ひょんなことからカーリングの沼に腰まで浸かった話
今回は北海道コンサドーレ札幌 Advent Calendar 2023に向けて書いたものです。この企画も気が付けば10年、自分の引き出しの中からこれ以上サッカーとコンサドーレを絡めて書いていくのは難しいと思いましたが、コンサドーレとカーリングを結びつければ何とかなるのではと思い、参加しました。
カーリングとの距離感
カーリングの原体験は1998年の長野オリンピック。当時中学生の私はテレビで初めてこの競技について知り、覚えているのが試合の内容というより日本男子チームの短髪の青年が顔を覆って悔しがってた姿でした。
それからは4年に1度、冬季オリンピックの時だけ見るというか情報に触れるという感じでした。
私が人生の大半を過ごしている札幌はスキー、親の転勤で3年間過ごした帯広はスケートが体育の授業で取り入れられて、ウインタースポーツとの距離は他の都府県に比べれば近いですが、スキーやスケート以外のウインタースポーツと触れる機会は殆どありませんでした。
2018年にコンサドーレが男子のカーリングチームを持つようになってから4年に1回気にするペースが年に数回気にするようになり、オリンピックに派遣されるチーム以外にどのようなチームがあって、どんな大会があるのか気にするようになりました。
ただ、1試合全部見て決勝戦まで追うというほどでは無く、ダイジェストで印象的なプレーを見ている感じでした。
一気に縮まった距離
そんな私とカーリングの距離が2023年に入って一気に縮まりました。
2022年の年末に仕事関係で体と心がパーン!となって、2023年はストレスから距離を置いて長期休養にあてようと思っていました。(記事公開時点で継続中)
ただ、ボケーっと家で過ごす以外に社会参加できる機会が無いか探していました。
2014年からスポーツボランティアのコンサドーレボランティアスタッフ(CVS)に参加していたものの、2019年12月を最後に疫病の関係で活動がストップ。
ただ、今年のさっぽろ雪まつりで市民雪像2基(ドーレくんとミシャ監督)をCVS仲間で作っていた時に、趣味でカーリングをやっている人に「やってみたいけど、何かきっかけはある?」と聞いたところ、札幌市スポーツ協会でやっている初心者向けのカーリング教室があって、その時やっていた平日午前のコースは定員割れしているから申し込みな!という千載一遇のチャンスが訪れたので今年の2月から週に一度、1クール1〜2か月の初心者・初級コースに参加。
体一つで札幌市豊平区月寒にあるどうぎんカーリングスタジアムへ行き、カーリングシューズとブラシを借りてヘルメットと肘・膝サポーターをつけて参加。
教室参加者はレンタル料込みですが、それ以外の施設利用の際には100円で借りられます。
カーリング場に足を踏み入れる
教室は指導員1人に対し受講者は最大10人。
カーリングシューズは投げる方の手と逆、右投げなら左足の底にテフロンやステンレスの素材が付いて滑る仕組みになっており、陸上のスタート板のようなハックに滑らない方の足を乗せ、体勢を低くしてから滑る方の足を踏み出してハックに乗せた足を蹴ってツツーっと滑りながらストーンを投じるというオリンピックで見たあの動作をいきなりやる!…のは都合が良すぎる話で、まずはブラシを持ちながらペンギン歩きで約45メートルあるシートと呼ばれる競技エリアを往復して片足だけ滑るカーリングシューズに慣れるところから始まります。
次にシートの幅5メートルを利用し、投げる時の姿勢をストーンを使わず何度もやってからハックを使っての練習。カーリングのストーンは重さ20キロほどあるので、はじめからストーンを使うとストーンの重さに頼った姿勢になるので、ブラシのみで姿勢を掴む練習を繰り返します。
ストーンを投げる時は真っ直ぐ投げるものではなく、時計回りにターンをかけ右にカーブさせる、反時計回りにターンをかけ左にカーブさせて目標に運ぶ感じになるので、再度5メートルの幅を使いペアになってターンをかけてコツを掴んでから、ようやくオリンピックで見たストーンを投げる動作(デリバリー)をやります。
とはいえ、さっきまでペンギン歩きしていた人間がいきなり投げられるはずもなく、向こうのハウスまでの距離感が画面では伝わらなくて、思っていた以上に遠い。姿勢が崩れたり力の具合が掴めずストーンが届かなかったり行きすぎたりとなりますが、何度もやっていくうちに1投くらい約40メートル向こうにあるハウスの中に行き有頂天になります。
大体1回目の2時間は反復練習で、向こうのハウスに向かって投げられればOKという感じです。
企業や団体、修学旅行でのカーリング体験も大体このような感じになっていますが、中には2時間の体験で終盤にフルサイズのゲームが出来るまで行けるんじゃないかと思って張り切って対戦表を作ってきたグループもあったと指導員から聞きました。
1回目で覚えたことは1週間空いたら結構忘れるので、2回目も反復練習してからハウスに向かって投げる。でカレンダーによっては次の回まで1〜2週間空く時があるので、次の回も序盤は反復練習してハウスに向かって投げ、ブラシを使ってスイープの動作を学び、何となく1〜3エンドくらいのゲームが出来るようになって1クールの教室が終わるという感じです。
