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ヘヴィメタルに興味がない人のためのメタルガイド3【ポップな中にメタルあり】
前回は映画サントラを中心にアメリカでよく売れたハードロック風味の曲、ケニー・ロギンス、チープ・トリック、サバイバーあたりを中心に紹介した。
このnote記事について、ぼくよりも一世代若くてオルタナティブ・ロック(いずれこれも説明予定)から入ってメタルに行きついた友人、じゃじゃまるさんから次のようなコメントをもらった。
「めんたねさんの記事はぼくが追ってきたものと全然違うから面白い。サバイバーはロッキーの音楽であって、あれがハードロック・ヘヴィメタルだという発想自体がなかった。確かに言われてみれば様式はそうなんだけど」
この発言はぼくにとっても衝撃であった。そうなのか。
ガンマ・レイから始まるメタル歴
じゃじゃまるさんは、ガンマ・レイというドイツのパワーメタルバンドからメタルに入ったそうだ。パワーメタルというのは音として結構ヘヴィである。
Gamma Ray - Into The Storm
(例のごとく、ヘヴィなのでイントロだけ聴いたらスキップするように。無理に最後まで聴いてはいけない)
じゃじゃまるさんとしては「メタル」という言葉にそのヘヴィなイメージが最初に強くあったので、サバイバーやらケニー・ロギンスがハードロックを経由してヘヴィメタルとも連続性を持つという感覚がなかったそうだ。
先の曲はじゃじゃまるさんがガンマ・レイで最初に聞いた曲として紹介してくれたものだが、ぼくの中ではガンマ・レイというと一枚目のアルバム、出だしのこの曲である。ついでにこっちも紹介しておく。
この大げさな序曲から二曲目に入るというのはメタルの世界では「様式美」と呼ばれる一つの代表的なスタイルである。これが大好きな人たちがいる。ぼくも大好物だ。熱い。序曲から二曲目への流れだけで色々と紹介したい曲が思いついてしまう。それはまた別の機会にしよう。
あと、「ドイツのパワーメタルバンド」なんていう風にガンマ・レイを紹介すると、メタル上級者からは「まだるっこしい言い方しないで『ジャーマン・メタル』って言えよ!」「ガンマ・レイを紹介しながら、ハロウィンを紹介しないのはおかしいだろ!」などと様々なクレームが来るであろうことが予想される。だが、これはメタル入門者のための記事なので何卒、ご容赦いただきたい。大丈夫、そのうち、ジャーマンメタル紹介記事も書きたいと思う。いつになるかはわからないが。
Gamma Ray - Welcome/Lust For Life
まずマイケルから始めよ
一方、ぼくは80年代後半に全米ヒットチャートを賑わしていたようなポップミュージックから洋楽に入った。
小学校三年生の時の担任の先生がなぜか授業の空き時間にマイケル・ジャクソン、スリラーのショートフィルムを見せてくれたのだ。今見てもよくできていて面白い。ゾンビに扮したダンスも楽しい。
読者の皆さんもメタルはまだ聴かなくてもいいが、その代わり、スリラーのショートフィルムだけは絶対に見てほしい。これさえ見てもらえれば、ぼくとしては今回はもう満足だ。せっかちな人は4:17から見ればそこから曲が始まるけど、やっぱり最初からストーリーの流れを追ってもらった方がより美味しいと思う。
Michael Jackson - Thriller
ダンスシーンが入っているから気づかないんだけど、これ、実は途中の歌が入っていない間奏の時間がすごく長い。間奏が長いというのもハードロック・ヘヴィメタルの一要素である。歌なしの演奏だけでも楽しくリズムにのれる。こういうところからメタル入門は始まる。実際、ぼくはそうやってメタルを聴くための基礎耐性が知らないうちについていった。
それからぼくはマイケルに夢中になる。こんな楽しいダンスと面白いショートフィルムを見せられてしまったら仕方がない。当然、ムーン・ウォークも練習した。
マイケル・ジャクソンのムーンウォーク進化の歴史
マイケルとメタルのつながりを語るのであれば、アルバム「BAD」は外せない。非常にロック色の強いアルバムだ。名曲をいくつか聴いてもらおう。
Michael Jackson - Beat It(邦題「今夜はビート・イット」)
出だしのシンセサイザーの音についで入ってくるギターの音、中間の弾きまくるギターソロ。ほら。メタルっぽい。
