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女児向けアニメとエンパワメント

※この記事にはネタバレを含みます。各自ブラウザバックするなど自衛をよろしくお願いいたします。

はじめに

 私にとって女児アニメとはエンパワメント(=力をつける、自信を与えること)だ。小さな箱庭で変身あるいはパフォーマンスを通して己の殻を破り成長しようとする少女たち…鑑賞者である私はアニメを通して自分を奮い立たせる力を受け取り、この殺伐とした世界をなんとか生きている。女児向けアニメは生命のエネルギー、あるいは煌めきである。貧弱なオタクはこの生命力に触れないと生きていけない。

では実際に私に力を与えてくれたアニメ並びにキャラクターを3つ紹介する。

プリキュアとエンパワメント

まずは「プリキュアシリーズ
 プリキュアは2004年に放送が始まり、2023年に20周年を迎えた。少女がプリキュアに変身して敵と戦う。戦いを通して自分自身に向き合い、成長していく物語。プリキュアは誰だってなれる。猫だって、宇宙人だって、男の子だって、大人だって変身できる。最初のコンセプトは「女の子だって暴れたい!」だ。これは、女の子だからお淑やかに、とかスカートを履きなさいという枠に囚われず、女の子もアクションをしていいんだ!という意図があるそうだ。(『プリキュアコスチュームクロニクル』より)。それは「ふたりはプリキュア」のコスチュームデザインにも現れている。例えば、靴のサイズが少し大きく、関節が必ず隠れている。また、ポージングも内股ではなく大きく足を開いたり、クロスさせている。これは制作陣の「自分の足で凛々しく立つ」という想いが反映されている。女の子たちが自立し、地面を踏ん張ばれるように、と…。

ふたりはプリキュア

 そしてこのコスチュームを身に纏って、パワフルで可愛い髪型、アクセサリー、そしてプリキュアの大きな力を入れた時、少女たちは変身する。この「変身」こそが私をエンパワメントしてくれたのだ。プリキュアになる時には、「誰かを助けたい」「前進したい」「世の中をもっとより良くしたい」と溢れんばかりの希望の力と決意が込められている。戦う覚悟をした少女たちの思いに答えるように変身アイテムが召喚され、美しいデザインのコスチュームを着てプリキュアになる。変身をすることで普段の「私」とは違う「私」になれる。「女の子だから」と社会で虐げられても、大変な思いをしてもプリキュアになれば自信がついて戦える。変身は、卵の殻を破ることと同じだ。自分の心の壁を破壊し、成長する。少女から女性へ変わる過渡期に変身することは大きな意味を持ち、大人としての洗礼を受ける儀式でもあると捉えられる。

 20周年目の『ひろがるスカイ!プリキュア』は公式のプリキュアとして初の男の子プリキュアや成人プリキュアが誕生した。時代に適応しながらプリキュア自体も変身していることがわかる。とにかく前に進むための「変身」。最初は女の子だけだった「変身」が他の人たちにも広められ、あらゆる人がプリキュアに変身できるようになった。良し悪しは置いておいて、そんな誰でも受け入れてくれるプリキュアの寛大さや、時代への適応能力、柔軟性が20年も続く秘訣ではないかなと感じる。だから、「変身」を通して誰でもなりたい自分になれるように、輝けることを祈っている。



 おまけ:そもそもニチアサは私の中で理想の形そのものなのだ。私は「自分の貫きたい信念や真面目な道徳心」と、「もっと欲望のまま本能剥き出しに生きたい」という正反対の気持ちが同時に存在している。それ故に苦しむ事がよくある。その心の様子を映し出すように、ニチアサでは善として戦うヒーローと悪として戦う敵が激戦を繰り返している。だから、善と悪に折り合いをつけてお互いが納得できる形に持っていけるニチアサのヒーローたちにとても憧れる。それに加え、社会に疲れた大人を刺激して心を浄化してくれる。ニチアサ自体が私をエンパワメントしてくれるのだ。

 脱線するが、2023年10月から12月までNHK Eテレで『キボウノチカラ~オトナプリキュア’23』が放送された。かつて中学生だった初代~プリキュア5gogo!の女の子たちが敵のシャドウと戦い、自分たちの街を守ストーリーだ。昔とは違って大人のしがらみに囚われながらも仲間と支え合い、自分たちの足で道を切り開いてく姿に勇気をもらえた。あの時世代だった人にはとても突き刺さるだろう。私も初めて大人プリキュアを見た時は「これが未来で待ってるって奴か…」とカッコつけて時の流れの早さに傷ついたものだ()プリキュアが仕事で躓いて悩んだり、お酒を飲んだりしている描写を見ると自分たちの日常とグッと近づくことで解像度が高まり、リアリティを持ったプリキュアとして見れたことが何よりもよかった。個人的にはナツこまが大好きなので2人のイチャイチャを見たかったが…泣

