「効果なし」では終わらせない。CRMに貢献するメルカリのデータアナリストの事例
こんにちは、Mercari Analytics Blog編集部です。
連載「メルカリのデータアナリストが向き合う11のテーマ」、今回はGrowth Analyticsチームの@Keさんによる「CRM分析編」の記事です。メルカリではお客さまとの関係性を作っていくCRM(Customer Relationship Management)にも積極的に取り組んでいます。データアナリストとしてCRMの分析に取り組んでいる@Keさんに聞いてみました。
実験と機械学習からアプローチするメルカリのCRM
――取り組みのミッションは何ですか?
新規登録後にメルカリが提供する各種の機能をご紹介することで、なるべく多くの新規アクション(購入、出品、メルペイ利用ほか)を行っていただき、利用回数・利用頻度の向上を図っていくことです。
また機械学習のチームとも連携して、膨大なデータから統計的モデルを作成し、離脱しそうなお客さまの識別や離脱を防ぐことなども実施しています。
現在は登録初月の新規アクション促進にフォーカスをしています。
――ご自身はどのような役割ですか?
データアナリストとして、以下のような内容で、課題の整理、分析、実験設計、実験評価、提案など一連のステップを行っています。
課題整理:ビジネスを成長させるため、課題をまず整理します。また、既存のデータで分析を行いながら、現状の理解を深めます
分析:優先度の高い課題に対して、解決方法に関する仮説を立てます。同時に、既存データから解決できるかどうかについて分析します
実験設計:分析で有効そうな解決方法を用いて、実験(A/Bテスト)を設計します。お客さまの反応、市場へのインパクトなどを予測しながら、プランニングします
実験評価・提案:上記の設計に基づいて実験を実施し、期待された効果があるかどうかについて検証します。有効であることが検証できれば、正式なキャンペーン、施策を提案します
――取り組みに参加したきっかけは何ですか?
メルカリに入社したとき、私が所属するGrowth Analyticsチームのメンバーでマーケティング領域(キャンペーン・新客獲得・戦略・CRM)の分析を分担していました。その中でも、当時CRMが人手が足りない状況であり、かつ前職の経験も活かせる部分があったので、CRMのテーマに取り組むことになりました。
効果がなくても、「どこで」を分析して次へつなげる
――チームのObjectiveは何ですか?
基本的には、ビジネス全体の成長に貢献することがObjectiveです。ただ、四半期ごとに注力テーマが変わります。例えば顧客獲得の改善や、既存顧客のパフォーマンス維持、出品の促進など四半期ごとに重点領域を変えて取り組んでいます。
大事なのは、「実行課題」と「検討課題」のアジェンダを両立させることだと考えています。つまり、四半期ごとの短期的なビジネス目標に貢献しながら、次の四半期以降の中長期的なビジネス目標貢献のために、分析や解像度上げに取り組んでいくことです。
――そのObjectiveに対して、チームとして今どのような課題に取り組んでいますか?
現在は、既存のお客さまの、特に出品の促進に課題があると考えています。そもそも出品という行為は、購買に比べると特殊な行動です。どういう意識・習慣をお客さまに身につけてもらえれば出品につながるのか理解し、出品を日常的に行っていただくことが大きな課題だと考えています。
――その課題に対して、どのように分析を進めていますか?
まずはお客さまの行動・習慣を分析し、改善案を仮説として立てます。既存データから行動履歴をベースとして仮説を検証し、効果・インパクトがありそうであれば、A/Bテストを設計します。
――その分析のアプローチ方法やプロセス等を用いた理由は何ですか?
課題に対して、解決方法を提案することを最終目的としているので、「効果がある」と正しく説明しないといけないと考えています。ただし改善インパクトの試算は、あくまでも理論値です。実際にお客さまが施策によって反応するかどうかはやってみないと分からないことが多いので、実際の効果を計算できるA/Bテストは不可欠なプロセスだと考えています。そのため、仮説構築 -> 試算 -> 実験というステップで取り組んでいます。
――分析における難しいポイントは何ですか?また、それをどのように乗り越えていますか?
A/Bテストの結果の解釈が難しいです。自分の仮説や改善効果を検証するのが目的ですが、やってみると効果が出ない場合もかなりあります。そこで、「効果がない」で終わるのではなく、「どこで効果があったのか/どこで効果薄かったのか/どこでマイナス効果があったのか」など細かく分析して結論をつけることで次につなげています。
――分析の中で意識しているポイントは何ですか?
分析結果は具体的な提案、意思決定とつながっていくので、やはり正確さをかなり意識します。間違えた結果をベースに設計した施策を実施した場合、マイナス影響も大きいので、チームメンバーのダブルチェックや他チームとの議論で分析結果の合理性の確認を行っています。
――取り組みに参加するやりがいは何ですか?
やはり分析結果に基づいて施策が実施され、それに応じてビジネス成果が改善された時はすごくやりがいを感じました。まだ、比較的短時間で効果検証できるので、そこもやりがいを感じます。
――実際に行った施策があれば、その概要と結果を教えてください
例えば、お客さまが今まで購入したことがない商品カテゴリの商品を購入することで、さらに利用率が向上する傾向がわかりました。その分析結果に基づいて未利用カテゴリ商品の購入を促進する施策を設計し、検証実験を実施しました。利用率向上の効果については、まだ検証中です。
――チームとして、今後どのような価値をお客さまに提供していきたいですか?
お客さまとのコミュニケーションを維持しつつ、利用体験を良くする環境を構築したいと考えています。例えば、売れそうな商品を積極的に提示することによって、何を出品すべきか分からないお客さまの心理的ハードルを克服したいと考えております。
マーケター・エンジニアと気軽に議論ができるオープンな環境
――チームには、どのような職種の人がいますか?
マーケター、機械学習エンジニアの方がメインです。フロントエンドエンジニアの方とも関わる機会があります。エンジニアの方からは分析用クエリについての相談や、仮説をどう可視化していくかという相談を受けたりすることが多いです。逆に私はA/Bテストの詳しい実装方法や、ログの落ち方などを聞いたりして、分析に必要な知識を教えてもらうことが多いです。
――コミュニケーションはどのように行っていますか?
コミュニケーションは頻繁に行っています。毎週の定例以外に、メンバー間の1on1も頻繁に行い、タスクの共有や疑問点の整理などを行っています。すごくオープンな環境なため、いつでも気軽に1on1やSlackで質問や議論できています。
お客さまのセグメントごとに課題の解決方法を見つけたい
――ご自身として、今後高めていきたいスキルや得たい経験はありますか?
施策を正しく評価できる知識、経験を蓄積したいと考えています。またお客さまを更に理解するために、行動分析周辺の知識も身につけたいです。領域に関しては、デジタルマーケティングに関連する知識を勉強したいです。
――データアナリストとして、今後取り組みたいテーマは何ですか?
「お客さまに利用してもらう」というテーマに関して多くの課題がある中で、有効な解決方法がまだない状態なので、さらにお客さまをセグメント化して、それぞれに有効な解決方法を見つけたいです。
――こんな人と一緒に働きたい、というイメージがあれば教えてください
分析・評価に関するハードスキルは一定必要だと思います。また、課題の整理や解決方法の提案、他チームとの連携で高いコミュニケーションスキルも必要とされるので、そういった方とぜひ一緒に働きたいです。
「メルカリのデータアナリストが向き合う11のテーマ」と連動したイベントも開催します!こちらからお申し込みください。
▼「メルカリのデータアナリストが向き合う11のテーマ」連載記事一覧