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ねぇ先輩デートしましょ

よくある青春が嫌で人よりも勉強に励み少し偏差値が高い高校に入学することが出来た。入学した直後は期待を胸に膨らませて挑んだ入学式、これから俺の青春が始まるんだ!と、期待していた。
その期待は見事に打ち砕かれることになる。

元々人と積極的に関わろうとしないタイプの人間だったからなかなか人と関われなかった。
いや決して友達が0人と言う訳ではないがあんまり多くの友達は出来なかった。

気づけば俺は2年生に進学し後輩ができた。ただ部活に加入していない俺は後輩とも関わりが持てずにいた。1人の女子を除けば…だか。

村山 「ねぇ先輩、いつになったら私とデートしてくれるんですか?」

昼休みの学食、ほとんどの生徒が集まっている中母親か父親が作ってくれたであろう弁当を食べながら言う。
少し大きい声だったからか近くにいた生徒は俺たちの方を見るが俺と美羽を見て皆ため息をついて戻る。
美羽が俺にデートを求めるのはいつもの事。別に彼女と付き合っているわけでもないし幼稚園の頃に結婚しよとかも言ってない。高校に入って初めて知り合った。

美羽と初めて話したのは入学式が終わって全校生徒皆が帰る時のこと。
一人で帰る俺の肩を急に掴んで「私とデートしてください!」っと言う。ほとんどの生徒は俺達を見る。みなの視線が怖くて俺は美羽を連れて近くの公園に行く。

〇〇 「あの…僕も貴方は初めましてですよね?」

村山 「はい」

〇〇 「意味がわからん…」 

理由を聞くと入学式の時に俺がかっこよかったからだとの事。 
聞いた時は「はぁ?」と思わず声が出てしまった。

それから美羽と会うと必ずデートしましょう攻撃される。
どうせすぐに飽きるだろうと思っていたがその考えは甘かったと後々公後悔させられる。美羽の攻撃は衰えるどころかさらに勢いが強くなっていった。
だからもう諦めている。








村山 「で先輩早く私とデートしてくださいよ」

この言葉を聞いたのは今日で30回目。いつも思うのはなんで飽きないんだろう?という気持ち。
そもそもなんで彼女は俺なんかに絡むのだろうか?僕はスクールカースト下位に属す。反対に彼女はスクールカースト上位、挙句に引くほどモテる。唯一の欠点としたらちょっと頭があれなところだ。
常々思う。なんで俺なんかに絡むんだろうか?

○○ 「検討しておくわ」

村山 「それは検討しないやつ」














土曜日の朝いつもは行かないショッピングモールに来ていた。今日来た理由はたった一つ。ゲーセンで遊びたかったからだ。

○○ 「混んでるな」

周りを見渡すと子供連れやカップル、制服姿のまま友達と遊んでいる人などたくさんいる。
正直息ができないくらい人が密集していて今すぐに帰りたい気持ちがあるが…せっかく来たんだからと我慢をしてゲームコーナーに向かう。

ゲームコーナーに行くだけで疲れてしまったがなんとかついた。辺りを見渡すと多種多様なゲームがあって何をしようか迷ってしまう。
とりあえず一番近くにあったち〇か〇のぬいぐるみが目玉のクレーンゲームをプレイすることにする。財布から500円玉を取り出してコイン挿入口に入れる。
最初は失敗してしまったかコツを掴み三回目で取ることが出来た。
って言うか高校生がち〇か〇のぬいぐるみを抱えている事実…これクラスメイトの誰かにばれたら終わるな。
俺は最新の注意を払って遊ぶことにした。

村山 「あれ?○○先輩?」

毎日のように聴く声が少し遠くから聞えてきた。俺は無視をしようとしたが彼女は俺に近づいてくる。なんでいるんだよ。

村山 「あれ?先輩奇遇ですね」

最悪だ。一番会いたくない人に会ってしまった。休日だけはこいつとは会いたくなかったのに…

村山 「あれ?先輩それ…」

美羽は俺が抱えているち〇か〇のぬいぐるみを指さす。オワタ…一番バレたくない相手にバレた…

○○ 「違うんだこれは…」

村山 「へぇ~先輩にそんな趣味が…」

村山 「みんなに言っちゃおうかな笑?」

○○ 「頼むやめてくれ」

初めて俺はこいつに頭を下げておねがいをする。クラスにばれたら俺の居場所はなくなってしまう。

村山 「わかりましたよ」

○○ 「よかった」

村山 「その代わり私とデートしてくださいね」

普段ならすぐに断るというが今だけは俺に拒否権はない。俺は仕方がなく承諾する。

村山 「じゃあ先輩今からフードコート行きましょうよ」

確かに今日は朝から何も食べていなかったからお腹が空いていたからちょうどいい。俺は美羽の提案に乗りフードコートに足を運ぶ。


普段は行かないからお店の種類の多さに困惑してしまった。
美羽はよくここに来ているのかは分からないけど直ぐに注文をしに行く。

村山 「先輩はラーメンで良いですか?」

○○「あっ…うん…」

困惑しながら俺は美羽に注文を任せる。


二人用の席に着きそれぞれ注文したものを食べる。初めてこういうところのラーメンを食べるから期待はあまりしていなかったが意外とちゃんと美味しかった。唯一残念なのはめんまがあまり美味しくなかった。

村山 「先輩この後どこ行きます?」

○○ 「俺美羽に任せる」

村山 「それが一番困りますよ」

村山 「じゃぁ私の買い物に付き合ってもらいますね」



















食べ終わり片付けをした俺は美羽が行きたいところに向かう。
美羽が行きたかった場所はドラックストア。もちろん薬が目的ではなく化粧品が目的だ。
美羽は目を輝かせて見ているが俺は場違い感からか端っこで美羽の買い物に付き合っていた。

村山 「先輩なんで端っこにいるんですか?」

いやお前のせいだよ、と言いたいが我慢することにする。

村山 「先輩このリップとこっちのリップどっちの方が似合うと思いますか?」

美羽は俺に近づいてリップを見せてくる。
一つ目はあまり色が濃くないリップ。もう一つは女優がつけてそうな色が濃いリップだった。
リップに関しては正直ノー知識だから何もわからないから直感で色が浅いリップを選んだ。

村山 「へぇ~先輩ってこういうのが好きなんだ」

断じて違う。マジでなんにも知らないから適当に決めただけなんだ。














外に出ると辺りはもう暗くなっている。俺たちを照らすのはビルのネオンの光だけ。
夜風が俺たちを心地よく包んでくれて遊び疲れた体を癒してくれる。

村山 「楽しかったですね」

○○ 「だね」

普段はなかなか楽しいとは思わない人間だが今日は珍しく楽しいと思えた。

村山 「また今度もデートしましょうね」

○○ 「いいよ」
村山 「先輩大好きですよ」

帰り際彼女は俺に聞こえるように言う。俺は反応してどういう意味?と聞く。

村山 「さぁ?」

それが1人の人間として好きなのかそれとも異性として好きなのかは分からないけど僕も彼女が好きになった。それも1人の人間として好きなのか異性として好きなのかは分からないけど、俺は彼女が好きだ。

村山 「先輩伝えたいことが…」

彼女の言いたいことが何故かわかる。
俺の答えはもう決まっている。
 
fin

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