『ビジネスモデル』の認識ズレ問題 ~新規事業伴走メンタリングの現場⑤~
メルセネール・大道寺です。
今回は新規事業検討で必ず検討する「ビジネスモデル」がテーマです。今回はその中でも、「モデルに対する内部での認識ズレ問題」を取り上げます。
ケース 地方創生系サービスのビジネスモデル
地方創生関連の新規事業を検討していた時の話です。
半年以上にわたりメンタリングでのサポートをさせて頂きました。顧客検討・検証、サービス検討・検証を行い、内部の幹部層向けにプレゼンテーションを行い、その後の情報共有の際の会話です。
私:
「幹部の方々からはどのようなコメントがありましたか?」
検討チーム:
「『確かに地方の商店街などの民間事業者や自治体にとってはPainとして認識されているコトなのかもしれないね』ということで、着目したテーマに関してはご理解いただきました。」
私:
「ふむふむ・・・」
検討チーム:
「一方で、『ビジネスモデルが見えない。モデルが見えなければ判断しようも無い』ということでした。なので、ビジネスモデルをこれからは検討することにします」
私:
「・・・そうですか。」
検討チーム:
「まずはプロダクトを一緒に具体化してくれる外部パートナーを探すところから着手します。」
私:
「ちょっと待ってください。皆さんは『ビジネスモデル』とは何だと考えていますか?また、幹部の皆さんは『ビジネスモデル』のどの点が不足していると仰ってましたか?」
検討チーム:
「・・・うーん、確かに説明できないです。。。」
この『ビジネスモデル』というワード、便利なようでかなりやっかいなテーマです。人によって何を指しているのかが異なることが非常に多いですね。ちなみに”ビジネスモデル”というワードでいろいろ検索してみても、似たようで細かいところは異なる説明がされており、絶対的な定義が無いということがその一因です。
『ビジネスモデル』共通化されない問題
ビジネスモデルという言葉
『ビジネスモデル』という概念は、経営学者たちが飛躍的な成長を遂げている企業を分析する中で、「この企業のビジネスモデルがスゴイ」という説明をするようになったところから始まります。『Japan as Number One』の時代にアメリカの学者がこぞって日本企業を分析した際に顕著でした。
共通の分析項目があるわけでは無かいのですが、どのようにビジネス上の工夫を凝らし、収益を上げ成長していったのかということは共通的に語られています。このような背景を踏まえると、大枠としては『儲けて継続的に成長する仕組み』と理解するのが良いかと思います。
『モデル』が何を指すか確認せよ
逆に言えば『儲けて継続的に成長する仕組み』以上の共通的な定義は存在していないということになります。そこで重要なのは、『ビジネスモデル』というワードが、お互いに何を指しているのか?を確認しておくことです。
以下、よくあるパターンです。
「ビジネスモデル」=「お金の流れ」
このパターンの場合は、図で示すことで解決しやすいです。どの事業者・関係者間でどのようにお金とモノ・サービスがやり取りされているのかを明らかにすれば問題なしです。
「ビジネスモデル」=「お金を払ってくれる根拠・ロジック」
このパターンは、「なぜこの自社のサービス・モノにお金を払ってもらえるのか分からない」と感じている人が多いです。「このサービスは時期尚早である」、「自分は欲しいと思えないが本当に需要があるのか?」など、顧客の需要と自社の価値のFitを信じられていない状況です。ここは『実際に顧客の生の声を聞いて検討してきた現場』と、『報告を受けながら判断する幹部』の間で発生しがちです。生の声に触れていない人が信じないというケースは往々にしてあります。この際の処方箋は、定量的かつロジックとファクトで証明する、実際に生の声を聞かせる(メールを見せたり、目の前に顧客候補を連れてくるなど)が有効です。
「ビジネスモデル」=「収益化とその前提にある各機能の実現性」
顧客からお金を頂く、仕入先等に支払う、といったお金の流れだけではなく、個別の機能の視点で本当に実現するのか確認したいパターンです。機能というのは具体的には「顧客開発・営業」、「運用オペレーション」、「ヒトを始めとするリソース」など、ビジネスを成立させるにあたって必要な事項です。個人的には「ビジネスモデル」を考えるというのであれば単にお金の発生や流れではなく、実際にビジネスを成立させるための枠組みまで考えるべきだと思います。ビジネスモデルキャンバスというフレームワークがありますが、まずはこの視点をベースに検討・議論するというのは1つの手段だと思います。
上記3つはクライアント内部のお話をお伺いしていて、よくあるパターンです。
大事なことは、
「ビジネスモデルが甘いぞ」
⇒「はい、考え直します・・・」
ではなく、
「ビジネスモデルが甘いぞ」
⇒「ビジネスモデルとは何を指されていますか?」
⇒「具体的に何が足りていないでしょうか?」
という対話をすることです。知ったかぶって持ち帰るということは組織にとっても自分にとっても無駄な時間ですのでやめましょう。
共通言語を持つ組織は強い
「ビジネスモデルの観点から十分な検討ができてない」という指摘を受けた際に、どの視点で何を検討すべきか?の枠組みが共通化されている組織は強いと思います。
上記に示したビジネスモデルキャンバスを活用するというのも1つですし、ピクト図のようなシンプルな枠組みでもいいと思います。新規事業は検討速度を高めるとこが非常に重要ですので、共通のフレームワークや言語を持って議論・検討できるとよいですね。
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