【詩】ブランケット
電車のいちばん端の席
ブランケットを膝の上に、
ねむりこけるきみを見た
赤んぼうみたいな寝顔をして
この世のこわいことなどなんにも知らぬような
やすらかな顔をして
まず、かわいいな、と思った
次に、うらやましいな、と思った
そして、愚かだな、と思った
でも結局、愛おしくてたまらなくなった
窓から夕陽がさしたとき
きみのまぶたがほんの少し動いた
夕陽に透ける睫毛がゆっくりと持ち上がって
まばたきを1回、
2回、
3回
大きく開いた目はりすのように愛くるしい
こちらを見て、4回目の、ぱち、くり。
ブランケットを口元までひっぱりあげて
うるおいを持った栗色の瞳をゆがめて
はにかむ
その頬にさす朱色
花の香を纏って
こちらへ届くぬくもりに
肩の力がふっと抜けた
霜焼けの心を毛布でくるまれたように