見出し画像

絵を贈る、絵をもらう

 絵をいただく。最近になって、半年前にした結婚のお祝いをもらうのは、クリスマスも兼ねてのことだろうか。届いた箱には、メッセージカードとかわいらしい絵が入っていた。玄関に飾った。
 
 差出人になっている会社を調べてみると、日常生活にアート作品を添えるのを生業としていた。ハッピービジョン。知らない会社だ。ホームページを見てみると、愛らしいイラストが、それほど高いとはいえない値段で売られている。

「風水」とか言われると一気にあやしい感じだけど、普通に可愛い絵。 

 Sサイズなら27×22センチで5,980円。Mサイズなら、39.5×30.5センチで10,800円。いまは年末感謝祭ということで、送料が無料らしい。絵を買ったことのない自分にとっては「こういうサイトからこうやって買うものなんだ……」という気持ちになる。
 
 もっとも、お金持ちなら画廊に行って「これがあの作家の最新作ですか。600万円?買います」とかするのかもしれない。あるいは通販でも、他のサイトで「絵を贈る」で調べてみたら「10万円からご用意しております」と書いてあった。そっかあ。
 
 好きな現代作家の絵は、一点ものだからというのもあるけど、最低価格が4万円。ものすごく高いわけではないけれど、ちょっと気合のいる金額ではある。また、好きな作家は自分が好きなだけだ。万人受けするわけではないから、贈り物にするのはためらいがある。
 
 玄関に飾った絵は、気負いのないかわいらしさで、正面に置いた姿見を見るたび、背後に写り込む。なかなかいいな、と思う。高いものでなくても、見てふわっとした気持ちになる瞬間がある、それだけで十分な絵。
 
 秋田でライフイベントの祝い絵といえば、昔は池田修三だったらしい。子どもを描いている木版画で、子どもが産まれたとかお祝い事があったと言っては、皆この人に絵を描いてもらった。そんな話を地元で聞いた。

https://shuzoikeda.jp/hometown/

 
 絵を贈る文化、意外と身近にあったんだな……と思う。値段がどれくらいだったのか、詳しいことは知らない。ヤフーオークションでの「池田修三の平均価格」は18,509円と出てきた。当時の物価を思えば、もっと安く依頼できたのだろう。
 
 よくよく考えてみると学生時代にも、そのもっと規模の小さいことはあった。高校のとき誕生日を迎えて、ふとそれを部活の先輩に言うと、彼女は「言ってくれれば!」と両手で顔を覆った。「言ってくれれば、お祝いの絵描いたのに!」
 
 部活は美術部だった。ただだからといって「先輩にバースデーイラストをねだる」という発想はなくて、ああそういう考えもあったのか、とこのとき知った。それで友だちの誕生日には、ちょっとしたイラストを描いて贈るようになった。
 
 絵を贈る。そういう文化が、まったく近くになかったわけじゃないんだ。久しく忘れていただけで。
 
 そろそろ年賀状の季節になる。送ってくれる人の中には、毎年、自分の力作ではがき一面を埋め尽くす人もいる。プロの技ではないのは見て取れるけど、いつも「今年は闘牛かあ」とか「琵琶のおばけかな……?」とか思いながら、楽しく眺める。
 
 今年は通っていた雑貨屋も閉店してしまい、おもしろい年賀はがきを買う場所がない。通販でどこからか買うことも考えたが、もうそろそろ出さないと年始に届かないのだ。仕方ない、自分で描くか……。
 
 来年は辰年であり、龍の絵は難易度が高い。調べて描くのもいいけど、どうにか「ミカンと鏡餅」くらいで許してもらえないかなと思っている(誰に?)。ドイツ語を一緒に勉強した仲間には「Frohes neues Jahr!(あけましておめでとう)」でいこう。
 
 そういえば最近旦那さんが見ている「葬送のフリーレン」には「ヒンメル」というキャラクターが出てくる。Himmel、ドイツ語で空や天国の意味。アニメを一緒に見せてもらったら、空や自然の描写がとてもきれいだった。



本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。