ハープのコンサートに行ってきました(国際ハープフェスティバル メインコンサート2日目)。

 ハープ奏者アレキサンダー・ボルダチョフのソロ、歴代コンクール優勝者のソロ、およびボルダチョフとの2台ハープデュオ、学生フルート奏者との二重奏、最後にハープアンサンブルという「いろいろなハープを楽しめる」コンサートであった。
 開演前、ロビーでハープを触れるイベントがあったので参加した。赤い弦がド、黒か青がファというわけで、まずは両手で倍音を使って「きらきら星」を弾く。なるほど、ピアノと違ってオクターブが簡単に届くのはいいね。楽しい。
 続けて、ハープといえばグリッサンドなので、人差し指で低音から高音へ、親指で高音から低音へと指を滑らせてみたが、ものすごく指の力が要る。わたしは数年間マンドリンを弾いていたが、あまりに指の負担が大きく、弦を押さえる左の指先が真っ白になって指紋がなくなり、感覚も鈍ってしまった。ワープロのキーボードを叩くのに支障があったので結局やめたという経緯がある。
 というわけで、弦をはじく撥弦楽器はかなり指の力が要ることは知っていたが、ハープはマンドリン以上である。相当に指が強くないと弾けない。体力勝負の楽器でもある。ハープ奏者は女性が多いが、女性に向いているとは言えないのではないか。
 ハープの弦はグランドハープ(いわゆる「ハープ」)で47本。意外と少ないと思ったが、ペダルで半音を出せるのでピアノとほぼ同じ音域が実現できるらしい。
 ソロ演奏はハープのいろいろな響きが聴けて楽しかった。
 フルートとの二重奏はよかった。フルート奏者は弱音が苦手なようではあったが、学生にしては上手い。音程が確かだし、音の跳躍でぶれない。低音域はしっかり、高音域は豊かに響かせていた。
 そして、モーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」がほんとうに偉大な曲であることを改めて知った。第2楽章だけであったが、客層と「ハープフェスティバル」であることを考えれば順当だろう。
 ハープアンサンブルは20人のアマチュア合奏で第1ハープから第5ハープまである。パートのトップがみなそこそこ技術をもっているので、聴いていてなかなか楽しかった。
 ハープのソロとアンサンブルを聴いて思ったこと。ハープというのは音が減衰する楽器なので、ずーっとハープだけを聴くにはアンサンブルであってもしんどい。フルートとのデュオを入れたのはプログラム上、正解である。
 さて、演奏が一番よかったのは2台ハープ。ボルダチョフと景山梨乃(読売日本交響楽団ハープ奏者)のペアによる〈アリャビエフの”夜鳴き鶯”のテーマによる「北の思い出」/J.トーマス〉だった。
 同じ世代で小学生時代からコンクールで何度も顔を合わせてきたという2人は、互いの癖も長所も短所も知っている間柄だ。その共演ということで、どんなふうに合わせるのかを見たかった。
 2台ピアノでタイミングを合わせるには、大きいボディジェスチャーとか足で床を叩いて合わせるなどの技を使うのをこれまで見てきた。ハープならば2台並べても互いの顔がすぐそばにあり、手も見える。
 その状態で、視線や首の動きで呼吸を合わせていく。聴いたことがないどころか曲名も知らなかったが、テーマが1stから2ndへ、また1stへと移ってゆくところや、「伴奏」パートがどうなっているのかと興味深く聴いたり見たりできた。なにせ1列目20番という最前列中央の席なので、指の動きひとつまでよく見える。さらに双眼鏡を使えばまさに間近で感じられるのである。
 これは楽しい。機会があれば、ぜひまた2台ハープを聴きに、そして「見に」いきたい。来年のハープフェスティバルにも、ぜひ「2台ハープ」をプログラムに入れてほしい。

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