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ヘヴィメタルに興味がない人のためのメタルガイド2 【映画サントラからのヒット曲】

前回の記事でなぜメタルが嫌われるのか解説した。

1.同時にたくさんの楽器の音が重なっている
2.時間当たりに詰めこまれている音の数が多い(速弾きなど)
3.ボーカルよりも楽器の音がでかい
4.ボーカルが叫んでいる
5.メロディよりもリズム・リフをメインに押し出す
6.ギターの音がひずんでいる(ディストーション)
7.謎の恰好をしていて怖い、ダサい
8.長髪かスキンヘッドが多い
9.謎に脱いだり、ケツを見せたりする
10.バイクに乗ってステージにやってくる
11.剣を振り回したり、生きた鳩やコウモリを生でかじって食べる
12.ファンの人たちも首を振り続けていて怖い(ヘッドバンギング)
13.とにかくなんでメタルなんてやっているのか全く意味がわからない
14.別にメタルを聴かなくても人生困らない”

上記の要素が少なめだが、ハードロック・ヘヴィメタルにつながっていく要素もある曲を紹介すればいいということになる。

そうだ、売れた曲を紹介してみよう

そこで、まず最初に考えたのは実際にハードロック・ヘヴィメタル寄りの音なのにたくさん売れた有名曲を紹介しようということだ。ぼくは80年代、90年代あたりのメタルをよく聞いていたし、そのころはハードロック・ヘヴィメタルが世界的によく売れていた。だから、主に懐メロ的にその辺を紹介することになると思う。

知らない曲、初めて聞く曲を受け入れるというのは結構難しい。人は既に知っているもの、慣れているものに対しては心を開きやすい。だから、既に聞いたことがある人が多そうな有名曲を紹介していく。

売れた曲というのはたいてい何かしら受け入れやすい要素があるものだ。メロディが良いとか、ルックスがイケてるとか、印象に残るリフがあるとか。そうじゃないとハードロック・ヘヴィメタル風味の曲が売れることはない。

ただし、売れた曲という縛りだけだと数がたくさんありすぎて一回では紹介しきれない。

だから、今回はとりあえず80年代の映画のサントラ盤の中から主に紹介していく。80年代にアメリカの映画がミュージックビデオ化した。映画を売るために曲を付けているのか、曲を売るために映画を出しているのかよくわからない状態になった。映画としてはイマイチなんだが、サントラは素晴らしいんだよねということも結構あって、その中にはハードロック・ヘヴィメタルへと繋がっていくような名曲もたくさんある。映画の中で使われるというのは極端に邪魔にならない聴きやすい曲が多いのだ。

さあ紹介していくぞ。

映画『トップガン』のサントラ

最近、『トップガン マーヴェリック』が上映されている。80年代中盤に大ヒットした『トップガン』の続編である。

この『トップガン』のサントラは好きでよく聞いていた。このアルバムはポップな曲の中にさりげなくいい具合にハードロック寄りの曲が混ざっていて、なおかつメロディが良かったりする。

ケニー・ロギンス

Kenny Loggins - Danger Zone

このケニー・ロギンスという人はその前の『フットルース』という青春ダンス映画のサントラでテーマ曲を歌ったことでも有名。デンジャーゾーンはアメリカのビルボードチャートでも2位まで上昇した。ハードロック・ヘヴィメタル的かっこよさを曲の中にしっかり含み、ディストーションの効いたギターの音が前に出てくる。でも、さわやかなオヤジ声とでも言えばいいのか、耳障りじゃなくてとても聴きやすい。Footlooseもノリノリの気持ちの良い曲なんでついでに紹介しておく。どっちも好きだよ。

Kenny Loggins - Footloose

チープ・トリック

トップガンのサントラからもう一つ別のバンドの曲も紹介しておく。

Cheap Trick - Mighty Wings

チープ・トリックは70年代から活動しているとても歴史の長いロックバンド。ロックとポップスとハードロックの間をうろうろしているような感じで、曲によってハードロック・ヘヴィメタル寄りのもあればそうじゃないものもある。

この曲はメロディラインはキャッチー(印象的で心をつかまれる、みたいな意味ね)だけど、やはりハードロック文法に乗っている。ヒーローもののアニメソングの主題歌で使われそうなメロディラインのかっこよさってだいたいハードロック文法に近いところにあります。

ピポピポ言うキーボードの音が全体の雰囲気をキラキラさせてハードな印象を薄めてくれてもいる。これが80年代に流行った音で、ぼくはこのピポピポ音だけでご飯3杯いける。ボーカルは少しこぶしを効かせてがなり気味に歌ってみたりもするんだけど、やっぱり基本的には爽やかで聴きやすい。

