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丈夫な私たち

私が真空ジェシカに出会ったのは3年前の12月、初出場したM12021である。
M1は毎年欠かさず観ていたけれど、ライブがあるからリアタイできないと嘆いていた恋人とは対照的に、持て余す時間を潰すように1人で寂しく観た。
後で録画を見るから、それまでSNSも一切見ないから、絶対に結果も誰が面白かったかも言うなと釘を刺されたのをよく覚えている。

好きだったインディアンスに期待をかけていて、真空ジェシカなど1mmも知らなかった。
結果は錦鯉が優勝、ランジャタイがインパクトを残し、真空ジェシカは6位だった年だ。

私の中で衝撃だったのは真空ジェシカの面白さと頭の良さで、点数の振るわないことに驚きながら、自分の感覚が間違っているのかと不安を覚えたままM12021は終了した。

それから彼が録画を見て、誰が面白かったかという話になった時に、1番に上がったのが真空ジェシカで、2人で「そうだよね!めちゃくちゃ面白かったよね!」と共感して盛り上がった。

それからいつの間にか彼は真空ジェシカのファンになり、ラジオ父ちゃんを聴き始め、スマホケースが山口コンボイになり、Xのトプ画が韻豆になっていた。

私はというと、2022年のM1も真空ジェシカを応援していたけれど、ラジオはちょろっと聴いたことがあるくらいで、ゆっくりゆっくり、かなりゆっくりお笑いを好きになる過程にいた。

急速に真空ジェシカを、お笑いを好きになったのは1人暮らしをやめて田舎の実家に帰ってからだった。

当時私は大学を休学していて、編入を志していた。
大学で専攻していた建築学が自分をどんどんマイナスの方向に引っ張って行く気がして、怖くて怖くて仕方なくて、逃げて別の道を歩むためだった。
何もない田舎で、毎日することがひとつもなく、永遠にある時間が私を刻々と追いつめていった。
勉強しなくてはならないけれど、それも本当にしたいことなのか分からず、試験が恐ろしくて、している勉強も決して楽しい面白いとは思えず、不安が襲ってきた。
同級生が内定を決めたり、院進を控えて真っ当に生きている中、何もない田舎でただただ毎日をやり過ごすことで精一杯の私は、将来への不安と焦りでいっぱいで、息ができず、苦しい日々を送っていた。

そんな時、唯一気分転換になったのが、ドライブの時間だった。
それも、どうしてもすることがないから、何か理由をつけて車に乗り、外に出てなんとか時間を潰すためのものだったけれど、この時間だけが私の救いだった。

それはラジオ父ちゃんがあったからだ。
車を買ってから、なんとなく聴き始めたラジオ父ちゃん。
マイナビラフターナイト第5回チャンピオンLIVEの優勝特典としてTBSラジオで始まった、売れる前の彼らが登場する、1話から順番に聞いていった。
売れる過程を見れるのが楽しかったし、何よりぶっ飛んだ川北のボケと、焦りながらツッコむガクが最高に面白くて、心から笑った。

しんどい時にテレビを見て、芸人さんを見て笑える自分に気付いて救われたとか、それから芸人を志したとかいう美談をよく聞く。

私は、そんなの、本気で苦しんでいる人は芸人を見る余裕なんてないし、笑えないよ、と信じていなかった。
まさか自分が、全く同じことを言うと思っていなかった。
本当に、苦しくて苦しくて仕方がなかったけれど、唯一笑えたのがラジオを聴いている時で、そんな自分に気付いて、まだ私きっと大丈夫だ、と思えたことが嬉しくて、心から救われたのだ。

それからあっという間にラジオ父ちゃんは直近回に追いつき、他の芸人さんのラジオも次々と聴き始めた。
よくバラエティを見るようになったし、それもリアタイで見たくて、早く寝る支度をするようになったし、それを楽しみに日々生きるようになった。

私は編入をやめ、建築学に戻る決意をし、復学を果たした。
実はこれは2度目の復学で、死ぬんじゃないかと思うほど不安でいっぱいだったけれど、なんとか半年終えることもできた。

学期の途中の12月は、M1だけを楽しみに生きた。
M1が楽しみで、それだけでしんどい設計課題も中間講評もあっという間に乗り越えた。
敗者復活から決勝までぶっ通しで、恋人と乾杯しながら終始笑っていた。
幸せで幸せで、こんなに幸せでいいのだろうかと思った。

それから新学期に入って1ヶ月が経つ。
4年間で1番忙しいと言われているこの学期に、就活も重なって、時間が恐ろしいほど足りず、滅入ることもあるけれど、なんとかまだやっている。
そんな日々の中、一昨日、M1ツアーに行った。

お笑いを観に行ったことは数回あったけれど、大好きな芸人さんたちがこんなにたくさん出てるものを見るのは初めてだった。
結論、最高だった。
全組、ずっと、最初から最後まで、面白かった。
こんなにも笑いで溢れるコンサートホールは観たことがなくて、芸人さん達が死ぬほどかっこよかった。

笑いすぎて泣いたし、幸せすぎてちょっと泣いた。

こんなにも笑える自分になれたことが嬉しかったし、苦しい時期に救ってくれた真空ジェシカを生で見れたことを思うと、感動が止まらなかった。

笑わさせてくれて、救ってくれて、本当にありがとう。
生きていてよかったです。
まーちゃんごめんね!

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