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”解決策”とは何か?(ソリューションビジネスを考える③)

メルセネール・大道寺です。
前回はソリューションビジネスを考え始めるにあたって、最大のスタート地点となる”顧客課題”を取り上げました。今回は対となる”解決策”に関して取り上げようと思います。最初は概論ぽくなってしまうので、何回かに分けて掘っていこうと思います。



”解決策”をどう考えていくのか?

具体ソリューションよりもまずは”提供価値”

前回の顧客課題の理解で5つのポイントを整理しました。それらをどうにかして解決していくということになります。

この顧客課題で整理した項目の内、4つ目の真因に繋がるように解決策を考えていくわけですが、ここで一足飛びに具体的なソリューションへ行くのは危険です。

例えばですが、シンプルなケースで「業務の逼迫」という悩みがあり、その真因を分析していくといくつかのテーマが見えてきたとします。こういった分析をした後に、いきなり具体的な解決策を考えてしまっていないでしょうか?

真因からいきなり解決策に飛ぶイメージ

昨今ですとITを使ったソリューションということで、IoT使って何かできないか・・・?、など、すぐに飛びついてしまいがちですが、この飛びつきがソリューションビジネスの失敗要因になります。後ほど述べますが、これは元々のソリューションビジネスの定義から逸脱した検討プロセスになってしまっています。

すなわち「自分たちが使いたいものをあてはめよう」という思考プロセスです。顧客課題基点ではなく、自社の使いたいもの基点に陥っていますよね。

いきなり解決策を考えるのではなく、その手前に出てくる”提供価値”をじっくり考えることが重要です。

では、”提供価値”とは何なのでしょうか?

このワードが日本人にはスッと落ちにくいので難しいのですが、”解決する方向性”や”要素”くらいに捉えてみると分かりよいかと思います。例えば先のケースであれば、「外部とのやり取りが紙ベース」という真因に対して、

  • 紙ではなくて最初から電子データで作成する

  • 紙を(OCR等で)データ化してから処理する

  • IT苦手な人でも使えるようにする(⇔苦手だから紙がよい)

など、いくつか解決の方向性が考えられます。この方向性を多面的に出すということが非常に大事です。

提供価値を多面的に出すイメージ

”解決策”は複数の提供価値の組み合わせから導かれるものであるべきです。いきなり解決策になってしまっているような議論やプロセスになっていないか、今一度振り返ってみてください。

『なんちゃってソリューション』問題

”ソリューション”がねじ曲がる瞬間

繰り返しになるのですが、『ソリューションビジネス』=『顧客の”課題”を”解決”するビジネス』ということは多くの方にご納得・ご理解いただいていると思います。

実際に検討を始める段では、まず「最初にソリューションビジネスのアイデアを持って、そこを基点に進めていこう!」となります。そこでワークショップをしたり、アイデアブレストを行うことが多く、その場の同席やファシリテーションを務めさせて頂くことも多いです。

しかし、いざ自分たちのソリューションビジネスを考え始めると、ソリューションビジネスの定義は分かっているにもかかわらず、自社の技術が当てはまるところから課題を探そうとする”自社基点”の思考プロセスとなり、”ソリューション”の定義がねじ曲がっていきます。

これを私は「なんちゃってソリューション問題」と呼んでいます。自社の強い・使ってみたいテクノロジーがあり、それで実現できることが当てはまる”課題”を探しに行ってしまうことが非常に多いという印象です。モノづくり系の企業さんに特に多い現象かと思います。


技術基点で考える際の注意点

ここで私が言いたいのは、自分たちの強みである技術・テクノロジーを無視して考えましょう、ということではありません。むしろ強みをきっかけにアイデア着想を行った方が効率的だと思っているくらいです。

『なんちゃってソリューション思考』

重要な視点・理解が1つありまして、自社技術・テクノロジーから考えられるのは「機能」と「機能から実現できる個別の価値」までということです。この限界を理解できているかどうかで、検討の差が出ます。

こちらのイメージをご覧ください。

技術基点でアイデアを考える際の注意点

右側から中央にかけて顧客~課題~真因の「顧客課題」の項目を並べています。この真因を解決するように構想されるのが目指すべきソリューションなのであり、左側のようなプロダクト~機能~個別価値~統合的な価値で構成されます。

”真因”と”価値”を一対一の関係で突合するのではなく、まとめて解決していくのソリューションが目指すの1つのカタチと言えます。

そこには”個別の価値”をまとめあげた”統合的な価値”が存在するのですが、自社技術からだけで、この統合的な価値を導くことは困難なのです。

あくまで、技術が実現できそうな機能があり、その機能が提供できる個別の価値までしか考えることはできません。自社技術のから導かれる個別価値を、さらに統合的な価値にまとめてしまって考えようとすると、もはや顧客課題を置き去りにした自社よがりの”なんちゃってソリューション”となってしまいます。

自社技術が実現できる個別の価値まで出してから、効果的にアイデアを探索する方法はありまして、これは別の機会でご紹介したいと思います。

繰り返しになりますが、

「自社の強い/使いたい技術がある」

⇒「この技術が実現できる機能と価値を構想する」

⇒「この価値が当てはまりそうな課題を探す」

⇒「結果として”切実ではない”課題を対象にしてしまう」

⇒「市場に出しても受け容れてもらえない」

という流れを避けることが大事です。特に「この技術/テクノロジーを使って何か考えよ!」というお題を持たれている方は陥りがちな流れですので、ハマってしまわないよう気を付けて下さい。


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