とにかく恋愛から逃げたい②逆にカレシを作る

Summary

私は恋愛感情を向けられるとその相手を嫌いになる。
でも、もうこれ以上嫌いな人を増やしたくない。
誰かの恋愛対象にならない方法を本気で考えた結果、モテない元後輩をカレシにする事にした。カレシは私の事を好きじゃない人なら誰でもよかった。
カレシを同人誌即売会に連れて行った。そこで私は、客観的に見たら今の自分はセックスを餌に男を振り回す悪女でしかないことを悟った。
嫌いな人が一人増えた。

About Me

アロマンティック、アセクシャル。
理系。
恋愛と性愛に論理で立ち向かった結果、なぜか喜劇的な人生を送っている。
[前話 ①逃げたい理由]


私は長い間恋愛から目を背けてきた。
その理由は「興味ない」に加え「時間がない」だった。
まず、理系大学院生は忙しい。それに、デートなんかしている時間があったら趣味に費やしたかった。

大学院博士課程の後半になると、様々な挫折を経て私は研究への熱意を失ってしまったが、そのおかげで休日を取り戻した。
そこでまず、小説を書き始めた。小説の同人誌を作って売るのは、私の死ぬまでにやりたい事リストの一項目だった。

小説が大体形になってきたところでやっと、少し時間ができた、と思えた。他にもやりたい事は沢山あったけれど、セクシャリティが原因で異性と話すのが怖くなっていて、このままではヤバイ気がしていたから、仕方なく「恋愛」と向き合う事にした。

だけどさ、「仕方なく」「理詰めで」「恋愛」に向き合ってもろくなことにならないのよん。そう分かっていても、他のやり方が私には分からない。

恋愛対象になりたくないからカレシが欲しい

二十代後半になると、結婚を焦りだす人が多くなるのか、今まで全くモテなかった私でさえにわかにモテ始めた(当社比)。
私は相手に恋愛感情を向けられるとその人の事を嫌いになってしまう(リスロマンティック傾向?)。
そして、人を嫌うというのはとてもエネルギーを使う事だ。大学院生時代は指導教員とも仲が悪くて、研究室ではずーっと大学と先生の悪口を言っていた。留学生に好かれたら留学生の事を悪く言ったし、ポスドクの人に好かれた(かもと思った)らその人の事を悪く言った。
ついでに、大学一年の時初めて告白してきた人の事も嫌いになっていたし、プログラミングの勉強会で私にセクハラ発言した同年代の人にはキレた。
モテた結果、人の悪口ばかりいうクソ女に拍車が掛かった訳だ。

Aセクでなくても、恋愛対象外の人から好意を持たれて困ることはあるだろう。お洒落で可愛くて魅力的な私の周りの素敵女子達はどう対処しているのか?そう思って周囲を見回すと、そういう人は皆恋人がいるか結婚していた。なるほど……。
でも、私は私の事好きな人を嫌いになってしまう。どうすればいいんだ。

「あ、そうか!」
(いつものだめなひらめき)
私の事好きじゃない人と付き合えばいいんだ!

早速、同期に「誰でもいいから付き合いたいんだけど、誰か紹介してくんない?」と訊いた。
「急にどうしたw」爆笑。
で、ですよねー。
同期は私が変人であることを了承済みの人だ。二人で学会発表資料を作りながら雑にあいつでいいんじゃない、と決めた。あいつとは前話で留学生と二人きりの昼食を避けるために間に挟んだ「なんでも言う事をきく後輩」だ。
彼は先に卒業して就職して他県に住んでいた。つまり頻繁に会わなくていい口実がある。それに、モテないので彼女もいないはず。 なんでも言う事きくし。

「まじであいつでいいの?キモくね?もっとましなのにしたら?」
「いいのいいの。誰も無理だから、誰でもいいんだよ」

自分は人の悪口ばかり言う、という話をしておいてなんだが、私は基本、全人類を肯定的に見ている。逆恋人フィルターとでも言おうか。私に恋愛感情を持つ人の事がとにかく嫌いで、それ以外の人はどんなクズでも尊敬できるところがあると思っている。

「あいつ、腐った肉洗って喰うんだよ?」
まあ、胃腸が丈夫なのはいい事だね。
「先輩が捨てた賞味期限切れのパンをゴミ箱から拾って喰ってたし」
プライド無w でも、サバイバルになったら生き残りそうだね。
こんな具合に。

