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新規事業アイデアの規模感 ~新規事業伴走メンタリングの現場⑦~

メルセネール・大道寺です。
今回は新規事業開発における、「市場規模」がテーマです。その中でも初期アイデアフェーズと算定すべきレベル感に関して扱います。


ケース Saasのアイデア創出と売上

自社のテクノロジーを基点にしつつ、ある業務向けに分析やその後の自動化を進めるソフトウェア型のビジネスを検討していた際のお話です。フェーズとしては初期の段階で、ビジネスアイデアを複数出しつつ、本格的な検討に向けて前に進めるアイデアを絞り込んでいる段階でした。


私:
「複数のアイデアが出てきましたが、これ以上はアイデアレベルで議論しても中身が詰まっていかないので、そろそろ絞り込んで選ぶ必要があります。」

検討チーム:
「絞り込むにあたってはどのようなアプローチを採ると良いでしょうか?」

私:
「どんなアイデアも同じ方法で絞り込み・評価すればいいということはありません。今回もいくつか評価軸を用意した方がよいですが、そのうちの1津として”市場の規模感”は一定評価した方がよいでしょう。」

検討チーム:
「それはTAMとかSAMということでしょうか?」

私:
「そうですね、そのような視点で整理して頂くのも1つの手ですね!(お、TAMやSAMの概念ご存知なんだな。)」

・・・1週間後・・・

検討チーム:
「数値の算定をしてみました。」
「今回のアイデアが想定しているサービスだと1社200万円/年くらいが妥当かと思いまして、TAMが対象企業全部の〇万社で掛けること〇〇億円、SAMが△△業界のみで〇〇億円、SOMは現在の自社がリーチできそうな業種で〇〇億円です。」



新規事業を前に進めていくにあたって、説明責任や評価など様々な場面で”数値”は重要なテーマになりますが、その試算の方法やレベル感を押さえておくことが非常に重要になります。そして、この”試算”や”レベル感”というのが意外に難しいのです。実はコンサルティングファームに所属していても、新規事業の試算は若手コンサルには任せられないと思うことがよくある難しいテーマでもあります。

新規事業の規模感をどう押さえていくか?

初心者がハマる「TAM・SAM・SOM問題」

数値感・規模感を図り、説明・評価をするために、最近では「TAM・SAM・SOM」という観点で整理するということが浸透してきています。

  • TAMとは”Total Addressable Market”の略
    =新規事業が獲得し得る顧客/市場の最大の大きさ・需要の大きさ

  • SAMとは”Serviceable Available Market”の略
    =新規事業が現実的に顧客としてリーチできるターゲット層

  • SOMとは”Serviceable Obtainable Market”の略
    =自社の事業として実際にアプローチできる顧客の市場規模

という定義になります。
よく取り上げられる事例がAirbnbですね。(5スライド目)


この外観だけを見て、「自社にもこの考え方、説明、評価視点として取り込もう」となると、ハマってしまいます。

このTAM・SAM・SOMという考え方や整理は重要で有効なのですが、活用の仕方を押さえておかないと大変なことになります。このAirbnbのケースは既にサービスローンチがなされ、外部向けにプレゼンされている状況でのTAM・SAM・SOMなんですね。

アイデア段階でロジックや仮定を置き、一生懸命作りこんでTAM・SAM・SOMの3つを計算される方、組織が非常に多いのですが、ムダも多く、精度も出ないので、完全に非効率な活動になってしまいます。なんとなく「新規事業ぽい」感じになるのですが、全くおススメできません。

新規事業の初期アイデアと規模感

新規事業の基本的な進め方は、検討のスタート地点となるアイデアを持ち、そこから段階的に煮詰めていくものになります。

まずはアイデアをたくさん出すコトが有効なのですが、たくさん出せるようになると絞り込みが必要になります。そこで、アイデア段階で”市場規模感”を見ておこうということになります。

この初期アイデア段階で見ておくべきは、”TAM”だけで十分です。

先の例のケースで、「自社のサービスが200万円」という仮定を置いていましたが、初期アイデア段階ではこの金額感は全く未知数なのに、その金額を最大の試算ポイントにしてしまっています。この金額感は市場や顧客が決めるものですから、先に置いてしまう時点で意味の無い規模試算になっていまっています。ビジネスモデルや事業計画に具体的に落としていくフェーズになると、顧客の反応を含めて値付けが見えてきているはずで、そこでは予定価格を前提としたSOMを試算することは可能ですが、アイデアをこねこねしている段階で採る手法ではありません。

初期アイデア段階では、見ている市場規模のレベル感を大きくずらさないようにすることが重要です。

これから検討を進めようとしている市場が、最大「100億円市場なのか」、「1000億円市場なのか」、「1兆円市場なのか」・・・、という規模感を外さないということです。

逆に言えば、この市場は「800億円か、1000億円か、どちらなのか?」という議論に意味はありません。この手の議論をしてしまっている組織はすぐにやめましょう。

では、どうTAMを探っていくのかということになりますが、基本的には「トップダウンアプローチ」をおススメします。トップダウンアプローチというのは大きなところから、ロジックを設定して割り込んでいくという進め方になります。

例えば中年男性をターゲットとする健康サービスであれば、

  1. 「日本の総人口」

  2. ⇒1.×「中年男性比率」

  3. ⇒2.×「中年男性の可処分所得」

  4. ⇒3.×「可処分所得の内で健康のために充てられる比率」

みたいなイメージですね。
一番最初の1.において信憑性が非常に高いデータを持ってくることが重要です。あとはロジックと引用データを持って設計します。

※意外に多い幻想

あと、追加的にですが、自分たちが知りたいと思っている市場規模がピンポイントでどこかのデータベースにあるのではないか?、調査会社やコンサルティングファームが持っているのではないか?、という幻想をお持ちの方が多いですが、そんなことはありません。既にあるとすれば、「非常に多く求められかつ汎用的な市場か」、「過去に他の誰かが発注した結果」でしょう。

探しているだけで時間を浪費します。多くのメンタリングにを通じて分かっているコトですが、新規事業に慣れている人はこの”探す”というアクションに時間を使うことはありません。

  • トップダウンの数値だけ持ってきて、あとは割り込みで精度を上げる

  • 可能な限り試算の時間を抑える

ということが大事です。
まずは初期アイデアではTAMをクイックに出すということを意識して頂くと良いかと思います。


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