柘榴
見上げると柘榴が実っていた
なぜ今頃
この木は父が建てた家の庭に最初に植えた
私は10歳
家族で食べた
この何十年実ったことはない
痛い痛い棘の木
神さま
ここにおられますか
父がこの庭に居ないことには
初めから気付いています。
父の魂は死の恐怖に怯えて無に帰った。
神さま
もしも
この庭にいるなら
私はあなたのもの
熟してざっくり割れたざくろを
雨水でざぶざぶ洗い
かぶりつく
ざくざくしゃぶしゃぶ
ガーネットの芯で白とピンクに薄凝る命
柘榴色の宝石の何百粒の光
私はそれを食べる
この庭の命をいただく
がぶがぶ
赤い汁が喉を伝う