『キャビネット』キム・オンス著/加来順子訳<風変わりな人々の、身につまされもする物語>
ときおりツイッターのタイムラインに流れてくる『虚構新聞』の記事を目にしたことはあるだろうか。どう考えてもありえないようなニュースが大真面目に書いてある。洒落がきいていて、どうかすると現実の世界を強烈に皮肉る内容になっていることもある。
二○○六年に発表され、キム・オンスの代表作となった本作『キャビネット』は、火山の噴火で一瞬に消えた町で唯一生き残った男の短い話が語られたあと、「虚構新聞」もハダシで逃げ出すほど荒唐無稽なショート・ショートがつぎつぎに展開する。ガラスを主食とす