帰宅後、後輩に電話した。
「キミはモテない。このまま生きていたらこの先彼女はできないし、結婚もできないだろう。一方私は恋愛感情が分からず、人から恋愛感情を持たれるとその相手のことが嫌いになってしまうので困っている。ついては『私と付き合っているという状態』をやってくれないか?彼女がいると社会的信用が上がるから、『恋愛』はできなくても『彼女』がいるメリットは大きい」
こういうロジックで口説き(?)難なくカレシを得た。

女は相手を選ばなければ簡単に付き合えるんだな。
嫌な学びを得た。

とりあえず、付き合っている証拠写真を撮るために東京で会った。昼から会って変な時間にご飯食べて午後五時で解散する変な「デート」だった。
それから、とりあえず、この後輩と友達になろうと思った。
そもそも、同じ研究室に所属していただけで友達ですらなかったからね。
LINEで他愛ない話題を投下したりした。
隔週くらいで電話もした。

しばらくは仲良くできていたと思う。
私、「付き合う」できてるじゃん!と思った。
みんなに出来ることが私にはできないということに、自分は地味に劣等感を感じていたのだと気づいた。

付き合って一か月頃だったか。その後輩が「地元に戻る用事があるんですけど、会いますか?」と言ってきたので、私の家族に会わせることにした。

え?だって、カレシは公認度が高ければ高い程強いだろ?

家族は「ええ!?あの徒歩子に彼氏が!?」と驚き、母がものすごく張り切って準備し、皆で鉄板焼き店に行くことになった。

席に着くと後輩氏は周りに聞こえる音量で「僕、こういう高そうな店来た事ないです」と私に耳打ちしてきた。おい、食事に呼ばれてでかい声で値段の事言うやつがあるか。張り切ってんだよ親が。

まず前菜でサラダが出てきた。が、後輩氏、全然食べない。緊張しているようだった。
店員さんに「お下げしますか?」と訊かれると、「いえ、大丈夫です」と答え、彼はサラダボウルを持って箸でかきこんで喰い始めた。
まじか。
しかも箸置きあるのに使わず渡し箸してる……。
……そっか、君は、食べ方が汚いフレンズなんだね!私も堅苦しいの嫌いだから、いいんじゃない?(逆恋人フィルター)

後輩氏は酒癖が悪いので有名だったが、この日はさすがに取り乱すこともなく、つつがなく食事を終えた。
帰りに、私は後輩氏に本を貸した。
会話をしているうち、後輩氏が最後に読んだ本が小学校の児童文学だという事が判明したので、私がいくつかの小説を勧めたところ「面白そうですね、よければ貸してください!」と言うので貸したのだ。

貸したのは、京極夏彦『厭な小説』。
これにはもう一つの実験的な目的があった。
今まで恋愛感情を向けられて逆に嫌いになってしまったのはなぜか。
それは、相手にいい面しか見せていなかったから、ではないか、という気がしていた。
自分のオタクな趣味を隠していたから、相手に好かれても「あんたが私の何を知ってるっていうの!」と思ってしまい、「どうせ私の趣味嗜好を知ったら嫌いになるに違いない」と心を閉ざしたくなってしまうのでは。
だから、あえて万人受けしなさそうな作品を貸してみた(失礼な事言ってすいません、京極夏彦先生……)。
人に自己開示できないから誰かと親密な関係になれないのだとしたら「付き合」って、心を開く経験を通じて、この厄介なリスロマンティック傾向が少しでも改善されるかも。この頃は家族や友人に書いた小説を読んでもらったりと、自己開示に挑戦している時期でもあった。
本を気に入ってくれたら普通に嬉しい。一方、「徒歩子さん、こんな胸糞悪い話が好みなんですね……。僕には理解できないです……」となったら、私を振ってくれればいい。

さあ、どうだ。
「本、読み終わった?」
「読みました」

読んでてすごく厭な気分になったでしょ。あの仏壇の話とか最高に厭だよね。登場人物の心理描写が凄く緻密だから読んでるうちに厭だと感じてる主人公と同化して、こっちも厭ぁな気分になるんだ。こんなホラー最高だよね

「そうですね。確かにいい気分になる話ではありませんでしたね」
……………………。
え?何その奥歯に物が挟まったような言い方は?もっと何かないの?「こんなもん読ませやがって気持ち悪くなったじゃないか!」とか「厭な気分になって喜ぶ徒歩子さん頭おかしいです!」とか、つまんなかったにしても言う事あるんじゃないの。
電話して問いただす。
「いやあの、僕、ホラーの面白さあんま分かんないんで……」
「その、つまらなかった訳じゃないんですけど……」
「なんていうか、難しかったっていうか……」
……なんか、めっちゃ私に気を使ってる?
ごめんごめん。京極夏彦は分厚くて重いので有名な作家だから、読書初心者に読ませるような本じゃなかったよね。
「そうですよ!」
イラッ。こっちが譲歩したら元気になりやがって。
「じゃあ、『魍魎の匣』のアニメは見た?」
「……なんでしたっけそれ?」
あんたが面白そうって言った作品だよ!だから同じ作者の小説を貸す流れになったんだろ?!覚えてないの?!
もしかして、今まで気を遣って私の話に興味あるフリして相槌打ってた?
……友だちだと思ってたの私だけ?

