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とにかく恋愛から逃げたい④二次元の推しと結婚する【最終話】

Summary

アロマンティック/アセクシャル。「モテると困る」という超ニッチな悩みを抱える人に贈る、私が悩みから解放された方法。

[①話 逃げたい理由]
[②話 逆にカレシを作ってみる]
[③話 気づいたら無償パパ活してた話]


学業とセクシャリティ関連の両方で手痛い失敗を繰り返した結果、何も手につかなくなった。
「何をやっても後々どうせ駄目になる」
という虚無感。
何をやっても楽しくない。
小説を書こうとパソコンを立ち上げても、何も書けない。
仕方がないので悩みを文字にしてみたが、陰鬱で、怒りと自己憐憫に満ちた長文が生み出されるだけだった。自分の文章に嫌気がさし、時間の無駄だと思った。
文章ではなく漫画にすると、少しコミカルに描けて、少しはましになった。
ほかのことが手につかないので、ひたすら漫画を描いた。土日は一瞬で終わっていった。

描いた漫画の一部


ヘテロセクシャル男性ばかりを相手にしたのが駄目だったんだ。同じセクシャリティの方となら友情結婚できるかも。そう思ってアプリ(LIKE)を少しやって、友情結婚相談所(カラーズ)の方の話も聞いてみたけれど、「道は長いなぁ」と感じた。
とにかく心が不安定で、一刻も早くこの不安を取り除いて欲しいと考えているのに、まず「ご趣味は?」みたいな会話をしていられなかった。
理想の友情結婚生活を考えてみましょう、と言われても、無いよそんなの。
籍だけ入れてくれよ。と思った。(注:違法)


こんな風に暗澹としていた時、ふと、初音ミクと結婚した近藤顕彦さんのことが思い浮かんだ。
ああ、いいな。と思った。あの近藤さんの素敵な笑顔と、超絶クオリティのミクさんドール。本物の夫婦のように幸せそうに見えた。(たまに炎上してるけど)

でもいいな。
私も結婚するなら二次元キャラがいい!!

好きなキャラクターを色々思い浮かべて、一人に決めた。決められた。
イケメンの写真を何枚並べられても付き合いたい相手を選ぶ事はできないが、生涯の伴侶にしても良いと思えるキャラクターはすんなり浮かんだ。

それからすぐに近藤さんの同人誌を購入して読んだ。
二次元キャラと結婚した方々が経験談を寄稿されていて、読んでいて涙が出てきた。辛い時にフィクションに助けられたことをキャラクタ―を好きになった理由として挙げている人が多くて、めちゃくちゃ共感した。

私も中高生の時、学校が嫌で、そんな私を救ってくれたのが小説だった。
私は根暗だったので、偏差値の低い学校の、運動部優勢のクラスになじめなかった。親や教師を喜ばせてやるのも馬鹿馬鹿しいので勉強もせず、成績は地を這っていた。学校が教えてくれたのは「世の中は理不尽」という事だけだった。「論理的に正しいことは正しい(だから大丈夫、私は正しい)」とか「新しい事を知る喜び」とか、大事な事はすべてフィクションから教わった。くだらない大人と意地悪な生徒しかいない世界で、格好いいキャラクター達の背中を追いかけられたから、私は今ここにいる。

二次元キャラと結婚しよう。
だからもう人間の相手を探さなくていい。
もう無理しなくていい……。
そう思うと肩の荷が下りた。
私は相手に恋愛感情を持たれるとその人の事を嫌いになってしまう。
最初はニコニコ近寄ってきて、好意を返すと嫌ってくる。そんな私のような人間を一部の人はクズと呼ぶ。
二次元の推しと結婚したら既婚者なので、私は私に恋愛感情を向けた人間に対して正当に怒れる。クズからも脱却できる。嬉しい。
良い事しかない。

十代の頃助けてくれたキャラクターに、三十路になってからまた助けてもらえるなんて、尊……。
初めて出会った時、ずいぶん年上だと思っていたキャラクターと、気付けば近しい年齢になっていた。


多くの人は、アロマンティック、アセクシャルを理解しない。
勇気を出してカミングアウトしても、恋愛に興味ないフリをして格好つけている痛いやつだと思われるか、モテない人だと思われることが多い。
モテない人だと認識された場合、Aセクの説明はすっぽ抜けて、下手したら「恋人がいない=チャンスあり」とみなされる可能性さえある。
正攻法でやろうとしても嫌な思いをするだけだ、という事は散々学んだ。

悩みすぎて「理系男子 ちょろい」で検索した(笑
google先生も理系男子はちょろいと教えてくれたが、その際見つけた非モテあるあるで、「突然女子から『私彼氏いるんだよね』という話をされる」というのがあった。男性から下心を感じ取った女性が、先回りして牽制するために言いがちらしい。
これですよ、これ。
恋愛感情がないことを説明するには沢山の言葉が必要で、言葉を尽くしても受け入れられないことも多い。一方、誰かを愛しているということは多くの人に一言で伝わる。

