2020年のプロ野球が外国人選手に与える影響を考察し、パ・リーグの外国人選手事情を占う。 2020.06/17
お世話になります。マーメイド侍(@Fan526Hawks)です。
今回は、前回投稿した「プロ野球 2020年シーズンの外国人選手事情を占う」の後編、パ・リーグ編を執筆していきたいと思います。
前回の記事(セ・リーグ編)を読んでいない方はこちらから。オースティンの好調の要因について「周辺環境」という観点から考察していたりします。
さて、感染症拡大により、3月20日に開幕するはずだった日本プロ野球は、6月19日の開幕へと延期されました。この前代未聞の事態が、外国人選手、主に来日1年目の選手に対してどのような影響を与えるのか。考えられるメリット・デメリットをざっとまとめてみました。なお、前回の記事の導入部で挙げたものと内容は同じですので、ご存知の方は目次から飛ばしてしまっても良いかと思います。
1.メリット
①相手チームの対策が遅れる
→練習試合は11~12試合。例年以上に事前のデータがない状況で開幕できるため、調子が良い選手はそのままの状態を維持し続けられる可能性が高い。例年見られる「オープン戦~春先までは調子よかったのに弱点露呈で成績急降下」のパターンは少なくなる?
②外国人選手は気温が高くなってからの方が得意
→まあ個人差はありますがね。気温が高くなってきてから猛打を爆発させる選手は多いイメージ(特に中南米の選手でしょうか)。投手も、気温が高くなってからの方が肩があったまってくると聞きますね。実際オープン戦の時より球速が上がっている選手が多い印象です。
③無観客ならではの球場音への馴染みやすさ
→まあこれはどうなんでしょうね(笑)。日本特有の鳴り物応援、BGMがないのは寂しい一面、野球の音がよく聞こえます。これって海外と雰囲気似てたりするのかも。だとしたら特に来日1年目の選手たちにはプラス…? いや、選手たちはプレーに集中していて気にしていなかったり、やっぱりお客さんがいる方がプラスなのかもしれません。
④外国人枠の増加(仮)
→先述の通り、まだ未定ですがね。5枠(出場は4人まで)になり最も恩恵を受けるのは先発投手ではないでしょうか。4枠の際は、登板後他の選手との兼ね合いで、翌日に1回登録抹消して、また10日後に登録して翌日抹消・・・という流れになりがちでしたが、中5~6日できっちりローテーションに入れるようになります。
2.デメリット
① 適応への時間がない
→メリット①の逆パターン。逆に調子が悪かったり、日本の攻め方に慣れていなかったりした場合、実戦経験が積めないのはなかなかの痛手。生きた球を見る経験という意味では日本人選手にも通じますね。またクイックやランナーケア、守備連携などにも適応できるかというところ。
もちろん、野球面に限らず生活面も、慣れない環境です。同郷のチームメイト、スタッフや、日本でのプレー歴の長い選手からサポートを受けられるような環境があれば、非常に心強いかと思います。
②調整の難しさ
→これは日本人選手にも当てはまりますね。
本来は、2月にキャンプインしてオープン戦で状態を上げつつ、3月20日の開幕にある程度のピークを持ってくる計算だったかと思いますが、それが崩れ、自粛期間を過ごすことに。いつ開幕が決まるのか不透明な状況の中、どのような調整を行ってきたのか、その是非は非常に難しいのですが、答えがわかるのはシーズン中になりそう。
③精神面のコントロール
→1年ごとの成績が来季の契約に直結する外国人選手にとっては、日本人選手以上にナーバスな問題かと思います。例年以上に短い準備期間で素早く結果を出さなければならないというプレッシャーがあります。ひとたび開幕ダッシュでつまずいてしまった場合、それが焦りや空回りにつながる可能性は例年以上かと。また、それにより引き起こされるケガやスランプによるモチベーションの低下も懸念材料です。
