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今は亡きMOWホワイトミントとの愛の日々


一人暮らしをしていた時、私は西友に身も心も捧げる気持ちでいた。なぜなら私の愛する森永乳業の「MOW ホワイトミント」が88円ぐらいで売っていたからだった。

「MOW ホワイトミント」は2015年の夏に発売されたアイスクリームだった。

仕事でクタクタになって電車に乗り、駅から歩いて安いワンルームのアパートに帰り、一人暮らし用の小さな冷蔵庫を開けると、昨日買ったホワイトミントが迎えてくれた。

私は部屋で一人、昨日作ったカレーと冷凍したご飯をレンジでチンしてムシャムシャ食べた後、ホワイトミントをチビチビと食べた。

食べ終わると寂しささえ感じた。アイスが食べると無くなることに、今初めて気づいたような感覚だった。

そして数日後、また西友でホワイトミントをいくつか買った。冷蔵ショーケースの中でホワイトミントは88円の値札をつけて、いつも私を待っていてくれた。

夏が過ぎてホワイトミント味は西友から姿を消した。それから二度と、ホワイトミントとは会っていない。



そもそも私はチョコミントアイスが大好きだった。赤城のチョコミントが一番好きだ。明治のスーパーカップのチョコミント味もまた愛していた。しかしMOWのホワイトミント味もまた素晴らしかった。今はもう食べられない、という状況の補正もあって、自分の中で忘れられないアイスとなった。

その後、MOWの新作が出た。エチオピアモカコーヒー味だった。西友で買って食べた。ホワイトミントの事を考えながら、エチオピアモカコーヒーを食べた。

翌年の夏、ショーケースにホワイトミントはいなかった。ヨーグルト味みたいな新作が出ていた。私は赤城のチョコミントアイスを食べながら、ホワイトミントのことを考えた。


私はなんとかもう一度ホワイトミントに会いたいと思った。そして森永乳業公式のMOW公式ファンクラブを発見し、入会した。

入会する時、ハンドルネームの入力を求められた。私は確実に「その名前は既に使用されています」と表示されることを承知で「ホワイトミン党」と入力した。

しかしその入力は通ってしまった。世界でたった独りぼっちになってしまったような気がした。なぜ誰もこの名前を使っていない?理解に苦しんだ。

当時のファンクラブは、いわゆる懸賞マニアの人々があふれかえっていた(今はどうなのか知らない)。アレンジ料理みたいなものを提案している掲示板などあったが、誰一人、ホワイトミントの話をしている奴はいなかった。

ホワイトミントは私の世界線にしか存在しなかったのだろうか。


私は誰かホワイトミントのことを覚えていることを祈って、掲示板に自分の思いを投稿した。

当時のスクショが残っている。内容は以下の通りである。

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数日すると、3つぐらいコメントがついた。

内容は「覚えてます」とか「おいしかったですよね」みたいなものだったと思う。ある人が「普通のMOWにミントを混ぜてみては?」といった提案をしてくれた。

なぜ気づかなかったんだろう。私はもはや惰性で付き合っている西友へ向かい、MOWバニラと、スペアミントの粉々になったやつを購入した。

家に帰り,MOWバニラにミントの粉を入れて食べた。何かが違う気がした。でもなんとなく雰囲気は出ていたように思う。

ミントを混ぜたMOWを食べながら、私はなんだか虚しさを感じた。味を再現する行為をしていると自覚すると、ホワイトミントがもう売られていないことを痛感した。

私が求めていたのは、ホワイトミントの味を再現する事ではなかったのかもしれない。冷蔵庫の中でじっと私の帰りを待っていてくれた88円のホワイトミントがただ懐かしかった。


MOWにミントを入れて食べる行為は、それ以来していない。 







 


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