道具を揃えたいと思ったが…
2月〜5月まで週に1度の教室に参加していくうちにレンタルの道具では物足りないと感じて自分の道具を持ちたいと思うようになります。
借りているのもシューズとブラシだけだからそんなに掛らんべと思って調べてみたら、シューズは3〜6万円、ブラシは1.5〜3万円くらいで私の考えは甘かったことを思い知らされました。
シューズやブラシはカナダのメーカーから取り寄せるのが一般的で、国内の販売店で注文しても在庫が無ければカナダから取り寄せるので2〜4週間くらいかかる事を知りました。
とりあえずブラシはフリマサイトやオークションサイトで現在日本の販売店で取り扱っているメーカーでパッドやヘッドなど互換品に対応しているモデルを探し、5千円+送料でゲット。
シューズは色々調べていくうちに自作シューズという分野があることを知り、その中で2022年北京オリンピックのアメリカ男子代表のマット・ハミルトン選手がNIKEのダンク LOWベースのシューズを履いており、メディアでも結構注目されていたのでシューズはこっちの路線で行こうと決めました。
国内で自作シューズを作っている方の投稿を参考にしたり、YouTubeで「diy curling shoes」と検索をしたら結構創作意欲に駆られました。
ベースはコート系の底がフラットなスニーカーがベスト、Craig's Curling Shoesで取り扱っている専用のキット(DIY Curling Shoes Kit)を北米から自分で取り寄せるのは為替の変動やクレジットカードの利用などの懸念材料があったので、カーリングシューズの底がマジックテープ式の取り替えられるタイプに使われているディスクというものを国内販売店で両足分揃えました。
滑らない方のつま先部分は投げる動作で擦るので補強を行うのがメジャーで、塗るタイプの補強剤(塗りPやシューグー)を使いコーティング。マジックテープのループ面(メス)を切って靴底に貼ってディスクを付けて一応のシューズの完成に漕ぎ着けました。
出来て満足!ではなく、実際でプレーしていく中で補強や補修が必要な部分が出てくるので、そこを修正しながら自作シューズは何とかなりました。
自作カーリングシューズのマスター(師匠)
自作カーリングシューズ
世界との距離
どうぎんカーリングスタジアムは私のようなカーリング初心者だけでなく、世界を目指して戦っているコンサドーレやフォルティウス、北海道銀行や札幌国際大学などが練習を行っており、同じ時間帯になった時にはトッププレイヤーのフォームなど吸収できるところはないかとチラッと見たりしちゃいます。フォームの美しさだけでなく、ストーンが当たる音も段違いで、身近なところでトッププレイヤーの凄さを感じました。
何度も通ううちに当たり前のような感覚になってましたが、オリンピアンや日本を代表する選手と同じ空間でプレーするのは他の競技ではまず無いことで、その日はフルメンバーが揃わなくてもその状況で出来る事を練習で無駄なく積み上げている様子を目にしているので、大会があると同じ空間にいたチームを応援しがちです。
また、今年7月にコンサドーレカーリングチーム初めての体験会「Consadole Try Curling」がどうぎんカーリングスタジアムで開催され、カーリング体験と選手との交流がありました。体験会では若葉マークだけど一応経験者のカテゴリーに入れてもらい、私のグループは阿部晋也選手から指導を受ける機会がありました。手本のデリバリーフォームをあらゆる角度から見て、実際に投げた時にはいいところを褒めてもらうという非常に勉強になるひと時でした。
その後、他の経験者グループと試合形式のゲームを行ったのですが、チーム分けで一緒になったのが序盤に紹介したカーリングの原体験、長野五輪で顔を覆って悔しがっていた短髪の青年こと敦賀信人さん(今シーズンからコンサドーレのコーチに就任)でした。敦賀コーチはイベント当日の未明から明け方にかけてオホーツクエリアで漁業を行ってから、午後に札幌で行われたイベントに参加するという道民でもバグった感覚に陥る距離感。
敦賀コーチと一緒にスイープというブラシで氷を掃く動作を行ったのは言葉に表せないくらいの至福の時。長い距離をスイープしたのは久しぶりだと言っていた敦賀コーチの息が上がっていたのが約四半世紀の時の流れを感じました。
カーリングの試合を観戦
これまでしっかり試合をフルで見たことが無かった私ですが、8月に有観客で開催された北海道カーリングツアーの初戦、どうぎんカーリングクラシックを観戦。事前にフォルティウスの選手が観戦方法を動画で分かりやすく説明していたので、参考になりました。
この時カメラを持って行きましたが、競技中の邪魔にならないようフラッシュとAF補助光をオフにして静止画のみの撮影。撮影関係は主要プロレス団体のルールに近く、すんなり受け入れられました。
男子はコンサドーレ対TM軽井沢、女子はフォルティウス対韓国のParkを観戦。カーリングを始めたのに1試合フルで見るのは初めてという稀有な部類に入ると思う私ですが、約2時間の試合は1エンドごとの攻防だけでなく全体を通しての戦略、それをこなす選手たちの技術、遠近感や音など平面の画面では感じられなかったものを十二分に味わえました。