さて、そんな中このようなニュースがやってきました。
なるほど。まとめるとこんな感じですね。
4人で運用する場合は従来通り、投手3野手1、投手2野手2、投手1野手3が可能。ただし、5人枠の中で投手4野手1や投手1野手4といった運用を採用した場合、シーズン中に投手3野手2、投手2野手3などへの変更は不可。なお、投手2野手3から投手3野手2の変更などは可能。ベンチ入りは変わらず4人まで。
今回はこのルールを踏まえつつ、パ・リーグの外国人選手事情を分析してみましょう。
3.各球団の外国人選手事情 パ・リーグ編
パ・リーグ編から投手(黄色)と野手(緑)を色分けしてみました。
(カッコ内の数字はNPBでの通算年数。青字が1年目の選手。下線が開幕1軍濃厚。斜体は他の選手との兼ね合い、調子次第。)
※バレンティンは今年から日本人枠。コラスは入れてません。
さて、まず目を引くのが西武と日本ハム。計5名の少なさで、なんと開幕時は3名のみの体制になっていますね。
リーグ連覇中の西武は、立役者となったニールが開幕投手に内定。そこに7回起用が予想されるギャレットと打撃好調のスパンジェンバーグの1年目アメリカコンビが開幕メンバーになりそうです。
特に、スパンジェンバーグは貢献度高そうですね。好調なバッティングに加え、外野・二塁・三塁をこなせるフレキシブルさは、連戦続きの今季において重要なポイント。西武には、もともと外崎修汰という優秀すぎるユーティリティプレーヤーがいますが、彼のような役割を果たしてくれると、数字以上にチームにとってはありがたい。
ただ、ここからが問題ですね・・・
同じく1年目でアメリカ出身のノリンは先発候補ですが、コンディション不良が目立ちます。7年目のメヒアも調整が遅れていますね。スタメンは奪えずとも、相手にとっては、ベンチにいるだけでも脅威になる存在なのですがね。これで外国人枠を余らせてしまうのはもったいない。
西武の場合、ウィークポイントは投手陣とはっきりしていますから、個人的には1人~2人ほど外国人投手の補強ができればいいかと思います。2018年、マーティン、ヒースと途中加入した中継ぎがチームを救い、リーグ優勝した時のようなイメージです。
日本ハムも似たような形ですね。
昨季はケガに苦しんだマルティネスですが、3年目の今季はここまで順調。ただ1人来日1年目のバーヘイゲンとともに先発ローテの一角としてチームに貢献したいところです。
なお、この2人はアメリカ出身で同じく29歳。日本歴では先輩となるマルティネスがバーヘイゲンをうまくサポートできる体制と言えるのではないでしょうか。
痛いのは、ロドリゲスの離脱ですね。先発からロングまで、日本ハムの投手起用を支えたナイスガイが、左膝手術で復帰まで6週間の見通し。ショートスターターを取り入れる日本ハムにとって、彼はかなりの必要戦力かと思います。
野手では、王柏融が日本球界2年目。昨季感じられたパワー不足を徐々に克服している印象で、成績アップも期待できるのではないでしょうか。
さて、ここからが懸念点です。
巨人からやってきたビヤヌエバは、弱点の三塁手を埋めるべく、レアードの再現をと望まれましたが、オープン戦は低空飛行。レギュラー固定はどうかなあと思いましたが、さらに虫垂炎で離脱となり、復帰は夏場に。日本ハムは、先述の王柏融が長距離タイプとは言えないため、外国人スラッガーを欠いた形となります。もともと懸念されていた長打力不足がさらに深刻になってしまいました・・・
代役を務めるであろう横尾や売り出し中の野村にもチャンスが与えられそうですが、過度な期待は禁物。できれば、長打力を補えるような外国人選手が求められますね。
オリックスには、注目のアダム・ジョーンズがやってきました。
昨年まで12年連続で110試合以上の出場。シルバースラッガー1回、ゴールドグラブを4回受賞した「バリバリのメジャーリーガー」で、今季NPBにやってきた外国人選手の中では、いちばんのビッグネームといえるでしょう。