 そんな感じで私にいつも力を与えてくれるのがプリキュアなのです。

キボウノチカラ~オトナプリキュア’23

アイカツ!の氷上スミレとエンパワメント

次に「アイカツ!
 もちろんアイカツ!1stシーズンは全人類みるべきだと思うのだが、私はアイカツ!3、4thシーズンもを見てもらいたい。登場人物のに私の推しの「氷上スミレ」という女の子が出てくる。スミレちゃんは、占いが大好きな中学2年生。アニメの中でも美人の部類に入り、その美貌で他のみんなにも一目置かれている子。紅茶を愛し、口数が少ないところが可愛い。

アイカツ!3rdシーズン
氷上スミレ


 最初は戦いを好まず、孤独だった少女が主人公の大空あかりと出会うことでグループで活動し始め、ユニットを組み、ルックスではなく自分の大好きな歌を歌うことで活躍する。まさにいばらの女王…。しかし、176話のスターライトクイーンカップでは最高ランクのフィーバーアピールに挑戦してステージ上で失敗してしまう。結果は8位となってしまい、悔しい思いで終わる…という物語なのだ。
 女児アニメで「ステージ上で失敗する」という現実を突きつける残酷さが凄いと思った。だってアイカツの1stシーズンはステージ上で失敗する場面はなかったから。スミレちゃんがあかりちゃんとひなきちゃんとは異なってクイーンになること=1位になることがが目的となってしまっているところが失敗の原因だったりする。他の子は、人の幸せを願ったり、他の人のためにパフォーマンスをする、と考えていた。しかし、歌一つで道を切り開いてきたスミレちゃんは周囲に対する感謝の気持ちを忘れて自分のことしか考えず、しかもそれに気づけなかったのだ。私はこの回を見て、中学生の成長痛みたいなものに激しく共感してしまった。そりゃ中学生だもの。自分のことしか考えない。大人だって追い詰められると視野が狭くなる。

ステージで失敗する氷上スミレ


 スターライトクイーンカップは、自分がどれだけ成長できたかで結果が大きく変わる。ファンが見守る中、大きなプレッシャーと戦う少女たち。小さな背中には大きすぎるものを背負っている。自分の力を信じて挑戦した勇気はとても素晴らしいことだ。その姿が私のエンパワメントに繋がった。スミレちゃんのアイカツ!はアニメが終わっても続くし、これらもその後をみていきたいと思った。ぜひ皆さんも見てみてください!
あと、スミレちゃんと黒澤凛ちゃんのユニット「ダンシングディーバ」の『チュチュバレリーナ』は名曲なので聞いてみて下さい!


ワッチャプリマジ!の皇あまねとエンパワメント

 最後に「ワッチャ!プリマジ
 このアニメは女児向けコンテンツが減退し、風前の灯となる中で唯一希望を与えてくれたプリティーシリーズの最新作。(2023年時点)チュッピ(人間)とマナマナ(魔法使い)が二人三脚でプリマジを盛り上げる。主人公の陽比野まつりとみゃむがトッププリマジスタを目指す物語。プリマジとは、”歌とダンスとファッションで作り上げるエンターテイメント”なのだ。(ワッチャプリマジ!公式サイトより)

ワッチャプリマジ!


 私はそんなプリマジの中でもオタク人気を誇る心愛れもんや甘瓜みるきを差し置いて、皇あまね(すめらぎ あまね)さまが好きだ。なぜなら、めちゃくちゃ人間臭いから。彼女は普段から宝塚の男役みたいなキャラクターで非常に紳士的でおおらかな性格をしている。甘い言葉を囁いて、優しさを振りまいては女の子をメロメロにさせてしまう。

