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印刷物の色の基準作り。メルカリオリジナルのカラーチャート
こんにちは。グラフィックデザイナーのTakuroです。
今年クリエイティブチームでは「Mercari Brand Color Chart Ver.1.0」を作りました。これはメルカリのブランドカラーであるmercari Redとmercari Blueの色見本帳です。
![](https://assets.st-note.com/img/1672276267779-I73j12cWXA.jpg?width=1200)
表紙にVer.1.0とあるように、まだこれは最初のバージョン。これからも改訂や更新を重ねていく予定です。この記事では「Mercari Brand Color Chart Ver.1.0」の紹介に加え、制作の背景やプロセスなどもお伝えできればと思います。
カラーチャートとは?
まずはじめに「カラーチャート」とは、印刷物の特色指定をするときなどに使用する色見本帳のことをいいます。
例えば世界共通のカラーチャートとして使われているPANTONEがあります。下にみなさんがよく使っているであろうサービスのロゴに使われている「赤」を並べてみました。
![](https://assets.st-note.com/img/1672276323703-NCLnaBRrqM.png?width=1200)
同じ赤でもそれぞれPANTONEの色指定があって、こうして並べてみると受ける印象も結構違うんだなと感じますよね。
このように色だけでそのブランドを想起させるため、企業は印刷物を作る際などに特色指定をすることでそのブランドらしい色をブレなく出せるようにしています。
「Mercari Brand Color Chart Ver.1.0」とは?
そこで制作したのがメルカリオリジナルの色見本帳(カラーチャート)です。
メルカリのブランドカラーであるmercari Redとmercari Blueはモニター表示のRGBから規定されているため、印刷において一般的に使われるPANTONEやDICの中に近い色はあっても完璧に合致するような色がありませんでした。
そのため、インクから調合することでメルカリらしい鮮やかな赤色と水色を表現し、印刷物におけるメルカリのブランドカラーの正解を導き出すというのが今回のゴールでした。
メルカリオリジナルのカラーチャートを作った理由
制作に至った背景として次のようなことがありました。
メルカリらしい「赤」の正解がわからない
メルカリグループのブランドガイドラインにもPANTONEやDICの指定はあるのですが、印刷されてみると納得のいく色にならないことが多く、社内のデザイナーの中で「どの赤がメルカリらしいのか」という認識がそれぞれ微妙に違っていました。
印刷会社さんとのやりとりの中でも「印刷物の赤が違うのでこうしてください」と文章で具体的に指示する必要があったりと、社内外で毎回コミュニケーションのコストがかかってしまう。まるで正解の無い伝言ゲームをしているような状況でした。
オフライン施策の増加
ここ数年でオフライン施策の増加に伴い、メルカリグループ全体で印刷物の制作案件が増えています。
実はこれまで色の判断はクリエイティブチームで担っていましたが、リモートワークの社員も多いため、関係者が一箇所に集まって確認するには毎回時間的コストもかかってしまい現実的ではありません。
そこでグループ各社の担当デザイナーが各自でこのカラーチャートを持つことで、「印刷会社に色見本としてメルカリカラーチャートを渡す→上がってきた印刷物の色を確認する」までが個々で完結できる状態を目指したかったのも大きな理由です。
どうやって作ったのか
カラーチャートを作る上で印刷会社さんの協力なくしては実現できません。日頃からお世話になっている印刷会社さんをパートナーに、おおよそ以下のような流れで制作を進めました。
キックオフ
見積もり
仕様決定
製作
色校正
表紙データ入稿
仕上げ
完成
アクリルや段ボールなどいろいろな素材ごとにカラーチャートを作りたかったのですが、それなりに費用もかかります。
見積もりと仕様検討の段階で予算面も鑑みて、今回は一番利用頻度が高い特色マットコート紙の青赤パターン、1種類のみを制作することに決めました。
色を決める難しさ
制作工程のなかで一番重要かつ時間を要したのは色校正。その時の様子をお話しします。
今回、デザイナーを中心にみんなが使えるカラーチャートを作り、グループ全体でブランドカラーの認識を合わせていくために、2人のデザイナー(メルペイのUTさんとソウゾウのBanriさん)に入っていただきました。
2人にはカラーチャートの色校正を初回から一緒に確認してもらい、互いにブランドカラーの認識がズレていないかすり合わせながら進行していきました。
【初回校正】
まず最初に印刷会社さんにお渡ししたのがこの紙です。