この大会での驚きは敦賀コーチがリードとして参加。少し前に一緒にスイープして息が上がってたのはブラフ?というくらいデリバリーとスイープが安定しているように見えました。
また、この大会で行われた車いすカーリングの試合にボランティアとしても参加。その時の模様はこちらの記事に詳しく書きました。
それから
各チームが久しぶりの海外遠征を行ったり、国内外の大会がYouTubeで公式配信を行なっていたりでチェックする機会が増え、作業用も兼ねつつ局面局面での作戦の立て方やフォームを見たり、国内外のカーリング場の様子もそれぞれ個性的で平面の画面からも拾える情報はたくさんある事に気が付きました。
この秋のコンサドーレカナダ合宿の中で先に紹介したマット・ハミルトン選手がいるTeam Shusterと対戦していたのもそれまで拾っていた情報の点と点が繋がった瞬間でもありました。
プレーも初心者向け教室の他に札幌カーリング協会が行っているセミナーに参加したり、事前のキャンセルで空いた枠があれば1シート1,500円/1時間で借りることができるので利用したりと最低1ヶ月に1回はプレーしようと心掛けてます。
部活とか長続きせず、気が付いたら帰宅部だった私が一つの競技に向き合うのは初めてです。
結構シニアの方もプレーされているので、彼らのように10年20年とは言わずもっと先もプレーできるように健康でいようと中長期的な目標を持つことが出来ました。
今後の懸念と期待
どうぎんカーリングスタジアムは5シートあり、午前10時から午後11時まで1時間単位で借りることが出来るので、1日あたり65枠あるからいつでも誰でも使えるのかと言えばそうでもありません。毎月1日から10日まで翌月の利用枠を抽選予約することが出来ますが、大会や企業・団体・学校の体験利用や地域合宿、トップチームの練習や協会で行っているリーグ戦などを掻い潜ってようやく抽選予約に割り当てられた枠は65枠/日とは程遠いです。平日の夜とかは100倍以上の倍率になったりします。
これまで何度か倍率が少ないところを狙って2時間分エントリーしましたが、全滅。ただ、利用の5日前まではキャンセル料がかからないため、人数が集まらなかったり諸般の理由でポツポツとキャンセルが出るので、逐一チェックして「ここだ!」というタイミングがあれば何とか借りれている状況です。中々、来月○日の×時から2時間とピンポイントで取るのは難しいです。
また、来月(2024年1月末)に行われる日本カーリング選手権後に屋内天井とレーンの改修工事で約9ヶ月間使えなくなるという問題に直面します。2023年11月から2024年3月までは札幌市東区の美香保体育館でカーリング一般開放が行われますが、特定の土曜日(毎週とは限らない)の午後6時30分から午後9時までという限られた枠の中でどのようにプレー時間を捻出するのかが私のような初心者カーラーだけでなく、道央圏のカーラーが直面する課題です。
とはいえ、始めて10ヶ月でここまで沼に引きずられるくらいカーリングには魅力が詰まっています。もしかしたらシューズとブラシを持って旅行がてら道内のカーリング場に行くかもしれません(笑)
また、今年のさっぽろ雪まつりではテレビ塔の下でカーリング体験のコーナーが設けられ、希望者には別日にどうぎんカーリングスタジアムで体験ができるという試みも行われており、観光資源としても可能性を秘めているのではないのかと感じております。一般利用の抽選で大変な状況なのですぐには難しいのは承知してますが、修学旅行や社員旅行のコースに組み込まれたり、国内外の旅行者向けのアクティビティとして利用が出来れば、競技の認知や普及だけでなく地域の魅力も伝えられると思ってます。なんたって防寒具さえ持っていれば、真夏でもウインタースポーツに触れられるんですから。
そういった意味でも築50年以上経った月寒体育館や美香保体育館のこれからを考える上で札幌市アイスリンク基本構想(案)には期待しているところではあります。実際に意見も送りました。
とりあえず私は先日初心者も参加できる大会に出て、4エンドゲームを1日3試合セカンドのポジションでやりましたが、リードのストーンをスイープして息切れして自分の番になるまで息が整えられずにハアハアしながらストーンを投げていたので、柔軟や筋力のほかに持久力を鍛えることを2024年下半期までの目標として1個加わりました。約15年ぶりになったうつ病(抑うつ状態)でも、無理をせず出来る事を見つけられて何とか2023年を終えることが出来そうです。
コンサドーレ関連の今後の予定
2023年12月8日〜19日(フィンランド・ロホヤ)
世界ジュニアBカーリング選手権大会2023
大内遥斗選手が男子日本代表として参加
2024年1月27日〜2月4日(札幌市・どうぎんカーリングスタジアム)
第41回日本カーリング選手権大会
強化委員会推薦チームとしてコンサドーレが選出
来年のさっぽろ雪まつりの市民雪像、CVS仲間で抽選に申し込み何とか当選しました。
日本選手権最終日と雪まつりの開幕が重なるので、もしかしたらドーレくんがカーリングをしている雪像かもしれません。
大変長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。