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主(ぬし) 後編


「お母さんの家の主はね‥」

母はニヤニヤしながら話し始めた。
「蛇だったんだよ」
「へ、蛇?」
「そう。昔の家は柱がむき出しでね。2階の天井の梁に蛇が巻き付いてて、いつも家族を見守ってくれてたんだよ」

お母さん、それって捕食するために狙われてたんじゃ‥。

母曰く、蛇は結構大きな青大将だったらしく、その長さは1.5m位あったらしい。
そしてその主はいつも天井の梁にいるわけではなく、日中はどこかに行っていて、気がつくとそこにいるという感じだったらしい。

うちの主(蜘蛛)と行動パターンが一緒だ。主は寅さんのようなフットワークだ。だが、主にあって寅さんにはないもの、それは「おどろおどろしさ」だ。

ちなみに家族で怖がる者はいなかったのか聞いてみたが、誰一人主を気にもしていなかったという。
私だったら寝ようとしている部屋の天井に蛇がいたら、きっと眠れない。主が動くたびに目が覚める!

祖父や祖母がゆるい感じだったのかと思ったが、母曰くみんな生きていくのに必死で小さい事を気にする余裕もなかったらしい。

そう考えると今の時代、食料があることも医療を受けられる事も当然で、かえって小さい事が気になるのかも。だからと言って母の時代に戻るのは嫌だ。ふかふかの布団、晩酌の発泡酒、美味しいお菓子、面白いマンガ。私って幸せだったんだなぁと思い知る今日この頃。(でもできれば発泡酒じゃなくビールが飲みたい)




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