12:室内フリーとダビデの星
写真は夫や面会がいれば行かれた食堂のラーメン!おいしかった♪
部屋にも慣れてきたころ、また部屋の配置換えがあった。慣れてきたころだっただけに、また一から物の場所や位置を憶えなおすのかー、とうんざりした気持だった。それにしても急な今度の配置換え。
新しい部屋には先住の3人がいた。骨折など脳ではない原因で入院している人たちで、向こうからしたら私は新しい入院患者だと思ったようだ。(そこそこ長くいるのだが)部屋の温度やら、諸々にあれこれ言いながら過ごしている声が聞こえたがこちらは室内から出てはいけないし交流が生まれるわけもなく…と思っていたが、あちらの一名から原因を作ってきた。
プライバシーもあるので割愛するが…まあ喧嘩を売られたので…買った。
そのうえで、わたしは規則で部屋から出れないこと、患者には色々な性格の人間がいること、入院理由は様々だということを知ってもらい、理解してもらえたようだ。多分室内拘束も急性期病棟の深夜の発狂も知らないで来ている方だと思ったので、色々理解してもらえて良かった。
結果論でいえばこのあたりから色々飽きずに済んだ。
私はこの辺から脱走計画を練っていたが、といってもまぁ本気で脱走するわけではないが他にすることもないしイライラに対する気晴らしにもなったので院内の構造を頭に入れる気持ちで、どこに何があるなど把握しようとして景色を覚えようとした。そんなことをしているとバレて、リハビリAさんが言った。「まぁいろいろあるから。あの人前にもちょっと病院内で揉めてそれが原因であなたが部屋移ることになったのよ。本人たちは自分が原因と気づいてないけど」
…だからか!わたしが配置換えの巻き添え食らったのは。
人間関係の揉め事より、私は室内フリーにならないほうがきつい。
「気に食わねぇ奴は殴る、それだけです…」ってHEATで唐沢も言ってたろうに。シンプルに当事者で解決したら…と言いかけたら、近くにいた看護師さんに「なんかあったら看護師に言ってください、患者さん同士でトラブルはやめてください」と言われ、だから時季外れの部屋替えが…とまた思ったが、新しい環境もなかなか刺激的だしアリか…。
…で脱走とかする計画立てる位だったら看護師さんに言ってください。とさらにAさんに言われ、「脱走は冗談ですよ」といいながらも私が、せめてトイレぐらい自由に人を呼ばないでも行けるようにして欲しいと言うと、それをAさんは他の先生に伝えてくれた。安静度と言うのは基本的に看護師さんやリハビリ師の先生達の話し合いで決まるので、言語療法士のTさんと作業療法士のYさんが色々と相談しあって目印をつけることを提案してくれた。
私がピンクのジャージを着ていたので(運び込まれたときに適当にそこら辺にあったやつを後日夫が持ってきたもの)
私が好きな色はきっとピンク、と決定した。そしてYさんは器用にビニールテープを使ってなるべく大きめの星のマークをトイレのドアに貼ってくれた。
この星のマークが見えたら右手が私の部屋。こうしておけば私が入り口を間違えず部屋にたどり着くことができるだろうと言うことだった。
「なんだかダビデの星みたい…そか…収容…」と出かかったけどYさんがそういった類を知るわけもなく綺麗に作ってくれたマークだったので、ありがたくその日からダビデの星っぽいやつを部屋の入口に張り付けて過ごすことになった。
これのおかげで流石に「トイレまでは自由に行って良いそうです。」と言う病室内フリーのお知らせが出た。勝利である。
無駄に今までの恨みを晴らすように何度も用もなくトイレ、ロッカー、洗面所に行ったりした。
ある時、面会、来客用に立て掛けてある椅子を開いて上に物を置こうとした。しかし椅子を開いたその拍子にバランスを崩して床の上を室内履きの足が滑り、膝から崩れ落ちた。
その体勢から「何とか立ち上がらなければ!」とものすごく焦った。ようやく病室内がフリーになったばかり、やっとやっと今ものすごく他の人より遅れてフリーになったばかりなのに、今ここで何か起こして安静度が逆戻りしてしまったら元も子もない!
…あまりにもいろいろ思うようにいかないから「もう別に退院なんかできなくてもいいですよ! 3ヶ月でも何ヶ月でもいてやりますよ」といきまいていたが本当に逆戻りは冗談じゃない。
ガタ…とか、カタン、とかここでちょっとでも大きい音が出ると「何かありましたか」と看護師さんがすぐ聞きに来るのは間違いない。なぜなら私の部屋はナースステーションに近い部屋、そのなかでも部屋の入り口だからだ。4人部屋の部屋の1番手前。
音を立てないように全身全霊で壁に手をつき何とか立ち上がる格好に体を戻した。膝がプルプルいっていた。産まれたての小鹿状態の、実際には死にぞこないの中年が全身全霊のセルフ壁ドンで、ズリズリずりあがり事なきを得た。
この辺のあたりから更に本格的に筋力だけはつけておこうと思い立ち、リカンベントと言う機械の自転車こぎの回数を増やしてもらった。後はちょっとのことでもしゃがむようにした。
物を取るにしろなんにしろとにかく実際に動いてしゃがむようにする。本当にリハビリだけでも結構1日がいっぱいいっぱいになるのだが、それでも運動量が足りていない気がしたのでその時の恐怖心から極力体動かすようにした。
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