誰かが夢を見る限り続いてく伝説
田舎の高校生の私が初めて劇場で観た舞台がABC座だった。
私が行ったことのある「ステージ」は、せいぜいピアノの発表会で使う小さなホールと成人式で使う市民会館くらいだった。だから初めて大きな劇場に足を踏み入れた日のワクワクした気持ちは忘れもしない。日生劇場、そこで見たABC座、ジャニーズ伝説、ショータイム。私は出会ってしまった、最高のエンターテイメントに。
高校生の私は「大学生になって東京に出たい」と思うだけで、すごくやりたいことなんてなかったし行きたい大学もなく、文系も理系もどっちでもよくて、山と田んぼと海に囲まれてただぼーっと過ごしていることにとにかくうんざりしていた。早くこの狭い世界から狭いコミュニティから出ていきたい、その為にひたすら大して興味もない呪文のような言葉や数式を丸暗記する毎日だった。
当時からアイドルは好きだったけど、勇気ややる気はもらえても、"希望"をもらうことなんてなかった。
学校行事の振替休日。いつもは狭い部屋の中で規則正しく並んだ机に座ってそれっぽくノートに文字を書いたり、複数派の意見に話を合わせて当たり障りのない会話をして窮屈で退屈で狭い世界なのに、通勤よりちょっと遅い時間の空いてる新幹線に乗って向かう東京。写真や服を買いに行く馴染みの原宿・渋谷ではなく、かたそうな雰囲気の中に堂々としたかっこよさのある街に出る。そもそもファン層が違うとはいえ、平日の昼公演は私みたいなへっぽこ学生なんてひとりもいなかった。
『アイドルに会いにいく=ライブに行くこと』だった私は初めて観た『アイドルが作る舞台』『A.B.C-Zが作る舞台』の演者全員が一丸に作り上げる舞台と、真っ白な大理石と赤絨毯の床、キラキラと輝く壁と天井、非日常に連れて行ってくれる劇場が、これまで私の瞳に映ったものの中で何よりも眩しくて一気に憧れの場所になった。つまらない毎日にうんざりしていた私に一瞬で夢ができた。あの場所に立ってみたい。"希望"、"光"だ。
大学では舞台について4年間みっちり勉強した。開門から閉門まで月に休みは5日未満、舞台図面を書き、稽古に行き、小道具を作り、ひたすら舞台と向き合った。ミュージカルもバレエもオペラもクラシックコンサートもライブも歌舞伎も色々なエンターテイメントを見た。周りに合わせた会話ではなく、自分の思ったことを話したり感情を表に出しても否定されない最高の仲間ができた。そして憧れで原点の劇場で舞台から客席を見ることができた。私の人生で一番濃くて最高に楽しい4年間。宝物の時間。A.B.C-Zがこんなに大切なものと出会わせてくれた。
今年は初めてえび座に行ったあの日から10年目のえび座だった。劇場は日生劇場から帝国劇場へ。ジャニーズ伝説、応援屋、そして原点星劇場。今年とは真逆にショータイムがない年もあった。
でも毎年毎年ほんとうに楽しいんだ。同じ演目が続いて変化がないように見えても変化はあるし、時代と共に変わってるように思えても根っこは変わない。今年もちゃんとこの事務所が築き上げたエンターテイメントをA.B.C-Zが愛と感謝を持って継承していた。そしてそんなエンターテイメントをずっと見させてくれるA.B.C-Zが最高に好きだ!
5人が4人になるのは寂しい。戸塚くんのレポを毎日読んでいて日に日に心臓がきゅーっと握りつぶされそうになり鼻の奥がツンとして涙が湧き上がる。悲しい。これまで当たり前に尊敬されてきた人の名前を言葉にできないのも悲しい。でもこれからも何年先もABC座を観たい、A.B.C-Zが作るエンターテイメント、ショーが観たい。A.B.C-ZのLegend Storyがこの先ずっと続いていきますように。
私はA.B.C-Zに、ABC座にとにかく感謝している。私の人生を豊かなものにしてくれて本当にありがとう。私にとってA.B.C-Zは"希望"をくれる"光"だ。目を見て言葉を聞いていると愛と優しさでいっぱいな人たちだとすごく伝わってくるよ。私もずっと愛と感謝の気持ちを返していきたい。