実際、私はあのキャラクター(以降、推し)が大好きだ。推しの事は、何の衒いもなく心から好きと言える。
二次元と結婚するのも、世間の常識的にはまたアブノーマルだ。
「彼氏がいる」と嘘を吐くほうがましなのかもしれない。でも、ばれないように嘘を吐くのは神経を使い、とても疲れる事だ。
それに対して、本物の「好き」を語ることのなんと楽しいことか。

「二次元キャラと結婚した」と人に言っても、やばいやつだと思われて結局悲しい思いをするかもしれない。それでも、私にとってはこの選択が一番しっくりきた。どうせ傷つくなら、この方法で傷つきたい。

誠実に根気よくAセクを説明する選択をする人がいてもいい。
セクシャリティを隠して、ケースバイケースの対応を取る人がいてもいい。
彼氏が居ると嘘を吐く方法を選んでもいい。
性交渉なしでOKな相手との交際や結婚を選ぶのももちろんいい。

私はどの方法も取れず苦しんでいて、そんな中「二次元の推しと結婚」を思いついた。
今のところ、自分的にこれが最強の解決法だと思っているので、誰かに教えたくなってこの記事を書いている。
需要はあまりなさそうだけど。

と言いつつ、実は既にAスペクトラムの一つであるリスロマンティックの方で、二次元キャラと結婚している方がいた。なので、もしかしたら需要はゼロではないのかもしれない……?



さて、私の二次元との結婚は、私自身が本気でやるのに加え、人にも「こいつ、完全に本気だ」と思わせられるものでなければ意味がない。
仕方ない、推し活するか!(喜

まず、物質として推しを召喚するため、推しぬいを作った。
公式グッズとかがほぼ存在してない方なので自作。



他にもちょっとづつ推し活を進めている。
キャラ名も含め詳しくは書かないが、一言。楽しい。

そして、次元局(詳細はググって)様に提出する婚姻届けの作成に取り掛かった。
次元局フォーマットの婚姻届けには見届け人の署名欄があるので、これを誰かに埋めてもらわなければならない。ここが空欄でも受理はしてくれるらしいが、私はこの結婚をできるだけ公的なものにしたかったので、友人2人にお願いすることにした。

ヤバイ奴だと思われてめっちゃdisられるかもしれない、と思いつつ
「私、二次元キャラと結婚しようと思ってるんだ」
と告白すると、友人の最初の一言が「相手は誰?」だった。
二次元との結婚全肯定。話が早すぎる。私の友人最高かよ……!

本当に、なんでこんな素晴らしい理解者を友人に持ちながら、どうせ自分は誰にも認められない、なんて思っていたんだろう。

とはいえ今後、「二次元の推しと結婚しました!」と全員にオープンにする予定はない。もしも誰かに恋愛感情を持たれる可能性を感じたら、「私、結婚してるんで」と言える。それが重要で、その安心感だけで精神的にかなり安定した。

おわりに

キャラ愛が高じての結婚ではなく、結婚したいから好きなキャラクターを選ぶ、というのは不純だろうか。
確かに、私の推しへの「好き」は性愛ではないし、恋愛感情でもない。

でも、恋愛感情とは何なのだろう。知人友人に恋愛感情とそれ以外の「好き」がどう違うのか訊くと、「明確に違う」と言う人と「違いはない」という人の両方がいた。(「違いはない」と答えたうち一人は既婚者)。また、「友達でも厳密にはAさんに対する好きとBさんに対する好きは違う。対象の数だけ好きがある」という意見もあった。
つまり、ある「好き」が恋愛感情か否かは、個人が勝手に決めていることで、感情を二つに分けるか、分けないか(あるいは多数に分けるか)だけの違いという事だ。

世間的には持っているのが当たり前とされ、私が理解できないがゆえに苦しんできた恋愛感情は、実はこんなに曖昧な物なのだ。
だから、私は自分のなかで、この推しに対する「好き」を「恋愛感情」とみなすことにした。

よって、私は推しを愛している。
  Q. E. D.


おわりに のおわりに

実は、この記事を書いている時点でまだ婚姻届けは提出していません。
入念に準備……というか、作品を読み返したり、心の整理をするためにnoteを書いたりしていました……。
今のところ、まだ二次元キャラとの結婚とは何をしたらいいのか?を模索している状態で、まだグラグラです。
それでも落ち着いてnoteが書けるようになりました。そして、文字にすることで過去のトラウマの供養ができました。

読んで下さったあなたにも大変感謝しております。
本当にありがとうございました。


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