ついにヤマトから佐川になった~コストカットはここまで来たか

出版界ではヤマトがデフォルト

 出版業界では、書籍や校正紙(ゲラ)など、何かを「送る」ときにはヤマト運輸を使う。単価は高いが、トラブルが最も少ない運送業者であると周知されているからだ。
 実際、これまで出版社と仕事をすると、必ず「宅急便」で校正紙が送られてきた。
 校正紙は誤配や遅配があると困る(最悪は本の発行スケジュールにも関わってくる)から、「信頼」の宅急便を使うのは当然だろう。だが、到着まで数日間かかってもいいような見本誌等も、ヤマトで送られてくることがほとんどだった。
 これは、会社がヤマト運輸と契約していて毎日集荷に来るからだろう。忙しい編集者にとって、見本誌や、配達日数がかかってもよいときだけわざわざ他社を使うのも面倒というのが理由に違いない、と思っていた。
 そんなこともあり、出版界の「ヤマトへの信頼」は、「物流の2024年問題」があっても、いや、だからこそ、揺るがないと思っていた。

メールの「佐川急便」の文字を二度見

 数日前「初校発送しました」というタイトルで出版社からメールがきた。件名から考えて、「いつもの『送り状番号お知らせ』だろう」と本文を読んでいったわたしは息を大きく吸い込んだ。

 佐川急便 送り状番号 0123-4567-8910(ダミー番号です)

となっていたからである。
 こないだまでは確かに、「ヤマト」だったのに。

時間通りに届いたけれど……

 翌日、「佐川急便」の配達は時間指定どおりに来た。だが中身を開けようとすると、校正紙を包んでいるビニール袋が破れてしまった。ビニール袋はどうせ開封するものだから破れてもどうということはない。だが、梱包物の封筒ひとつとっても内容物に影響しないようなつくりになっていたヤマトとはやっぱり違う、と思い知らされた。
 細かいところまで含めて、ヤマトに敵う運送業者はないのだな、と。

経営危機にあるのか!?

 出版社側がそういったことを知らないわけはない。それがわかっていても、この会社はヤマトから佐川に乗り換えたのだ。そこまで「コストカット圧力」が厳しいのだろう。経営状態がよくないのだろうか。
 出版界は斜陽産業。利益幅は下がる一方だろう。だが、フリーランスを多く使う出版界にとって、運送業者は命綱だ。信頼よりもコストカットが大事なのか。少なくともこの会社は、すでにそういうマインドになってしまったということなのか。

だがわたしはヤマトを使う

 この会社からは今後、校正紙は佐川急便でしか送られてこないだろう。
 とはいっても、こちらから送る荷物は、高価であってもヤマトを使わざるを得ない。日本郵便はこれまで何度も遅配があったので信用していないし、他業者との取引はありえない。何よりこちらは個人である。個人が企業に「到着時間指定」でモノを送るといえば、ヤマト以外に考えられる業者は存在しないのだ。
 インボイス制度といい、フリーランスにとってどんどん厳しい時代になっていく。わたしはそのなかで生き残ることができるのか。
 いや、生き残るための策のひとつが「高くてもヤマトを使い続ける」ことであると信じて、これからも運送費を支払い続けることになるのだろう。フリーランスは「信頼」がすべてなのだから。

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