【白杯応援】都名子の場合 俳句highすくーる(仮)
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<In the park 公園にて>
都名子はひとり、公園のベンチに座っていた。
都名子の目の前を行きかう人々。なんだか楽しそうに見える。きっとこの人たちの人生は、充実しているんだろうな。思わず目を背けたくなる。でも、もう下は向きたくない。俯くのはやめたんだ。
都名子は周囲の人々が視界に入らないよう、わざとらしく首をのけ反らせて、ほぼ直角の角度で空を見上げる。ムカつく程に高く爽やかな秋空。ま、こっちの方がマシか。上を向いていれば、涙は零れない。
都名子は俳句に出会った、あの初夏の日のことを思いだしていた。
*******
春にこの学校に転入してきた都名子は、暫く周囲になじめずにいた。いいんだ別に。私は私の好きなことに没頭するんだ。自分に言い聞かせながら、都名子は放課後の机で1人、詩を書いていた。
そこにふと現れる謎の風来坊。詩を書くのに夢中になっていた都名子は、誰かが自分の詩を覗き込んでる空気を感じ、とっさに身構えたのだった。吾歩路との出会いが、俳句との出会いでもあった。
<Dialog Tsunako and Apollo in classroom 都名子と吾歩路の会話 教室にて>
都:!
吾:・・・・・・
都:な、なんですか・・・・・・
吾:ふ~ん。詩か。なかなかやるじゃん。
都:・・・・・・
吾:あ、僕のこと知ってる?😎
都:いえ・・・(なんでグラサンしてんの・・・)
吾:そう。まあいいや。キミ、俳句やってみたら?イイ線いくかもよ。
都:俳句・・・・・・
吾:ま、考えといてよ。ラブあんどピース🙌
都:・・・・・・
なんなの・・・
ピースサインをしながら、軽やかに教室を去っていく吾歩路の背中を、訝し気に眺める都名子。
今思えば、それが全ての始まりだった。
なんだかすごく昔のことのように思えてくる。きっと、これまでの日々が濃かったからだろうな。都名子は懸命に泣くのをこらえた。
<Haiku Club Room 俳句部 部室にて>
「キミ、俳句やってみたら?イイ線いくかもよ」
自分は詩を書くことは好きだし、文章表現自体も好きだ。俳句か。考えたこともなかったが、あの男の言葉に、都名子は妙に惹かれるものがあった。
誰かと能動的に人間関係を作ることは決して得意ではなかったが、俳句への興味には勝てず、都名子は思い切って、俳句部の部室をノックした。
「あら💛かわいらしい子ね。貴女も俳句に興味あるの?」
「まあ、はい・・・」
「いや~ん💛また女性部員が増えちゃうね!露波ちゃ~ん!那胡見ちゃ~ん!お友だちが来てくれたわよ~!」
都名子は菩薩のような笑顔に見覚えがあった。この人知ってる。保健教諭の紫野山先生だ。1度登校してから具合が悪くなって、保健室で休ませてもらったことがあったんだ。紫野山先生は優しい。都名子はホッとした。
これはあとから知ったことだが、紫野山先生は俳句部の副顧問。紫野山先生のおかげで、俳句部も女性部員が一気に増えたらしい。あの、絵がメチャメチャ上手い同級生の通虞美さんが、美術部と掛け持ちで俳句部に所属しているのも、紫野山先生がいたからだと聞いた。
「お、やっときたか😎」
部室の奥から、うさんくさそうな笑顔で近づいてくる男。教室で詩を覗き込まれた時と同様、一瞬都名子は身体に力が入り身構えた。
「ま、気楽にやればいいよ。俳句なんて楽しめばいいんだよ。ラブあんどピース🙌」
この怪しい男は、吾歩路。国語教師であり、俳句部の顧問だった。
なんで先生なのにグラサンしてるの・・・
未だに都名子は吾歩路先生に聞くことが出来てない。
【Tsunako's Case 都名子の場合】
その後、私は言われるがままに夏の大会に参加し、いきなり新人賞と銀賞を取ってしまった。五七五で季語を入れて、思ったことを詠んでみただけなのに。そこから私は、すっかり俳句のとりこになってしまった。
それと同時に、私の学校生活も180度変わった。俳句部には、いろんな人が関わってくる。生徒だけじゃない。現代文の白井先生、古文の鶴岡先生、美術の妃絽実先生もたまに遊びにやってくる。犬詩場先輩の独特の個性には憧れている。クラスメイトの唖露波ちゃんや那胡見ちゃんとはもはや親友だ。