ここまで、そのバットでは結果を残せておらず、守備や走塁での衰えは隠せません。体も絞れてないかなあとの印象も受けましたが、西村監督含め、ファン全員が「開幕には間に合わせてくれるだろう」と願っています。さらに、福良GMはこう語ります。
「もちろん得点力不足の解消は一番の目的ですけど、それ以上に、ウチの若い選手に与える影響を考えたということも獲得の理由のひとつでした。向こうでも彼は常にクラブハウスのリーダーだったという話は聞いていましたし、実際に会って話しても賢いなと思います。そういう彼の言動ひとつを取ってみても、若い選手にしてみれば勉強になると思うんですよ。彼らがジョーンズから何かを学んでくれたらチームにとってはプラスに働くと思いますし、いい方向へ導いてくれるかな、というのはありますね。」
ジョーンズは、野手陣の中ではチームで2番目に年長となる35歳。13-14年に楽天に在籍し、日本一に貢献した同じく「AJ」ことアンドリュー・ジョーンズのように「勝利の哲学」のようなものを、チームに届かせてほしいですね。
そのジョーンズと中軸でコンビを期待されるのが、こちらも加入1年目のロドリゲスですね。練習試合で3本のHRを放つなど豪快なバッティングが印象的で、クラッチヒッターとしての働きが望まれます。それこそジョーンズと2人で、13年楽天の4番・AJ、5番・マギーのようなコンビが組めると理想的ではないでしょうか。不調の場合、3年目のモヤも控えていますね。
投手陣では、8年目とベテランの域に達したディクソンがクローザーを務めます。抑えに必要な圧倒感、支配力のようなものは少し物足りませんが、好不調の波が少ないことはありがたいですよね。さらに3年目のアルバースも今季は順調で、ローテの一角として復帰に期待です。
開幕メンバーを外れましたが、新加入のヒギンスも面白い。150km/hをゆうに超える速球にカーブ、チェンジアップを交えますが、奪三振能力の高さの割に、制球などには不安定感を感じませんでした。ディクソンのストッパー起用が厳しくなってきた時に十分代わりを全うしてくれるのではないでしょうか。
ロッテは、全体としておもしろい傾向が見られます。
まずは昨年からのメンバーを振り返りましょう。
野手陣では、来日6年目を迎えるレアードと2年目を迎えるマーティンが順当に開幕メンバーに名を連ねそうです。投手は、10年目を迎えるチェンただひとり。ワンポイントから回跨ぎまで、今季も幅広い起用に応えてくれるでしょう。
新加入勢も見てみますかね。
楽天から移籍したハーマンは、来日4年目を迎え、日本球界のことはもう熟知していることでしょう。さらにジャクソンは、16-18年に広島でプレーしており、2年ぶりの日本復帰。通算4年目となりますから、戸惑いなくシーズンに臨めるはずです。ひとまずここまでが1軍メンバー。全員日本経験があることは非常に頼もしいですね。
実はもう1人支配下の投手がいて、育成から上がってきたフローレスですね。この選手来日1年目…かと思いきや、実は昨年BCリーグの富山でプレーしています。つまり支配下選手は全員日本球界経験者。上にあげたデメリットをうまく回避していると言えるのではでしょうか。
充実の体制と言えるのが楽天でしょうか。
楽天は、ここ最近外国人選手の活躍が目立ちますね。昨季加入のブセニッツ、ブラッシュはどちらも大当たり。ブセニッツはセットアップとして年間通して安定した投球を披露。ブラッシュは、その特徴的な構えに賛否両論ありましたが、4番として、33HRに出塁率の高さ(.397)も心強いですね。
さらに今季はロメロが加入。来日4年目を迎える助っ人は、日本での実績は十分。ケガがちなところが心配ですが、そこは来日6年目を迎えるウィーラーともうまく併用できればよいでしょう。