これは当時よく売れて、全米のお茶の間にメタルを広めたメタルバンド、ヴァン・ヘイレンのギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンがゲストで呼ばれて弾いている。メタルっぽいのも当然だったのだ。
でも、当時のぼくは、そんなこと気にせずに気持ちいいなあと思いながらエディのギターソロを聴いていた。それがギターの音だとも認識していなかった。そもそもまだメタルに興味がなかったし。でも、こうやって、知らず知らずのうちに耳が慣らされていったのだ。
Michael Jackson - Bad
この曲の場合、楽器音自体はメタル的ではないかもしれないが、曲調が非常にロック的である。ファッションも黒レザーと鋲だし。そして、「ポーーーーーウッ!」とマイケルがハイトーンでシャウト。そう、シャウトだ。洗脳支配のリスクがある禁断のシャウト。だが、キング・オブ・ポップとして名高いマイケルならば安心だ。彼のシャウトならそんなに怖くない。
マイケルのポウ!は子どもの頃から何度も真似をして叫んでいたため、個人的な想い入れが強い。だから、もう一曲、マイケルがポウ!ポウ!叫びまくる曲を紹介しておこう。
Michael Jackson - Smooth Criminal
やっぱりマイケルのダンスは異常だ。マイケルを見て人間にもこんな動きができるのかと初めて知った。帽子をくいっと深めにかぶり直す動き一つで魅せる。80年代のポップスがキラキラと輝いていた時代の曲である。
こんなわけで、最初のじゃじゃまるさんの話に戻ろう。じゃじゃまるさんはソフトでキャッチーなロックの中にメタルを感じ取らなかった。
でも、ぼくはポップの極み、マイケル・ジャクソンが入り口で徐々にハードロック・ヘヴィメタルの世界に近づいて行った。だから、この辺のソフトな音は全てメタルと連続性をもって感じられているのである。
疾走感溢れるハードロック・ヘヴィメタル
ハードロック・ヘヴィメタルの定番人気スタイルとしてスピードチューンがある。テンポの速いノリのいい曲だ。そう言われてもピンとこない人も多いだろうから何曲か例を挙げておく。ただし、例として挙げてはおくが、どれも曲が始まって30秒も聴けば十分だ。本題はその先にある。
Deep Purple - Highway Star
元祖様式美ハードロックバンド、ディープ・パープル。この曲は1972年のものであるが、ハードロック創成期の超有名曲である。激しいシャウト、クラシカルなキーボードソロとギターソロ、速いテンポ、ずっと小刻みになり続けるベース、手数の多いドラム、ここにあるのが「疾走感」というものである。
こういう曲を聴くと、首をなんとなく縦に振ってリズムを取りたくなって来ないか?それがヘッド・バンギングというメタル愛好家(メタラーと呼ぶ)の基本動作だ。やりすぎると首を痛めるので気を付けよう。X JapanのYoshikiはそれで頸椎ヘルニアになってしまった。マジで危ない。メタルは危ない。
Mr.Big - Daddy, Brother, Lover, Little Boy [The Electric Drill Song]
1990年代にアメリカでヒットしていたハードロックバンド、ミスター・ビッグ。その代表的なスピードチューンがこれ。副題に"The Electric Drill Song"とあるように、間奏中、電気ドリルにピックを付けてギターとベースを弾きまくる。バカである。このバカさはメタルの魂だ。ちなみに、彼らが愛用している電気ドリルは日本のメーカー、マキタのもの。
Mötley Crüe - Kickstart My Heart
メタル入門者のみなさんも長髪にはわりと慣れてきたんじゃないかと思う。だが、こいつらは目に黒くアイラインを入れるなど化粧をしているし、入れ墨も入れている。ノースリーブのTシャツ着用率が高い。とても柄が悪そうだ。あまり近寄りたくない。これが80年代末に流行ったLAメタルと呼ばれるメタルのサブジャンルの基本スタイルになる。
そして、彼らがLAメタルの代表格、モトリー・クルーである。LAメタルについては、後日、じっくり紹介する機会を改めて設けるつもりだが、スピードチューンということで、ここで予告編的に一曲出しておく。
こういうのにも少し見慣れておいてもらわないといけないからね。気持ちが折れたら、負けだぞ。このルックスに捉われることなく、音に耳を傾けるんだ、音に。ノリノリでしょ?
