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映画「嫌われ松子の一生」

これまで観た映画の中で一番、胸を打たれた作品。
主要出演者逮捕で埋もれるには惜しい。

※2006年05月30日の日記再掲

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昨日は中学が土曜参観の代休。
次女は友達と「ダ・ヴィンチ・コード」の映画を観に出かけた。

それならば、長女と私も何か観に行こうと、
ちょうど先日封切になりテレビで紹介されていた「嫌われ松子の一生」が面白そうと、即決!


平日のお昼だけど、封切直後でもあり、映画館はまずまずの入り。
観客層は、ご年配のご婦人方から大学生の若いカップルまで幅広い。

さてさて、この映画、
前日に急に観に行くことになったので、まるっきり何の予備知識もなく映画館の席へ座ってしまった。

無論、原作も読んでいない。
正直、そんなに期待して観に行ったわけでもなかった。

そして、見終わった感想はーーーー

とっても良かった。
気付かないまま涙が頬にこぼれた。

泣ける映画だとは思っていなかったので驚いたよ。

いろんなことを考えさせられる深みもあって、
でも単純におもしろく、わかりやすい、いい映画だった。
観に行って本当に良かったよ。
エンディングのクレジットの最後、心の中で拍手したもん。

中3で15歳になったばかりの長女に、この話がわかったのかなぁ??と思ったが
長女も「泣けた」と言ってた。

しかも終演後、出口付近で他の観客が口々に「良かった」と話しているのが聞こえてきた。
大学生カップルの男の子が

「これまで○○(彼女の名前)と観に行った映画の中で、これが一番良かったよ~!」


と言うのが聞こえて、
そっかぁ…この話、男性にも、しかも若い男の子にもわかるんだ…と驚いた。


…さて、ここからは映画の内容に少し触れていきますので
ネタバレは一切イヤ!って方は、ちょっと飛ばして下さいね。。。

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物語の最初で、いきなり松子がお骨になっているから、
本当に松子の“一生”の話なんだなぁってわかる。

お骨を引き取りにきた実の弟に
「つまらん人生だった」と一言で要約される松子の一生。

本当にどうしようもない最低な年譜。
でも…それでも、彼女は彼女なりにいつも一生懸命もがき苦しんで生きていた姿が映し出されて、

ああ…この人は…馬鹿じゃないけど、愚かだなぁ…と愛らしく思える。

美貌、
教養と学歴もあり、
それなのにとめどなく転落していく。

何かが、少しずつ歯車が狂って…
どんどん、どんどん最初とは大きく違っていく。

何に原因があるのかと問い詰めれば、
やっぱり松子がキレてしまう短所だろう。
もうあと一拍の猶予を持って、冷静に考え、判断し、こらえることができたら…
こうはならなかっただろうというシーンが何箇所もある。


「嫌われ松子」がタイトルだけど、
松子は嫌われていたわけでも愛されていなかったわけでもない。
なのに、どんどん人が遠くへ行ってしまう。
大切な人が離れ、死んで行ってしまう。


話の流れは時系列ではなく、自在に時間を旅する。
そして、その時々の松子と、その時代、世相を見せてくれる。

同じシーンが繰り返し出てくるところがある。

同じシーンなのだが、カメラの位置を変え、視点を変えれば、全然違って見える。
…両方を見せられる我々観客は、双方の気持ちがわかって、胸が詰まる…。

そうだ。
どんな人生にだって言い訳はあるんだ。
ああ、言い訳という言葉は良くないかもしれない。

だけど、「あの時、ああした」ことには本人なりの理由や事情があって、
他の人からは不可解で「馬鹿だなぁ」と思われるようなことでも
…やっぱり本人には、本人にしかわからないことって…あるんだよね。

それを全部、人に説明するのって大変だ。
わかってもらえる機会なんてない。

だから、「あの人はヘンな人」のレッテルを貼られる。

…説明しようとしたら、こんな映画一本分、2時間かかっちゃうのよ。

きっとこの映画はそのうちテレビでも放送されるだろう。(製作にTBSも加わっている)

だけど、テレビよりは映画館で、じっくりと浸って観た方がいいだろうね。
だって、我々は「神」の存在として感じられるんだもん。


主演の中谷美紀さんは言うまでもなく、大変美しい方なのだけど
映画の中で何度も殴られるシーンがある。
それも愛する人から情け容赦なく、物のように殴られる。

ドメスティック・バイオレンス(DV)は今ではずいぶん公言されることとなった。(それでも氷山の一角だろうが)

以前、私もご主人から暴力を受けている奥さんから直接お話を聞いた経験があるので、
そういう殴られる関係性が全く理解できなくはない。
そこに愛があると信じられなくはない。
だけど…やっぱりダメだよ。殴り殴られての関係なんて…。
幸せからどんどん離れていってしまう…。


松子を巡ってたくさんの男性が現れる。
私が一番印象に残ったのは、武田真治くんの演技。

車を運転しているシーンはセリフはないのだが、「こんなふうに口説いたんだな」ってすごくわかる。
そして手の所作が美しい。
ものすごい色気を醸していた。


*****

とにかくね、
見てよかったな~って思う映画です。
退屈に感じるシーンは一箇所もなかった。
お値打ち感のある映画でした。
是非、映画館で観て欲しいですわ~。

(追記)
地上波での放映は無理かもしれないですね…。
でも今は配信サービスで見ることもできるみたい。
時間を旅するような映像を映画館で鑑賞できたのは、本当にラッキーでした。

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