上機嫌の効用について、このわたしが語ります
大人になると、不思議なものでしかめっ面をしやすくなる。
たいしたことを考えていなくても、とにかく顔をしかめる。
たいしたことを考えているかのように難しい顔をする。
考えていることは、たいてい、
「はー、この仕事つまんねー、はよ帰りた産業(株)」
とか、
誰かを意識して、
「やべ、真剣にやってるフリしよ」
とかである。
たぶん。わからんよ。わからんけどそんな気がする。
いやさ、本当に真剣にやってしかめっ面になっている人もいるでしょうよ。そんなところ突っ込むなよ。
あとは、そうだな、威厳をもたせようとしかめっ面を維持しなくてはいけなくなってしまい、24時間のうち12時間ぐらいは、しかめっ面になっている人もいるよね。
兎角、大人は真剣なフリをするんだ。
貴殿たちも大概そうだろ。な?
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じゃあひるがえって、わたしはどうかというとしかめっ面をしていたんだよ。昔はな。
今思うと、皮算用職人と化したわたしは、ほぼ意味のない3年後とか5年後の事業に関するExcelを叩いて、訳のわからんないようについて考えていた。すると、飛躍的に伸びるその数字に妙な高揚感を得たり、悲観シーンを考えて、次第にしかめっ面になっていたんだ。
そうすると、そのときの代表がいい人だから、上機嫌で、「平っさん、しかめっ面になっているよ」とかやさしく教えてくれるんだけど、わたしはわたしで真剣にやっているつもりなので、半ばうるせーなーてめーのせーだろとか思いながら、「真剣なので」みたいにツンツン返答する。
だいたい、仕事は自分事でなくやらされ感覚になった瞬間にパフォーマンスが著しく下がる。
当時は、未来を切り拓くためのプロトタイプを作れず、心の中で、
「真剣なので」「真剣なので」「真剣なので」
とひたすら言い訳をしていた気がする。
真剣とかはどうでもいいんだ。
このとき、わたしもバカではないので、なぜしかめっ面になってはいけないかについてはわかっていた。
上司がしかめっ面だと、部下やまわりのメンバーも話しかけづらいし、相談もできなくなるし、どこかピリピリしてしまう。
上司軍に所属している人たちには、メンバーが報連相できない云々を指摘する人もいるが、あれは、自分がどれだけ話しやすい雰囲気をつくっていて、信頼される状況をつくっているかなんだ。
指示しないで、標準兵を含めて、利益を出すために最短の道を勝手に歩ませるのが最高の将だ。そんなんほぼ無理だけど。
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時を経て。
時は経たよ。
今、わたしはスーパーニコニコ野郎だ。
PCのモニターをみて始終ニコニコしている。はたからみると、こいつヤバいかもと思うアレだ。
でも、楽しい。
無駄なことを考えないで目の前のことに集中している。
あ、うそをつかないように補足しておく。
今は、ニコニコ野郎でいようと努力している。
むかしは人づきあいが苦手なのに、成果のためにクソめんどくさい人脈を増やすことに努力していた。
今はそのあたりはどうでもいい。
今は、努力しているのは、
できるだけ『にこにこ、ぷん』でいることだ。
でね、この文章はここまでで10分かかって、そろそろ結論にもっていかないと仕事ができないのでアレなんだけど、そうそう、『上機嫌の効用についてわたしが語ります』という話だったね。
ついさっきね、
カフェでおかあさんといっしょの2歳くらいの子供ちゃん(たぶん女の子だ)がいたのだ。この子供ちゃんは何が不満なのかわからんのだけど、めちゃくちゃ不機嫌だったんだ。おかあさんはメニューをみながらも、周りを気にしつつ、困ったオーラを発している。
やっぱり子が騒いだら、気になるというのはあるんだろう。世の中には、子供が嫌いな人もいて、自分が小さいころどれだけ騒いでウンコとかおしっこをもらしてゲロをはいて世間を騒がしたか忘れてしまっていたりする。
で、
わたしが通りがかりに、ニコニコ野郎で微笑みかけたら、このめちゃんこ不機嫌な子供ちゃんと眼があった。すると、一瞬、この子は真顔になったあと、そこからほぐれて、笑顔になって、小猿のようにキャッキャしはじめたんだ。
無邪気とはこのことだ。
すると、おやまあ、と、きづいたおかあさんが、子供ちゃんをみ、その目線の先にいるニコニコを見る。
で、目が合って、おかあさんは、ほっとした笑顔を浮かべて、すこしお辞儀をする。わたしもニコニコでお辞儀をする。
退店するときに、おかあさんが、「どうもありがとうございました」といい、わたしは「ふははははは」と、外に出る。
ああ、そうか。
笑顔は伝染するんだな。そして和や秩序をつくるんや。
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むわっ。
外は、熱帯を超えた都会の空気で、これが全身に気怠くまとわりつきながらも、空が妙に青く感じられ、わたしは再び意識してニコニコして、先を急ぐ。
平田 剛士(@tsuyoshi_hirata)