ホーチミン市で葛飾北斎にふれる
葛飾北斎ー江戸時代の浮世絵師で、作品の中では富嶽三十六景が有名。中学生の時に社会科の授業で学んだ以上のことは存知ない。
ホーチミン市内でVP Bankというベトナムの銀行が、北斎の作品展を無料で開催していると聞き、無料ならばと訪れてみた。事前にWebサイトから予約が必要なのだが、確認したときには休日の予約枠は全て埋まっており、平日も夜の時間帯はほぼ空き枠がない状態。北斎の知名度がベトナムでもそれほど高いのか、単に無料イベントだから人が集まっているのかはいざ知らず。
事前に北斎についての知識収集をインターネットで軽くリサーチ。浮世絵がジャポニズム文化として、当時ヨーロッパでも人気があったというのは、ちょっと前に読んだ原田マハさんの「たゆたえども沈まず」で知ったけれど、北斎はまさにその人気画家の一人だったようだ。
催しは無料なので、もちろん本物が飾られているわけではなく、また贋作ってわけでもなく、コピーのようなものが飾られているだけ。富嶽三十六景の一部や、百人一首の詩を表した作品が3,4点、その他の作品が軽く紹介されている程度で、思っていたよりもかなり小規模だった。展示品よりも、このリバーサイドに建つガラス張りの会場から見渡せる市内の夜景の美しさの方が、美術の知識と才能のかけらも持ち合わせていない私には勝った。
とはいえ、これを機に少し北斎について興味を持てた。こんなことがなければ、彼が90歳でこの世を去るまでの約70年間で3万点以上の作品を遺したなんて、知る由もなかっただろう。
恥ずべきことに、この富嶽三十六景は2020年から発行されている日本のパスポートの査証ページのデザインとなっていることさえも知らなかった。既にこのデザインのパスポートを有してはいるものの、日本画らしいものが描かれたデザインに変わったなぁと思っていた程度である。
改めて見れば、見開きのページ毎に違う富嶽三十六景の作品が描かれている。そして最も有名と言われている「神奈川沖浪裏」が描かれているページには…気が付かぬ間に、カンボジアのアライバルビザが貼り付けられてしまっており、右半分に描かれていたはずの富士は見えなくなってしまっていた。