すべてアガサの仕業『アガサ オール・アロング』を100倍楽しむ方法
魔女というのは、僕が執筆をするうえでとても重要な存在。それをキャラクターと言ってしまえば、東映アニメーションの魔法少女シリーズや日本でも大人気だった海外シッドコムドラマ『奥様は魔女』が思い浮かぶ。
もちろんディズニー作品には意地悪な魔女たち、「眠れる森の美女」のマレフィセントが単独の映画になるくらいなので、多くの人が魔女を愛し、魔女を畏れていると言える。
スタジオジブリが制作した『魔女の宅急便』は宮崎駿はどんだけ少女が好きなんだという作品で特に女性から多くの支持を受けている。
でも、全部違うんだよなぁとなる。
魔女はこれらの空想で生まれたキャラクターとはまったく違った側面を持っている。
魔女とは社会的事象だと僕は捉えている。
子どもの頃の魔女のイメージは先に挙げたようなキャラクターでしかなかった。記憶は定かではないがおそらく中学の歴史の授業で『魔女裁判』が取り上げれれ、そのような蛮行が実際にあったのだと知ったときの衝撃は大きかった。
「魔女って裁判に弱いのよね」
現在ディズニープラスで配信されている『アガサ・オール・アロング』(Agatha All Along=すべてアガサの仕業)で用いられたこのセリフは魔女が違法な化粧品の販売をしたとして訴訟を起こされそうになっているというシチュエーションで用いられたのだが、くすっと笑ってしまった。
この数字にはいくつかショッキングな点があります。まず期間。18世紀までそのようなことが行われていたという事実。そして処刑の数は6万人くらいだろうというのが定説になっているようですが、それ以上だったとする説もあります。
魔女が実際に存在し、容疑者が魔女であるかを裁判にかけるなどという話が、実際にあったという歴史上の事実に当時の僕はショックを受けました。そんなことがどうして起きてしまったのだろう。
すぐに答えは出ませんでした。しかしずっと心の奥底に引っかかっていた魔女裁判について、僕はいくつかの作品を書いています。そのたびにネットや図書館で様々な逸話を見聞きするうちに、これは人の社会が持つ闇の部分なのではないかという見解を持つようになりました。
つまり魔女裁判や魔女狩りは時代を超え、形を変え今でも人間社会に残っている。そこで失われる命や削られる人の心、垣間見える人間性の闇の部分。僕は魔女という存在にすっかり魅了されてしまいました。
ディズニー最新ドラマン『アガサ・オール・アロング』の魅力は実際に魔女として常人にはない魔法の力と長寿である魔女たちのドタバタコメディであり、もっとシリアスなヒーロー誕生のオリジンでもあり、MCUで最恐の魔女スカーレット・ウィッチの復活の可能性を期待させるような作りになっていること。
それ以上にアガサというキャラクターの奥深さに、僕は一人の物書きとして大いに関心があり、ここまで十分に楽しませてもらいました。
意地悪で狡猾な魔女として『ワンダヴィジョン』のラスボスとして登場したアガサの単独ドラマでどのように描かれるのかという不安と期待でいえば不安しかなかったのですが、お見事! してやられたというシーンの連続です。あと2話で完結するのですが、来週それは一挙に配信されます。
終わるのが名残惜しい。
しかし何よりももどかしいのがディズニープラス独占配信と言うこと、しかもその中の1作品のスピンオフ的な作品であり、同時に映画で進んでいる別タイトルのストーリーも絡んでくるので、説明するとなるとあっちもこっちもネタバレになるという点です。
時系列にこのアガサを楽しむために必要な作品を並べればこんな感じでしょうか。
映画『アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン』
ここでのちにスカーレット・ウィッチとなるワンダ・マキシモフと双子の兄弟のピエトロ=クイックシルバーが登場し、まさかのここでピエトロがリタイアしてしまいます。
そしてここで誕生したもう一人の重要なヒーロー ヴィジョンがのちにワンダと恋に落ちます。
映画『アベンジャーズ・インフィニーティー・ウォー』
集合作品のラスボス、サノスの指パッチンによって全宇宙の生命体の半分が消滅させられてしまうという衝撃のラスト。
そしてここでヴィジョンが消滅ではなく破壊され、ワンダは消え去ります。最終的にはインフィニティサーガのクライマックス『エンドゲーム』でワンダは復活しますが、さて、ここからが悲劇の始まりです。
ドラマ『ワンダヴィジョン』
このドラマはストーリーを語るのが大変困難な作品ですが、ヴィジョンを失ったワンダが現実改変能力を暴走させ街全体を自分の理想の世界に変えてしまい、そこでヴィジョンと結婚し子供を産みという流れをシットコム演出で視聴者は見せられるのですが……。
ここでアガサ登場です。ワンダはアガサの陰謀を暴き、アガサの魔力を奪いスカーレットウィッチとして覚醒します。しかし自分が作り上げた家族ははかなく消えてしまいます。ワンダは恋人を2回失い、さらにそこで築いた家庭、子供二人も失ってしまいます。
映画『ドクターストレンジ・マルチバース・オブ・マッドネス』
ワンダはダークホールドという禁書の力を使い子供たちと幸せに暮らせる世界があることを知ります。前回は暴走したワンダでしがた、今回はスカーレットウィッチです。もう手が付けられないほどの桁外れの力を持ったヴィランの誕生です。
ドクターストレンジは禁じ手を使い、自らが人間であることを捨ててこれをとめ、ダークホールド共に命を落とします。かなり見るのがつらい作品です。ワンダファンはどうにかしてワンダが復活してほしいを願っています。
そして今回のドラマ『アガサ オールアロング』の制作が発表された時、次々と副題がわかるなど、いったいどうなっているのか、ワンダの復活はあるのかなど、様々な憶測が流れました。
そして配信が始まると、非常に難解なミステリーでありサスペンスであり、マルチバースであり、母と子の物語であり、ドタバタで死の匂いしかしない。なんとも不思議なドラマに仕上がっています。
うわー、そのキャラクターでたわ!
今後のMCUの展開に非常に大きな影響を及ぼす作品になると思います。
しかし、先に挙げたような作品群を最低観ていないと楽しめないという問題があります。いや、知らなくともちゃんと見れるし、楽しめはしますが、知れば知るほど100倍楽しめる作りになったいるのも確かな事実。
コンテンツの在り方といのがここ数年で大きく変わってきました。一つの作品だけでは語れない、楽しめない大いなる物語。どれだけこの文章でそれが伝えることができたかはわかりませんが、作品は逃げません。思い切って一気にMCUの魔法の世界の飛び込むのも一興ではないでしょうか。
そしてすべてアガサの仕業だとにやりと笑えるに違いありません。
観終わったころには魔女のことがとても気になるようになると思いますよ。
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