皇あまね

 実はあまねさまは、花屋敷翠子という先輩に言われるがままプリマジスタになったのだった。そのため、先輩から「普段は本性を隠しておくように。秘すれば花よ。」と告げられて黒縁メガネを渡されていつも過ごしている。主従関係と秘密の花園感が私を刺激する。そして、先輩の引退とともに自分もプリマジスタを辞めようと考えていた。しかし、本音を露わにすることができず、誰にも相談せず心の内で悩み、爆発する。先輩に束縛され思い悩むあまねさま…。一体どれが本物の”私”なのかを探りながら操り人形が自我を獲得するかのようだった。その過程でファンや周りの人達を傷つけてしまう様子がとても生々しく、人間らしくて魅力的だなと感じた。そして最終的には、アクアエレメンツのウンディーネの力やパートナーのぱたのや親友の弥生ひなの力を貸り、プリマジを始めた時の楽しさを思い出してプリマジスタを継続することを決意したのだった。
 ステージで歌う「The Secret Garden」も低音で歌いにくそうなのが束縛感を強調していて素晴らしい。そして、第32話の溢れ出る滝のような思いを宝塚風に表現したEternal Revueのドレスもとっても素敵。プリマジでは激しく燃える思い出溢れている。この姿が普段とのギャップを感じて私は大好き。

アクアエレメンツコーデ


 加えて、プリマジの特徴として変身前の姿とプリマジスタの姿が別人のように変わるという特徴を持っている。あまね様は普段は黒縁メガネにベージュのウルフカットなのだが、プリマジでは赤と銀色のツートンカラーでマッシュルームショートになる。メガネも外し、目元は紫色のアイシャドウと雫型のペイントが施されている。

普段の皇あまね
プリマジの皇あまね

 やはり、プリキュアと同じで女児向けコンテンツでの「変身」という行為は特別なのだ。近年ではそれが仮想空間で活発に行われている気がする。アーケード版のプリマジも、最近遊び始めたファッションドリーマーの着せ替えゲームも自分の理想とする体型や肌の色、髪型、服を選んで自由に遊ぶことができる。アバターやスキンを通して自分自身を深く知ることができることがとても楽しい。だから、もっと女児向けコンテンツ増やし欲しい。少子化なら大人用に作ればいいじゃないか。漏れが買うから!!!ついでに私のプリマジフレンドカードとファッションドリーマーのIDを載せておきますので、常識の範囲で使用してください、一緒にプリマジしましょう!!


以上が私のお気に入りの作品だ。キャラクターが中心になってしまったが、紹介した3つの作品はどれも”変身”を通して私に力を与えくれる。これからも開拓していない女児向けアニメを見ようと思っているので、皆さんもぜひ女児向けアニメを見て明日も生きる勇気を享受してください!

参考資料)
プリキュア」シリーズ
『プリキュアコスチュームクロニクル』/東映アニメーション/2023年
『プリキュア20年史』/kasumi/2023年

アイカツ!
https://spice.eplus.jp/articles/58722#:~:text=%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%99%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%81%9F%E3%81%A1,%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8F%E3%80%82
(SPICE/『なぜ大人もハマってしまう⁉ 『アイカツ!』の魅力を感じる要素に密着』)
https://dic.pixiv.net/a/%E6%B0%B7%E4%B8%8A%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%83%AC (ピクシブ百科事典/氷上スミレ)
https://taida5656.hatenablog.com/entry/2020/09/26/173459 (はてなブログ/『「アイカツ」氷上スミレがステージで失敗した理由』/taida5656)
https://note.com/kusyami/n/nba4e9123275c (note/『祝祭で終わらないために前編-氷上スミレが転んだ理由』/くしゃみ(speakraw))
https://wire-snow478.hatenablog.com/entry/2016/03/28/234520
(【はてなブログ/アイカツ!176話『いばらの女王』スミレのSAアピール失敗についての雑感】/鶴)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm28442487 (ニコニコ動画/『AIKATSU! 176 いばらの女王』)

ワッチャ!プリマジ
https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/primagi/story/ (テレビ東京/『ワッチャプリマジ!公式サイト』)
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%82%B8%21 (ニコニコ大百科/『ワッチャプリマジ!』)
https://dic.nicovideo.jp/a/%E7%9A%87%E3%81%82%E3%81%BE%E3%81%AD
(ニコニコ大百科/『皇あまね』)
https://dic.pixiv.net/a/%E7%9A%87%E3%81%82%E3%81%BE%E3%81%AD
(ピクシブ百科事典/皇あまね)
https://note.com/akari_pri/n/n3aa8d9d9c1a1#c0343b75-a793-43e6-9e52-a0729821edc5
(note/『ワッチャプリマジ! 第32話「ただ1つの花~あまねのマジ~」感想・考察』/あかり☆彡)


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