わたしが日本とイギリスの大学院を併願した理由
はじめまして!
早稲田大学国際教養学部4年のしらきみゆきです。4月からは東大・学際情報学府 社会情報学コースに進学予定です。9月からはイギリスの大学院にも在籍を予定しております。
・大学院受験に至るまでの経緯を言語化し、現在の自分の立ち位置をメタ認知することで今後の進路を考えたい
・社会文化学分野の大学院受験に関する情報が少なく、苦労したため、記憶が新しいうちに何か書き残したい
・エージェントを利用しない海外大学院受験について参考になる情報を提供したい
という理由からnoteを綴ることにしました。今回は、私が大学院進学を決意した経緯と結果を書いていきます。
1. 大学院進学を決めた理由
1-0. 海外大を諦めた高校時代、海外の大学院への進学を熱望
高校生の時、海外大進学を希望したものの、学校の評定平均が低かったため、受験を断念しました。そのため、大学入学当初から「今度こそ良い成績を取り、正規留学したい」という思いがありました。当時は研究したいテーマなど微塵も考えていなかったため、この経験が今の進路選択を決めた直接的な理由ではありませんが、
・大学院に進学することへの心理的ハードルが下げられた
・大学1年生から高いGPAを保ち続けるモチベーションになった
・様々な学問分野に好奇心を向けられた
という点では、進路選択に少なからず影響があったはずです。
なので、少しでも大学院進学を希望するとしたら早めに行動しておくと後の選択肢の幅が広がっていいんじゃないかなって思います!
1-1. 学部時代の交換留学で見つけた夢を叶えるため
国際教養学部に所属していたため、1年間以上の留学が卒業の必要条件でした。(2021年度現在、コロナ禍のため留学は必須となっていません)
私はアメリカの University of California San Diego で交換留学をし、communications studies と gender studies を学びました。
中でも、人種とジェンダーの「交差性」という概念を学んだことで、自分の閉塞感を適切に言語化できるようになったと感じています。
幼少期、イギリスで感じていた息が詰まるようなモヤモヤ。
日本に引っ越した後も帰国生として経験した、理解されがたい生きづらさ。
アメリカで「アジア人女性」に対する偏見を一身に受けることへの憤り。
どこに行っても付いて回る「女の子」の呪縛。
「これって理不尽じゃん、理不尽。」
「人種とかジェンダーとかイデオロギーでしかない。それらが社会的に構築されただけの偽物の概念なら、わたしはそれに縛られる必要なくない?」
「なりたい自分は自由に取捨選択すればいい。その上で自分が自分として生きやすい社会にしたい。」
この際、「こう生きるべき」というべき論と自分のあり方に感じていた齟齬から解放されたように感じました。とはいえ、これまで自分の感じてきた「理不尽」や「生きづらさ」はなぜあるのかという疑問に対する答えは見つけられていません。
特に、日本における人種とジェンダーの交差性の概念分析や、国際的な文脈での日本人女性の性化に関する研究は少ないように思います。
だから、
「課題の究明がわたしが巡り合わせた運命だな、研究こそがわたしの夢だ」
との気づきを胸に大学院進学を決意しました。
1-2. では、なぜ国内受験と海外受験を併願したのか?
最初は交差性に関する研究事例が多い海外のみを検討していました。
しかし、
・研究テーマの性質上、国内外での専門的な学びを必要としている
・国内の夏季入試で早い段階での合格と精神的安定を手に入れたい
・学部卒業後の4月から研究できる環境に自分の身を置きたい
・国内外の研究機関で人脈作りを行いたい
・複数の学位を持つことで今後のキャリア形成を戦略的に行いたい
という理由から最終的に併願受験に踏み切りました。また、アメリカの大学院に出願して学部から直接博士課程に進学することも検討しましたが、取り止めました。まずは修士課程でしっかり研究の基盤となる方法論や理論を学びたいと思ったからです。
そして、数多い選択肢の中でもイギリスの大学院に出願したのは、
・1年間で修士が取得可能であり、経済的負担が比較的少ない
・幼少期に住んでいたため、生活環境の変化に対する抵抗感が少ない
という理由からです。
納得できる受験校選択のためには、大学院に進学する目的と個人の経済的状況や性格に照らし合わせて考える必要があると思います。
1-3. 大学院の国内受験と海外受験を併願してよかったか?