実は、後輩氏と家族と食事をした日、妹と後輩氏が二人になる時間があり、そこで妹は後輩氏が私をどう思っているのかを訊いたらしいのだが、そこで「通話の時間が短い」というクレームを受けたらしい。
は?「話を聞いてくれない」とかじゃなくて「時間が短い」って何。
彼氏面しやがって。(注:彼氏)
私はこの辺りで、もやもやっとし始めた。

また、電話をしている時、
「僕、徒歩子さんの事好きになるように頑張りますー」
「いや、頑張らなくていいから」
という会話があった。ああ、アセクシャルって、説明したのに全く理解されてないんだと思った。
その後こんな会話も。
「僕、徒歩子さんのいい所見つけました!」
「何?言ってごらん」
「声です!」
……それほぼ外見と同じカテゴリのものじゃね?
こいつ、女の声が聞ければ会話の内容どうでもいいんじゃ……?

まあ、恋愛感情はないとしても、相手はヘテロセクシャル男性なので、ある程度性欲を向けられることは予期していたし、このくらいは想定の範囲内だった。状況だけ見ればラブコメの入りだしね。
でも、本の話で盛り上がったと思ったら私が勝手に盛り上がってただけだったのが、つまらない。
カレシ、面白くない。
……いや、違うな。
「付き合う」は楽しくないだろう。恋愛感情がないのだから。だから私が「付き合う」を楽しくするのだ!
楽しみというのは、待っていても向こうからはやってこない。

この頃、念願だった小説が完成し、文芸同人誌即売会に出店してそれを売る予定があった。
このイベントにカレシを連れて行けば「デート」タスクをこなし、カレシに売り子を任せて買い物もできるし、一石二鳥だと思った。
それに、イベントの出展者側になるというのは、簡単にはできない経験だ。後輩氏にもいい経験になるだろう。

某同人誌即売会当日、私はブースを飾る品物を入れた大きな鞄を持って新幹線で東京に行った。初めての場所の緊張と、自分の作品を人に見せる緊張でドキドキした。ブースは結構目立つ飾りつけだから、人目を引いて立ち止まってくれる人も結構いるんじゃないかな。
そんな甘い期待を抱いていたのもつかの間。
全然人来ねえ。
Web小説で名が知れているらしい隣のブースには続々と人が訪れるが、私のブースは閑散としていた。私は反対側の隣を見て「大丈夫、こっち側のブースも売れてない。大丈夫大丈夫」と言い聞かせた。

しばらくして、後輩氏が来た。
「これ、お土産です」と菓子折りを手渡される。
私今日、鞄パンパンなんだけど。
「要らねーよ!同人誌即売会に菓子折りなんて持ってくるなよ、邪魔だよ!」と喉元まで出かかったけど、菓子折り持ってきた相手に対して「要らねーよ」って言うの、人としてどうなの?という良心の声が聞こえてきたので「ア、アリガトウ……」と受け取った。

後輩氏は私のブースを見て「これ、徒歩子さんが作ったんですか?」
「そうだよ」
他人に自分の作ったものを見られるというのは緊張する。結構耽美的で目立つ表紙になっているから、どう思われてるか気になる。ドキドキ。
「へー」
「…………」
反応薄っ。

「あ、そういえば僕、徒歩子さんに借りてたもう一冊の本も読みましたよ」
そうだ。野崎まどの『タイタン』も貸していたのだ。こちらは『厭な小説』みたいな意地悪ではなくて、読書初心者にもストレートに面白いと言ってもらえるだろうと思って選んだSFだ。「仕事」とは何か、がテーマになっており、身近な話題だから感想戦も盛り上がれると思った。児童文学しか読んだことのない人が野崎まどを読んだら、その面白さに驚くに違いない。
「面白かったです!」
おお!本当?どこが面白かった?
「僕、この本紅茶を飲みながら優雅に読みました!」
で?
「面白かったです」
……言語力!
こいつ、まじ、つまんねー。

