかもしれませんが、ゲートリバーブとともに80年代前半に多く使われたProphet-5というシンセサイザーの音色にとても強くノスタルジーを感じます。
84年生まれなのでリアルタイムで聴いてるはずはないんですが、もしかして胎教的なやつでしょうか?
前述のメトロポリタン美術館も然りですが、映像と強く結びついているものでいくと、
坂本龍一『戦場のメリークリスマス』(戦争映画)
ジョルジオ・モルダー『メトロポリス』(1920年代のサイレント映画の再上映)
細野晴臣『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治原作のアニメ映画)
並べてみると、当時からノスタルジックな題材と絡めて使われていた節がある気がします。
…と、Prophet-5について書いてる合間で読んだ音楽家の齊藤耕太郎さんのnoteにチラッとProphet-5の話が出てきて、「おっ」となって、ここで紹介されてるアリアナ・グランデを聴いてみたら、これがちょーいい!
えーと、結局何の話してたんだっけ?
もう興味はすっかりアリアナ・グランデに持ってかれてしまったので、今日はここまで。
いいわ〜、アリアナ・グランデ。
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