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許さへんで!!
「やらかした…」
1月21日の12時頃、俺はやらかした。
妻の瞳月の誕生日まで後1時間も無いのに未だに家に帰れていない。
それどころか誕生日プレゼントも買えていない状況。
完全にやらかした。
挙句に渋滞に巻き込まれてしまった…家に帰ったら瞳月はどんな反応をするのだろうか?
怒ってるかもしれないし泣いてるかもしれない。
いや泣いてるはないな。確実に怒ってる。
なんで俺がここまで焦っているのかと言うと瞳月に
「0時ぴったりに祝ってな!」
って言われているからだ。
「しーの誕生日を忘れるとはいい度胸やな!!」
車のハンドルを握りながら瞳月が言いそうなことを想像する。
家に帰りたくねぇ。
信号が青になり前の車達が一斉にエンジンの音を鳴らせながら前に進んでいく。
何とか信号が変わる前に渡れた。
時計を見ると12時58分を時計の針は指していた。
少し深いため息をついてシートの背もたれに深く寄りかかる。
完全に諦めモードに入ってしまった。
そもそもなんでこんなに仕事をしなきゃいけなかったんだっけ?
そうだ課長が早く帰りたいから書類の山を大量に俺に押し付けたんだった。
なんかムカついてきたな。
さっきのため息よりも深いため息をついて少し長い髪の毛をかきあげる。
怒られたらまぁその時だな…
時計の針が1時を指している中で俺は何とか帰宅した。
ゆっくりと鍵を開けて家に入る。
靴を慎重に脱いで足音を立てないようにリビングに向かう。
短いはずの廊下は今日だけは長く感じた。
リビングのドアをゆっくりと開ける。
瞳月がラッピングしたであろうカレーと付箋があった。
付箋を手に取って文字を見る。
『お仕事お疲れ様!誕生日には間に合わんかったな!許さへんで!』
ちゃんと怒ってた…
俺は瞳月の寝室まで足を運ぶ。
瞳月は可愛い顔をしながら眠っていた。
「ごめんなさい瞳月、仕事が長引いちゃって」
「今日は休み貰えたから朝起きたら今祝えなかった分だけ祝うからね」
眠っている彼女の眠りを妨げないように優しい声で言う。
もちろん返事は帰ってこない。
「おやすみ」
俺は瞳月のそばを離れようとした。
次の瞬間瞳月は起きていたのか羽織っているジャケットを握った。
「起きてんで!」
元気の良い声が寝室に響く。
「起きてたの!?」
「当たり前や!〇〇が全然帰ってこんかったから少しサプライズしようと思ったんや!」
「ごめんほんと」
「許さへんで!!」
彼女はベットから飛び出して俺の顔を両手で掴む。
「今日の朝はちゃんとしーを満足させてくれるんか!?」
「もちろんだよ!!」
「足りんで!今からしーを満足させてくれや!!」
「え!?」
この後俺は瞳月を頑張って満足させました。
何があったのかについては…具体的には言いません。
そこは皆様のご想像にお任せします。
『許さへんで!!』fin