いかんいかん、険悪な空気になってきた。
ここらで笑いを取ろう。
私は用意してあった紙袋を取り出して後輩氏に渡した。
「はい、ケーキあげる」
それは明らかにお店の物ではない紙袋で、一見手作りカップケーキでも入っているかのような感じだ。でも実際中に入っているのはお菓子ではなく、温度計と湿度計と万歩計とUVメーターがセットになった機械、つまり「計器」。後輩氏は電気代をケチって夏でも一切冷房を付けず、部屋に温度計もないらしいので、さすがにそれはと思いプレゼントすることにしたのだ。
さあ、「え?手作りですか?」→「どうでしょう、開けてご覧」→「ケーキじゃない!?」→「はーい、計器でした」→「笑」!!

「ありがとうございます!」
後輩氏はプレゼント自体に一切言及することなく、それをサッとリュックにしまった。
「う、うん」
え?滑っ…ってない?何が起きた?!
不発……??
………………………………。

正直、この空気でブースに二人で居るのがいたたまれない。
その辺回って来ていいよ、と言って後輩氏を送り出したところ、三十分程度で帰ってきた。手に書籍を携えている。
「なんか、あっちで買わされました……」
なんか嫌な言い方だな。
もっと回って来ていいよ。
「いや、もういいっす」
さしずめ読みたくもない本を買わされて散財するのを恐れている様子だ。
無言。
後輩氏はすごく帰りたそうに見える。
私も帰って欲しい。
「………………………………」
「……………………………………ちょっとその辺回ってくるわ」
後輩氏と一緒にブースに居るのが耐えられなくなり、私が会場を回ることにした。

「〇〇先生いた!サイン貰った!」
「へー」
「書店員Vtuverのブースあった!」
「へー」
「―――!」
「へー」
「売れた??」
「ゼロ人です……」

ブースに戻るたび、後輩氏は苦行に耐えている人の目でこちらを見てきた。きっと、バイト代を請求したい気持ちででもいるのだろう。

終了十分前のチャイムが鳴ると、後輩氏は本を片付けようとしはじめた。
「ちょっと!まだあと十分あるじゃん!」
制止する私。
「ええ……」
不服そうな後輩氏。
机の上には開始時とほとんど高さの変わっていない本の山があった。
なんだか、ひどく惨めな気持ちになった。

「この後どうしますか?」
「帰るけど」
「分かりました」
後輩氏と一緒の帰路に就きたくなかったので、片づけは手伝わなくていいからと彼を先に帰した。

帰りの新幹線で、どうにもイライラして、後輩氏にLINEを送った。
「今日楽しくなかったでしょ?キミ本に興味ないもんね」
「楽しくなかったわけではないですが、確かに僕は並んでいる本の表紙を見て楽しむ事は出来ないです」
……めっちゃ頑張ってオブラートに包もうとしてるんだろうけど包めてないな。よけいムカつく言い方になってる。
「いや、どう見ても楽しくなかったでしょ。気が進まない誘いは断っていいからね?」
「そんなことないです。でも、終わった後、徒歩子さんとごはん行けたらなーとは思いましたけどね(笑」
サッと頭に血が上り、反射的に「死ね」と打って思いとどまった。おいおい、死ねはまずい、死ねは。

ブースに二人いる間ほぼ無言だったのに、一緒に食事に行って楽しい訳がないだろう。
後輩氏は、私を「女」としか見ていないのだろうなと思った。
彼にとっては「女」と「話し」た、「女」と「食事」に行ったという事が重要なのだろう。研究室に居た時は、たとえネガティブな意見であってもちゃんと言う人だったと思う。大方、今は私の機嫌を損ねなければいつかヤらせてくれるかも、と思っているに違いない。
私、今、セックスをエサに男をただ働きさせた女……?

