百葉

カフェをオープンしました。 カフェにまつわる純愛小説「お花がほしいのです」に続いて「ひまわりの約束」を書きました。

百葉

カフェをオープンしました。 カフェにまつわる純愛小説「お花がほしいのです」に続いて「ひまわりの約束」を書きました。

最近の記事

初めての中目黒

8月に引き続き、10月にも東京を訪れた。その目的は二つあった。 一つは東京に住む義理の息子を岡山に呼び戻すというもの。建築士の夫は70歳を過ぎたあたりから、色々と限界を感じていて、できれば息子を側において、仕事を手伝って欲しいと思っている。しかし、上から目線で、「目的を持って生きろ!」とか言われても、息子は反発するばかり。そこで、義理母の出番となった。彼が「うん」と言うまで、美味しいものをご馳走しながら、やんわりと説得を重ねるつもりでいる。 そしてもう一つは、私自身の勉強

    • ひまわりの約束・番外編

      牛窓の海辺に週末だけのカフェを開いた亜希子と光太だったが、すぐ目の前の商業施設の利用者が自然派ランチを食べに来たり、犬連れで入れることがクチコミで広がって、岡山市や倉敷市、兵庫県から人が訪れ、そこそこ賑わっていた。時に光太のインスタグラムのフォロワーが東京から訪れることもあった。彼らは、光太がリノベーションした店舗の関係者だったり、彼が入居時の世話をした賃貸マンションの住人だったりした。グッドルッキングな上に親切な彼は、特にシングルマザーに人気があった。何でも、彼が結婚して東

      • ひまわりの約束・牛窓編

        (光太との新たな人生を歩み始めた亜希子は、60年近く暮らした東京・神田の下町を後にします。近所の人やカフェのお馴染みさんには、「夜逃げ?駆け落ち?」と思われるのも嫌だったので、隆行と離婚したこと、血のつながらない弟の光太と結婚したことを正直に話しました。そして、西日本の岡山県に移住するので店を閉めることと、長年お世話になったことへの感謝を伝えました。) さようなら、東京 カフェ、プロメッサ・デル・ジラソーレは、惜しまれつつ、その40年の歴史の幕を下ろし、解体され、更地にな

        • ひまわりの約束

          Promessa del Girasole   ひまわりは、いつも太陽のほうをを向いて咲いている。朝日が昇れば東を。夕日が沈む頃には西を。 イタリア語で「ひまわりの約束」という意味の古いカフェが下町にある。オーナーの不動産会社社長が、後妻の陽子ために洋装店だった店を買取り、改装したのが始まりだった。それから40年経った今、オーナーもカフェの店主も代がわりしている。当時学生だった常連客ももう60歳前後になり、店も相当古びてきた。しかし、先代のコレクションである、イタリアのア

          未来という船

          20年閉めていたカフェを再開した。20年間ずっと守っていたこと、それは食べ物の味を感じ続けることだった。有機質に富んだ土で作られた米や野菜、国産小麦粉、平飼い卵、グラスフェッドの牛乳やバターなどは、素材そのものが「美味しい」ので、化学調味料を使わず、薄味で料理を作ることができる。 私には子供はいない。子どもがいたら、人参やピーマンをどんなふうに工夫して食べさせるだろうか?私もそれらの野菜が嫌いな子どもだったが、大人になって自分で料理を作るうちに食べられるようになった。 私

          未来という船

          お花が欲しいのです

          智子のカフェ 智子はビジネス街と住宅街の間にある小さなカフェ「アロマティカス」を切り盛りしている。センスのいい植え込みのある外観と昭和レトロな内装、手作りの家庭的なメニューは、ビジネスマンにも住宅街の奥様方にも人気があって、そこそこ繁盛している。このカフェのオーナーは、中堅ゼネコンの社長だ。 社長は10年前に妻を亡くし、未だ再婚せずにいる。智子の夫は建設会社の現場監督をしていたが、ある台風の夜、建設中のビルの様子を見に行って転落し、身体障害を負った。45歳で要介護5の認定

          お花が欲しいのです