指輪物語
寝てた。多分1時間くらい。起きたらスマホの充電は21%だった。Twitterを開いた後に見ると20%になってた。何か書かなきゃと思った。
そういうわけで机の上に積み重なっていた本やら大学のレジュメやらを全部文字通り放り投げて、ペンとノートを用意した。
何か書かなきゃという気持ちがずっとある。でも何も書けない。少し前に書き始めた小説はどん詰まりだ。続きが書けなくなった。
ウスノロだ。何一つ出来ない、のでむしゃくしゃしているから今こうしてよく分からない文章を書いている。書いている途中で良さげな題材を思いついたのでそれについて書く。
1カ月ほど前か、指輪を無くした。梅田にあるセレクトショップで買った、ネイティブアメリカンのデザインをモチーフにした、シルバーの指輪だ。とても気に入っていた。ほぼ毎日つけていた、のを無くした。多分バイト中に外してポケットに入れていたときに無くしたんだと思う。
その指輪は去年の3月に買った。一目ぼれして、5,000円払って買った。その日の晩に電話で好きだった人に振られた。そのときもこの指輪をつけていた。電話を切ったあと、僕の太くて短い人差し指とその指輪が、とてもミスマッチに思えてきた。
そして捨てられないまま1年近く一緒に過ごしてきた。
話は少し変わり、先日引っ越しのために実家の本棚を整理していたら、「TECHNO definitive」という本が出てきた。古今東西のテクノの名盤を治めたディスコグラフィだ。
この本も、上に書いた人と関係がある。
当時何とかしてその人と仲良くなりたかった僕は、彼女も音楽が好きだと聞いていたので、そこから糸口を見いだそうとしていた。
そのときに「テクノが好き」だと知ったのだ。そしてショッピングモールの本屋に駆け込み、この本を買った。
役には立たなかった。多分彼女の言っている「テクノ」は、こういう本に載っているものではなかったんだと思う。
思い出した。その人とボードゲームをしていた時、ふと彼女が呟いたのだった。「小説よりも詩が好き」だと。それで僕は去年1年間、ずっと詩を書き続けていた。
なんて滑稽なんだろう。我ながらとてもいじらしく、気持ち悪い。
今や僕は「TECHNO definitive」の存在すら忘れ、詩ではなく小説を書くようになり、そして指輪は無くした。
神さまの存在を信じているつもりはないが、「そろぼち忘れな」というお達しか。
はい、もう忘れます。酔ってその人のことについて話すのもやめます。
でもどこか期待しています。
僕があの人のことを意識しなくなり、やがて本当に忘れたとき、それでも僕の中にあの人との記憶がどこかに残っていたら、僕は本当にあの人に恋していたと胸張って言えますから。
それでも何故か、ちょっとまた、詩を書きたくなってきました。