meria 二章 - 3

夢を見ていた。
愛菜は乗り遅れそうだったバスに無事に乗り込み、毎日通う通学路の坂道をぎゅうぎゅうの車内から眺めていた。いつも通り坂の上にある学校に付くと飛ぶようにバスを降りて教室へ向かう。
黙々と授業を受け、昼前の移動教室。授業の行う教室へ向かい、隣の教室の友人たちと移動を開始するが友人達とはなんだか距離を感じる。
前を歩いていた友人の二人が愛菜の顔をちらり見るも、何も言わず歩き続ける。隣の友人も何も言わない。
愛菜は何か違和感を感じつつも教室へ向かった。教室に着いても、二人は愛菜とは会話をしようとはしなかった。
あれから、目すら合わない。

「愛菜ちゃん、どうしたの?」

急に隣の友人に呼ばれ、はっとする。

「何かあった?」
「んー、最近調子悪くて」

この子はきっと自分と喋るようにと前の二人から言われたのだろう。
お互い表情は曇っていて、楽しく雑談という様子ではなく、終始ぎこちない会話だった。

(そういえば、この日から隣の教室には通わなくなったんだっけ)

ここまでの出来事が全て過去の休み時間の出来事である事に愛菜は気付いた。気づいてからも始まった授業を受け続けるが、これが夢であり過去のもとわかるとなんだか虚しい気分になる。
愛菜は意を決したように授業中にも関わらず椅子から立ち上がり廊下へ出る。
振り返り、教室を見ると問題なく授業は続いていた。自分が居なくても大丈夫といったものではなく、まるで最初から自分が居なかったかのようだ。
その後は緑色をしたリノリウムの床をじっと見つめながら校内を延々とさ迷っていた。普段は性格上、授業をサボるなんてことは出来なかったので新鮮な気分だ。しかし爽快というわけでもなく妙な罪悪感と孤独感に襲われる。
廊下から見える別館校舎の三階にふと目が行くと目の前が暗くなった。幕が下りたようにざっと何かが目の前を覆い隠す。

「あ……」

夢はそこで覚めてしまう。
覚める前に、誰かに呼ばれたような気がした。

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