私は一応、性欲は多くの男性が持っているもの、という事を了承して生きているつもりだったので、性欲を向けられることには耐えられるかな、と思っていた。生理現象で反射みたいなものだろうし。
しかし、今、私の逆恋人フィルターは完全に機能しなくなり、後輩氏の言動に怒りを覚えている。私は恋愛感情だけでなく、性欲を向けられることにも耐えらえないらしいことが分った。

それでも、恋愛から逃げるために彼氏が欲しい、という目的は、私が後輩氏の事をどんなに気持ち悪いと思っていても、「彼は私の恋人です!私は彼を愛しています!」と言い続ければ、達成される。

「ワタシハカレヲアイシテ……」いや、無理。無理無理無理。
絶対めっちゃ悪口言っちゃうわ。人に言わないと耐えられないわこんなの。

後輩氏には、付き合っている感じをやるのがキツくなってきたので、少し連絡を取るのを止めましょうとメッセージを送った。ついでに、
「腐った肉を食べたり、暑すぎる部屋で生活するのはやめましょう。今日あげた計器を使って人間らしい生活を送ってください」
送信。さあ、駄洒落に気づけ!
「腐った肉は食べてないですよ(笑」
~~~ッ!!
計器スルー!
あとこいつ、食えるからまだ腐ってないって主張なんか。肉がネバネバしだしたら腐ってんだよ。
もーーーーーーー。
無理ぃーーーーーーー。

逆恋人フィルター

帰ってから、後輩氏がキモかったという話を研究室の同期に話した。
「後輩氏さぁ、ちゃんとしたお店行ったのにサラダかきこんで食べるんだよ?ありえなくない?!」
「ないわー。サイゼでもやらねーよ」
結局私は人の悪口言ってるし、ほぼ他人だった時は悪く思っていなかった事を悪口として話してる……。

その後、お酒の席でも話してしまった。その時のみんなの感想:
「計器ってメジャーな言葉じゃなくないですか?そりゃ分かんないですよ」
ぐ、ぐぅ……。確かに。
「ていうか[後輩]さん、会った時お菓子持ってけるような気遣いできるようになったんですね!成長してるじゃないですか!」
そうなの?でも同人誌即売会に菓子折りってどうなの?コミケみたいなやつだよってちゃんと言ってあったのに。
「こみけ……ってわかんないです」
あ、そうなんだ……。
「もー、お菓子貰ったんだから素直に喜んでくださいよ~」
やっぱそう言われるよね……。
でも「ごはん行けたら良かったですけど笑」はキモくない?じゃあその場で誘えばよかったじゃん。どういう事?陰キャすぎだろ(ブーメラン)。
「徒歩子さんが怒ってたから誘いづらかったんですって!誘える感じじゃなかったから諦めたけど、本当は誘いたかったって、可愛いじゃないですか!」
かわ……嘘だろ……。キミも何かのフィルター掛けてるの?
気に入ったなら後輩氏あげるよ。私には手に負えない。
「あ、私にも荷が重いので大丈夫です」
「先輩が求めるレベルが高すぎるんじゃないですか?もっと頭のいい人が理想?[後輩]さんだって頭良いと思いますけどね……」
修士卒だし、世間的にはね……。

客観的には、やはり私が悪いのか……。


なんだか、諸悪の根源は逆恋人フィルターなのでは、という気がしてきた。
逆恋人フィルターを外してみても「いい人」と思える人を探すってことをやってみる。
知り合いを思い浮かべて、この人に恋愛感情を持たれたとしたらどんなところが嫌になりそうか考えてみる。

うーん、この人はいい人と思ってたけど、オタクでキモイと思っちゃいそう。
この人は、ラフで接しやすいと思っていたけど、片づけができないのにイラっとするかも。
この人は、おっとりしていて優しいけど、トロいのがウザいってなりそう。

短所を長所に変えることができるように、長所も短所に変えられる。ただただ人の悪口を考える作業になった。
よけいひどい事してる……。
オタクで片付けできなくてトロいってブーメランだし……。


後輩氏と別れたのと同時期に、私はやっとアロマンティック・アセクシャルと自認した。それからネットで色々調べて、リスロマンティックという言葉を知った。自分からは恋愛感情を抱くが、相手に恋愛感情を向けられることを望まないセクシャリティ(私のは恋愛感情じゃないけど)。これに対しては「それはただのクズでは」という意見もあった。私はどんな人も基本全肯定から入るので、自分のことを「良い人」だと思っていた(その評価もどうかと思うが)。だが、その後相手の好意を受け入れられないのは、世間的にはクズなのか!
新しい発見だった。

皆を平等に愛し、誰かを特別扱いしない。一見善い事に思える行いも、徹底すればクズなのか。

……いや、違うな。「ただのクズ」言ってるやつは自分が振られるのが嫌だから振った相手に文句言ってるだけの器の小さい人間だな。

ほら、人の悪口言うと言った奴の性格が悪いってバレるじゃん。
もーーーーーーー。
嫌ぁ!

Aセクとの戦いは、続く……。
とにかく恋愛から逃げたい③気づいたら無償パパ活してた話|通学路徒歩子 (note.com)

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