わたしにとっては、色々鑑みた上で、併願が最良の選択でした。
しかし、誰にでもおすすめできるかと聞かれるとそうではありません。
研究計画はとことん追及して考え抜かないといけないし、そのためには沢山の知識と理論の実践が必要です。また、出願国が異なればそもそも求められる資料の種類や内容もかなり変わってくるので、事前リサーチが大切になります。日頃の生活とのバランスを考えて綿密に出願計画を立てないと、どこも合格できないという危険性が付きまとう受験戦略です。
実際、わたしは元々HSP気質で2カ国3校に出願するだけで労力を使い込み、WarwickやGoldsmithsなどへの出願予定が狂ってしまいました。
受験結果から後悔はないものの、振り返るとかなり危ない綱渡りでした。
そのため、
・リスクを加味した上で国内受験と海外受験を併願する覚悟ができている
・現実的な出願計画を立てて遂行できる自信がある
・時間的にも精神的にも余裕がある
という場合に大学院の国内・海外受験の併願はしてもいいんじゃないかなと思います。
2. それぞれの受験準備
2-1. 共通事項
語学資格やGPAが出願に必須だということは多くの方がご存知かと思います。いずれも高ければ高いほど安心ですが、点数は足切りという場合が多いので、まずは基準点を超えることが重要です。ただし、海外大学院の場合、出願時のスコアが基準点を満たしていなくても、条件付き合格をくれることがあります。出願校のオファー傾向を調べたり、学務に問い合わせたりすることで不安要素は減らせるので、「スコアがあと一歩」という方は是非検討してみてください。
一方、意外と盲点になるのが研究分野に関係のある活動実績の提示を求められることです。とはいえ、論理的に自分の活動と研究の関係性を示せる場合、出版経験等が無くてもあまり悩むことはないと思います。
わたしの場合、
・英語パーラメンタリーディベートの実績
・インターン先で広告分析にあたっていた話
・英語塾講師としての教育経験
・副実行委員長として高校生を対象としたサマースクールを運営した経験
・文芸サークルの立ち上げに携わった経験
・ゼミ長の経験
など、全然方向性の異なる活動実績を提示しました。わたしは研究者になることが目標なので、学部生時代から論理的思考法を実践していること、教育に強い関心があること、そしてリーダーシップがあることを強調しました。
2-2. 国内受験
国内受験で最も特徴的なのは研究室訪問ではないでしょうか。
自分の研究計画を熟考した上で希望の指導教官の研究室に足を運び、ゼミ生の議論を体験することで、修士での研究が現実味を帯びます。指導教官の先生と話せる貴重な機会でもあるので、しっかり疑問点を解消したり、相性を考えたりできます。
研究計画書や自己推薦状は学校によって求められる様式が異なるので、しっかり要項を確認して体裁に間違いがないようにしましょう。
また、学校や年度によって試験の形態も変わってくることも要注意です。
2-3. 海外受験
志望理由書もしくは、研究計画書のいずれかを求められる学校が大多数を占めると思います。Statement of PurposeとResearch Proposalの2つでは求められる内容が全然違うので、どちらが求められているか要確認です。
志望理由書の場合:
研究計画書の場合:
求められているものに応じて、臨機応変に書類を作成しましょう。志望理由の場合は自分軸、研究計画の場合は研究テーマの軸に沿って書くことを意識すると書きやすいです。
他にも、2〜3通の推薦状が求められますが、それぞれ自身をよく知る大学の先生に書いていただくことがオススメです。大学院は研究機関なので、あなたが勉強に臨む際の姿勢を推薦状から汲み取ろうとしているためです。
Writing Sampleは、実際に学部の授業で採点された小論文を指します。研究の基盤となる論文執筆の基礎ができているか審査されるのだと思います。できる限り研究テーマに近い内容の小論文を提出できるとベストです。
奨学金への応募は大事です。日本学生支援機構のみならず、各学校やコースで募集があるので、機会を逃さず、チェックしましょう。
2-4. 受験戦略
2カ国3校の受験を考える際、何よりも重要視したことは一貫性です。
・自分の心が強く揺さぶられるような研究テーマとは何か
・何故自分がそのテーマを研究する必要があるのか
・自分のやりたい研究を実現するために求める教育的環境
これらを徹底的に言語化して考えてからそれぞれの出願校を決めました。
大学院進学は世の中で「学歴ロンダ」と揶揄されるほど甘くはありません。自分の心の機微に嘘がないように。大学院という大きな人生選択に後悔が無いように。一貫してやりたいことに正直に。
自分の思い描く理想の未来を一貫して考えることで自信を持ってそれぞれの学校に出願することができたように思います。
2-5. 大変だったこと
一番大変だったことは自分のメンタル管理です。大学やサークルの同期が次々と就活を終えていく中、一人で勉強を続けているとどうしても進路への不安や周囲への羨望が頭をよぎります。
あまり精神論は好きじゃないですが、こればかりは割り切る他ありません。「みんなと自分は異なる未来を選択した」、「努力の先に望む未来がある」
って自分に言い聞かせながら学部最後の1年を過ごしました。
あとは、適度にストレス発散するのも大事です!
1日1回は自然と笑顔になれることをやりましょう!
3. 受験校と結果
最終的に出願した学校と選考結果は以下の通りです。
・⦅国内⦆東大・学際情報学府 社会情報学コース(8.27.21' 合格)
・⦅国外⦆LSE MSc Culture and Society (1.22.22' 学部卒業を条件に合格)
・⦅国外⦆University of Cambridge MPhil in Multi-disciplinary Gender Studies (2.10.22' 学部卒業を条件に合格)
学府は7.12.21'に、LSEとCambridgeは10.28.21'に出願しています。国内の学校はスケジュール通り一斉に合否が発表されますが、海外の学校は rolling admission といって、書類を提出した人から順番に選考が行われるので結果発表の日時の予測がつきません。わたしは、LSEの結果通知もCambridgeの面接案内もスパムメール認定されて困った経験をしたので、海外の学校を受験する方は毎日メールボックスを確認することを強く推奨します!
今、受験結果を受け、嬉しくてホッとするような、でも、新生活に向けて気が引き締まるような、複雑な気持ちです。まさか全ての学校から合格をいただけるとは思っていなかっただけに驚いています。
でも、ハードでチャレンジングな大学院受験を経験したからこそ、今後も自分の研究と取り組みに自信を持って楽しんで頑張れそうです!
これだけは確実に言えるなぁ。
4. おわりに
わたしが大学院に合格できたのは自分の努力と、その過程を支え、応援してくれた家族や恋人、友人たちと先生方のおかげです。この多大なご恩を忘れずに修士課程でも驕らず、自分の心に導かれるがまま研究に精進します。
ぐだぐだと書きましたが、少しでも誰かの参考になれましたら幸いです。
ではでは!
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