タバコと口紅(第七話)
第七話家に上がると、男の母親は温かいコーヒーを私たちに出してくれた。
全員が椅子に座ってもすぐに会話は始まらなかった。
沈黙の中、時計の針の音だけが部屋に響く。時間は確かに進んでいる。けれど、男の時計だけは当時に遡っているのだろう。
「あ、私ちょっと外散歩してきます」
「いや、俺が」
男は私の腕を掴み、席を立った。
男との過去にあんなことがあって、それに見知らぬ女が目の前に一緒にいる。
本来なら門前払いも当然な状況なのに目の前にコーヒーがあるのは、私がこの世界を望んでしま