Guns N' Roses - You Could Be Mine
映画『ターミネーター2』のテーマソング。ガンズ・アンド・ローゼズは80年代末から90年代に売れまくったロックンロール寄りのハードロック・ヘヴィメタルバンドである。今回紹介したメタルバンドの中では一番売れているはず。全米で4200万枚売ったらしい。
ぼくは、ハードロックを聴き始めたころ、このロックンロールのノリがあまり好きではなく、ガンズもそこまで好きになれなかった。だが、そんなぼくでも、この曲はいかにもハードロック的なスピードチューンであり、非常にとっつきやすくてよく聞いていた。
先ほど挙げたモトリー・クルーもこのガンズもヴォーカルの声が爬虫類系なので、その辺に合う、合わないがあるかもしれない。慣れるとこれもすぐによくなる。
Badlands - Hard Driver
メタルファンには伊藤政則のパワーロック・トゥデイというメタルのラジオ番組のオープニングで使われていた曲として有名。死ぬほどかっこいい。ぼくにとってこの曲はハードロックの一つの理想形と言ってもよい。
このバッドランズというバンドはヴォーカルのレイ・ギランはいい声をしているし、ジェイク・E・リーのギターは華やかだし、もう最高なのだが、あまり売れずに解散してしまった。正統派の王道過ぎたのかもしれない。悲しい…
疾走感入門ソング
さて、つい気持ちよくなって大量のメタル曲を紹介してしまったが、ここからはポップ寄りのスピードチューン。これならば聞きやすいが、疾走感のかっこよさ、気持ちよさはそのままある。
The Police - Synchronicity Ⅰ
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ポリスは1983年の「見つめていたい」の大ヒットで有名なバンド。ポップロックとかニューウェイブという文脈で語られることが多く、あまりハードロック・ヘヴィメタルとは縁がないように見えるが、このシンクロニシティⅠという曲の疾走感はハードロックに通じる。速いテンポの気持ち良さがわかるだろうか。ちなみにこうしてみると、この時期のスティング(ヴォーカル・ベース)のルックスは胸もはだけているし、ちょっとメタルっぽいな。どうでもいいことだけど。
え?なんでここでポリスを紹介したか?
いくら疾走感といっても無理がないか?
うるさい。
単にポリスが大好きなんだよ。
名曲は人に紹介したい、それだけだ。
Billy Idol - Speed
ビリー・アイドルはパンク・ロック出身のヴォーカリストなのだが、80年代に入ってから、ハードロック寄りのポップロックをやるようになりヒットを飛ばした。
これは映画『スピード』のテーマ曲。スピードだけあってスピードチューンである。少ししゃがれていて、ところどころがなるように歌うし、シャウトもする。この辺まで来ると、ハードロックとポップロックの区別はほとんどつかない。
ハードロック・ヘヴィメタル風味のポップ
ハードロックのテイストをポップミュージックの中に取り込んで80年代にヒットしたアーティストをもう1人紹介しておく。ビリー・スクワイアーだ。好きなんですよ。
Billy Squier - In The Dark
メタル的なギターのイントロから始まるが、歌が入るとヴォーカルが全面に出て非常にきれいなメロディを歌う。そして、このメロディラインにもハードロック的哀愁の気配がある。キーボードの音も入っているので、入門者でも非常に聞きやすい。
ビリー・スクワイアーは「産業ロック」「スタジアムロック」などと呼ばれて、「売るためにロックの反骨精神を失ったダメなロック」的な扱いを受けたりもするのだが、ぼくは断固として彼を支持する。産業ロック、大いに結構。その辺についても詳細はまた別記事に回そう。
今回のメインはここまで。
おまけ
マイケル・ジャクソンの「今夜はビート・イット」を本編で紹介したが、マイケル・ジャクソンが売れまくっていたため、アル・ヤンコビックという人が「今夜もイート・イット」というパロディを歌い、これまたヒットした。その勢いで彼は来日して「オレたちひょうきん族」に出演も果たす。その時の映像が以下のもの。非常にくだらないが、マイケル本人もアル・ヤンコビックの才能を認め、公認パロディソングになったらしい。
Al Yankovic - Eat It
もう一曲、マイケル・ジャクソンのBADのパロディ、FATというのもやっている。本当にくだらない。BADは「誰が本当のワルかを教えてやる」って話であったが、こっちは「誰が本当のデブかを教えてやる」ってことなんだと思う…
Al Yankovic - Fat
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