オーケストラ・リハーサル
春の予感は
街路樹を渡る風と
光がもつれるオーケストラリハーサル
交差点の信号を待つほどの
ほんの短い間
君と一緒に居たね
独りでいることの
やるせなさ
語り合うときの
あてどなさ
音は競い合い
争って
始まりの前に
黙り込む
硝子のような
火花のような君に
僕の言葉は
たじろぎ立ちすくみ
やがて沈黙した
君と離れてよかったと思う
君と別れてよかったと思う
君と別れてよかったと思う
けれど、それでも
この季節が巡るたび
思い出が僕の背中を抱きしめるから
君と居たほうが
よかったのかもしれない
春の予感は
街路樹を渡る風と
光がほどけるオーケストラルリハーサル
交差点の信号を待つほどの
ほんのほんの短い間
君と一緒に居たね