他にもたくさんの人たちが、私と仲良くしてくれている。楽しい日々だ。ひとりひとりを大切にしたい。都名子の胸の中の月が光った。
「キミ、俳句やってみたら?イイ線いくかもよ😎」
都名子の胸の中のグラサンも光った。やかましいわ。
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<In the park 公園にて>
空を見上げて回想するのもいい加減疲れた。都名子は視線を正面に戻す。充実してるように見えた人たちは、いつの間にかいなくなっていた。
私はここで何をしてるんだろう。
秋の大会が迫っていた。都名子のプレッシャーは日々高まっていた。私は新人賞と銀賞を取ったんだ。これまでたくさんの句を詠んだ。大会前の自主トレとして、都心の23の高校に俳句道場破りにも出向いた。板橋くんや中野さんには苦戦させられたが、琉李星先輩の援護もあり、何とか全員倒すことが出来た。
俳句道場破り遠征では、都名子は都心の様々な場所に出向いた。
<In Akabane 赤羽にて>
「まま。そう言わずにもう1杯!これも人生勉強ってことで!」
「そ、そうっすよね(´めωめヾ ヘヘ・・・シーヤセン」
懲りない大人たちだ。きっと毎日この飲み屋街に来ているんだろう。ま、彼らにとってはこれも夜学なのか。都名子は思った。赤羽の飲み屋で今日も夜学して。これは顧問の吾歩路先生も褒めてくれた。遠征の成果だ。
ただ、この遠征において、都名子は己の俳句のスキルを磨く目的もあった。もちろんそれは、秋の大会に向けてだ。メタファーとか擬人法とか使って詠んでいる仲間が、カッコよく見えた。自分もああいう感じでやってみたい。でも仲間たちには「よく分からない」と言われたし、自分でもしっくりこないところがあった。
私らしい俳句ってなんだろう。遠征したら、それがもっと見えてくると思ったけど、逆に良く分からなくなってしまった。秋の大会に向けて、きっと100以上は詠んだと思う。でも、なんか違う。
都名子はもう1度空を見上げて、夏の大会に思いを馳せた。あの時の私は、誰かに評価されたいとか、上手い!と唸られたいとか、一切思っていなかった。心のままに、ストレートに詠んでいたな。
ふと、都名子の視界に、昼の月が入ってきた。ムカつく程の青空の中にポツリ、輝けないでいる月。まるで私みたいだと都名子は思った。今にも消えそうな昼の月に、都名子が語り掛ける。私、秋の大会に向けてもう100句以上も詠んできたんだよ。結構しんどいんだよ。
昼の月は何も言わず、ただ笑いながら、青に溶けていった。
<Staff Room in haiku-high school 職員室>
夕方の職員室。学年主任の北大路先生が、一生懸命教材を作成していた。どうやら漢字にルビを振っている。
「次は小前田(秩父本線)。これ、中々良いな。よし、次は鴨長明辺りを弄るか・・・」
職員室のドアが開く。都名子が入ってきた。
「北大路先生!!お待たせしました!!」
「・・・どうしたの?」
「秋の大会、提出句出来ました!!」
「・・・遅いよ」
「すみません笑」
「みんな心配してたみたいだよ」
「後で謝っておきます」
「じゃ、これ送っとくから」
【Tsunako's Case 都名子の場合】
北大路先生に秋の大会の俳句を託し、私は部室に向かった。
いつもと変わらない面々だ。新しい部員も増えたかな?
やっぱりみんな、私の秋の大会のことを気にしてくれてたみたいだ。
うれしい。誰かが自分のことを気にかけてくれているってだけで、すごく救われた気分になる。
この学校にきて、よかった。
私の俳句人生は、始まったばかりだ。
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白杯みんなの俳句大会。決勝進出6句全て素晴らしい。全部にスキつけたい。他の皆さんごめんなさい。
オイラは、麻生ツナ子を応援します。
都名子を応援したくなってくれた貴方(貴女)!!その一票を待ってます。もう1回貼ります。このつぶやき記事にスキをつけることが、一票になります。よろしくお願いいたしますm(_ _)m
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