![](https://assets.st-note.com/img/1672276349260-JLLLv8Xd4m.jpg?width=1200)
これは以前作った印刷物の切れ端で、手元にあるものの中で一番ブランドカラーに近いのでこれを元にまずは色校正を出してもらいました。
そして出してもらったのが以下の2種類です。
![](https://assets.st-note.com/img/1672276387372-VJsmtUEqWP.png?width=1200)
01)渡した紙を見本に印刷工場の現場の方がカラーチップを選び、それを元に印刷したもの
02)渡した紙を数値化しその数値を元にインクを作り印刷したもの
これを確認した時パッと02がブランドカラーに近いと感じましたが、色面だけで見るとイメージが湧かず、これがメルカリらしい色だ!という確信が持てませんでした。
【2回目色校正】
初回はカラーチャートそのままの形状で出しましたが、2回目はメルカリのロゴマークを2色で出してもらいました。こうすることでロゴとしての見え方で確認できるので、判断がつきやすいと考えました。そして出してもらったのが下の3パターン。
![](https://assets.st-note.com/img/1672219065289-t8GWHmPLBT.jpg?width=1200)
「赤」は初回の02で決定し全部同じなのですが、ロゴの丸い部分の「水色」が実は左から右の順に濃くなっています。
初回の校正で、02の水色が若干弱く見えるという意見もあったので「明→中→濃」の3種類を出してもらいました。微妙な差ですが両端の2種を並べてみると結構印象が違い、ここで決定したものが後々の色の基準になるためどれにするかとても悩みました。
遠くから離れて見たり、色々な光源で並べて確認したり、写真に撮って確認してみたり… あーでもないこーでもないとメンバーで確認し、結局初回の02の水色に決定しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1672219114162-5UtNxOk4AT.jpg?width=1200)
この水色に決定した理由としては以下です。
画面上で見たロゴの印象に一番近い
前回の色校正で02のブルーは弱いという意見もあったが、ロゴとして見た時は違和感を感じなかった
「中」と「濃」は濃い印象ではあるが、マゼンタが混ざった印象だった
完成したカラーチャート
![](https://assets.st-note.com/img/1672276662555-cXGT7TVsii.jpg?width=1200)
表紙は “オンラインとオフラインのリンク” をコンセプトに、メルカリアプリのUIによく使われるシェイプをブランドカラーの2色で表現しました。さらに印刷物の手触り感を出したかったので、ざらっとしたテクスチャーとグラデーションを使ってデザインしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1672219159202-AQCfBZloO8.jpg?width=1200)
色校正時は基本的に赤青の2色を同時に確認することが多く、見本帳が色ごとに分かれていると使いづらいので、1セットで2色確認できるようにしました。また長く使用するものなので経年劣化に強いシルク印刷を採用しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1672219167880-Hn6h2fUBzY.jpg?width=1200)
カラーチャートの縁は糊留めしてあり1枚1枚はがして使えます。持ち運びやすさを重視し、ポケットやカードケースに収まりやすいサイズ(55mm×91mm)にしました。
穴を開けてリング留めにしたり、色ごとに冊を分けるなどの検討を重ねた結果、運用面を考慮してこのような仕様にしました。
このカラーチャートは、直近ではメルカードのTVCMやメルカリShopsのオフラインアイテムの制作現場で使われました!早速活用されているのはとても嬉しいことです。クリエイティブチームが毎回介在することなく、各社のデザイナーで判断できることで制作スピードも上がります。使用感のフィードバックをもらいながらこれからブラッシュアップしていきます。
おわりに
「Mercari Brand Color Chart Ver.1.0」はメルカリのブランドカラーを守り、ブランドを育てていくための取り組みの一歩です。
今回はマットコート紙のみ作りましたが、今後は段ボールやアクリルなど別素材においてのカラーチャートも作っていきたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
![](https://assets.st-note.com/img/1672219203233-Lx9o4DEqrG.png?width=1200)
写真撮影:chan-kuma
構成・編集:yan