たまごサンド
たまごトースト
(卵 ブロッコリー マヨネーズ 塩 砂糖 酢 黒胡椒 食パン マスタード チーズ)
布団からわずかに出ている足先や指先が冷えて、夜明け前に起きる。皆が動き始めるその前に身支度をして出掛けるとき、朝ごはんをどうするか悩むことも多い。家で食べてから行くか、しかし時間もないから出先で食べるかと、煩わしいのも朝がもったいない。たまごサンドを晩のうちに作っておく。
ゆで卵を作る傍ら、冷凍しておいた食パンをレンジで少し温めて解凍する。いつもの5枚切り。これを半分にスライス。マスタードを片方に塗っておく。ブロッコリーもレンジにかけて、食感が残るくらいに刻む。茹で上がった卵をフォークでほぐし、マヨネーズ、塩、砂糖、酢、黒胡椒を混ぜてたまごのソースに仕上げる。これを食パンで挟んで食べやすく半分に切る。なめらかになりつつ、口にするとしゃくりと当たる。甘さとコクのある、黄色いソース。残りのソースは挟まず、オープンサンドにする。チーズを乗せてトーストで焼いて、黒胡椒を細かく挽く。
よく晴れた日に公園でぼんやりしているときだった。自分の言葉が浮かんでくるのが、身も心もリラックスして、纏っていた人の言葉を置いたときだと気がついたのは。まどろむように身も心も空気にとろけつつ、眠ることなく芯は保たれている心地。どうもそれは、言葉を捉えるときだけでなく、料理をしているとき、音楽に乗っているときも似ていると思い至る。一つのことに集中して、時間も飛ぶような感覚を求めるようになった。
とらわれているうちは集中しきれないこともあるから、リフレッシュする手をいくつか持っている。公園へ行く、料理をする、走る。心のどこかにこびりつく前に、卵の殻が混じるみたいなことにならないように、日々身も心も洗い流す。自身を手入れするのは、料理や言葉や音楽の種のようなものを、自分を通して実らせたい気持ちがあるからだ。心の底にある声にどうしようもなく体は動いて、朝の凍えるような冷たさも苦ではなくなる。
「禅と精神医学」(平井富雄/講談社学術文庫)
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