5年目の宋家豪も年々登板数を増やし、チームに欠かせない戦力になってきていますね。ブセニッツ、そして唯一の来日1年目となるシャギワとともに、鉄壁のリリーフ陣を形成できる可能性を持っています。
国別でみても面白くて、支配下では宋家豪を除く5名がアメリカ出身。唯一の1年目シャギワにとっては、明るいキャラクターのウィーラーに加え、日本歴の長いロメロ、そして同じくブルペンを支えるブセニッツとサポートも万全といえるでしょう。
ソフトバンクは、2選手が合流できないという異例の事態ですが、まだまだ余裕すら感じられます・・・
まずは先発に2枠。6年目を迎えるバンデンハークと来日1年目のムーアが濃厚となっています。特にムーアは、バレンティンの陰に隠れていますが、こちらも大物。MLB通算では54勝。13年には、17勝4敗防3.29の成績を残したこともあります。推定年俸も3.8億円とかなりのものですね。バンデンハークとともに先述の2人が帰ってくる前に好投を見せ、枠争いを勝ち取りたいところ。
さらに、モイネロも不動のセットアップですね。来日して1軍に上がった当初は、どうも落ち着きがなく、同じくキューバ出身で先輩のデスパイネが献身的にサポートしていたのが懐かしいですね。そのデスパイネ、グラシアルといったキューバの先輩たちがいない中での開幕ですが、来日4年目となり、自立したところを証明してくれるかと思います。
これにバレンティンが加わりますが、実は今年から日本人選手扱いということで外国人枠には関係ないのですね。ただ来日10年目ということで、外国人選手の中で精神的支柱のような働きを期待したいところです。
まだまだ候補が筑後にいて、2年目を迎えるC.スチュワート・ジュニアもその大器の片鱗を見せており、シーズン途中に谷間で上がってきそう。そして忘れてはならないのがサファテですね。10年目を迎え、傷も癒えてきました。39歳を迎えながらなお、腐らない姿勢は、それこそスチュワートや枠の関係で2軍に降格してしまった選手にとっても好影響。今季1日でも1軍登録されれば日本でのFA権を獲得し、来季から日本人選手扱いにもなります。全盛期ほどの威力は欠きますが、ブルペン陣が疲弊した際にその経験とピーキングが武器になればいいですね。
そして、感染症の影響で来日が遅れているのがデスパイネ・グラシアルのキューバコンビですね。いまだ目途は立ちません。しかし、こんな明るいニュースも飛び込んできました。
どうやら、キューバ国内は封じ込めに成功したようですね。日本側がどうかという問題はありますが、早ければ7月中頃に来日。8月くらいには1軍合流できるかもしれません。外国人、そしてチームの核ともいえる2人を欠いての開幕ですが、まだまだ外国人選手の層は厚く、大きな不安要素にはなっていない模様です。
4.まとめ
今回は、2回に分けて開幕延期という事態が外国人選手、主に来日1年目の選手に対してどのような影響を与えるのかについて考え、各チームの布陣を考察してみました。
考えられるメリット・デメリットと各チームの陣容を見合わせてみると、それぞれさまざまな課題や好材料があることがわかりました。この考察に対して、彼らが今季どのような成績を残すのか、そしてどの選手がチームの救世主となるのか、非常に楽しみですね。
最後になりますが、この異例のシーズンに日本でプレーすることを決心してくれたすべての外国人選手に敬意を表したいと思います。各選手の日本での活躍を一ファンとして、そして日本人として心待ちにしています。
最後までご覧いただきありがとうございます。次は順位予想でお会いしましょう。
それでは、また。
2020.06/17「2020年のプロ野球が外国人選手に与える影響を考察し、
パ・リーグの外国人選手事情を占う。」
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