Cheap Trick - The Flame

もう一曲、彼らの全米ナンバーワンヒット曲もあるのでそっちも紹介しておく。いわゆる典型的なロックバラードである。ハードロック、ヘヴィメタル寄りのバンドがバラードを歌ってヒットを生むというのも80年代後半によくあった。この曲もその一つ。

The Flameは邦題が「永遠の愛の炎」と謎に臭い。謎の邦題を付けるのは洋楽あるあるだ。

確かKIRIN Metsという清涼飲料水のCMのバックで使われていたと思う。それをテレビで見かけていい曲だなあと思って画面をよく見たら下に小さく「Cheap Trick/The Flame」と書いてあるのを見つけて慌ててメモを取った。昔はYoutubeもないし、視聴もできなかったから、こうやって曲名と共にいい曲を知ると、メモを取って探しに行ったものです。そうやって探し当てた曲にはどうしても思い入れが生まれるんだよね。

あとついでに『トップガン』のサントラからのヒット曲として有名なベルリン「愛は吐息のように」も紹介しておこう。これはメタルではない。これは聞いたことあるって人も多いんじゃないかな。

Berlin - Take My Breath Away


メタル入門者が聞いてはいけないメタルヴォイス

聴いてみてわかったと思うのだが、トップガンのサントラは基本的にボーカルがわかりやすく綺麗にメロディを歌ってくれている。だから、非常に気持ちよく聴きやすい。

決して超音波ハイトーンシャウトをかましたり、デスヴォイスで呻いたりはしない。

これがメタル慣れしてくると、「シャウトが入ってなんぼだろ」と物足りなく感じたりもして大変に偏った音楽の聴き方になったりもするのだ。

だが、いきなりのシャウトは体に良くない。

メタル入門者のみなさんが間違いを犯さないための警告として危険なメタルヴォイスの例を挙げておこうと思う。とても危ないから、ちょっとだけ聴いてそのやばい特徴を確認したらすぐに再生を止めてね。おじさんとの約束だよ!

Judas Priest - Ram It Down

前回も紹介したメタルゴッドによる神の声。メタル初心者は絶対にこういうやつを聴いてはいけない。超音波シャウトで洗脳されます。ついうっかり真似してみたくなって喉を壊したりもします。危険です。気を付けてください。

Disturbed - Down With The Sickness

こういう嗄れ声のデスヴォイスもとても危ない。真似をすると三日間は喉が回復しなかったりします。そもそも聴き苦しくて不快です。これも聴き慣れてきてしまうと「こいつのデスヴォイスすごいな!」とか思い始めちゃったりするんだけど。Disturbedのボーカルはライブでも安定してこの音程でこの声を出し続けているから本当にすごい。歌が上手い。

映画『ロッキー』シリーズ

さあ本題に戻ろう。次は映画『ロッキー』シリーズについて。

まず最初に一番重要なことを伝える。

ロッキーシリーズで映画作品として素晴らしいのはロッキー1とロッキー2である。まだ見たことがない人はすぐに見なさい。

コミュ障でボクシングしかできないロッキーが同じくコミュ障なペットショップの店員女性エイドリアンと不器用なコミュニケーションを重ねて恋愛関係を発展させていく。これが本当に素晴らしい。マジでロッキーはまともにしゃべれないから。あのしゃべれなさの表現が最高。

主演のシルベスター・スタローンは自分でこの映画の脚本も書いて、俺を主演でやらせろと言ってこの映画を作ったらしい。すごい人だ。

とにかく、ロッキー1と2は映画としての出来がとても良い。ぜひ見てほしい。

あとスタローンといえば、映画『ランボー』も1が最高にいいぞ。スタローンのシリーズ物は、シリーズ後半に行くにつれて段々と商業主義化していくという鉄板の流れがある。スタローンのシリーズ物は1を見ろ。いいね。

あ、全然メタルの話と関係ないな、これ。

サバイバー

さて、今回紹介するのはロッキー3とロッキー4のサントラからの曲である。ぼくの場合、ロッキー3は1と2への想い入れがあったので、それなりに楽しめた。チャンピオンになって成功者となったロッキーを取り巻く状況の描かれ方とかはなかなか良い。

そして、今回ロッキー3から紹介するサバイバーの名曲Eye Of The Tigerの入り方がそれまでちゃんとロッキーシリーズを見ている人にとっては本当にしびれる。

ロッキー1と2で死闘を繰り広げたロッキーとアポロ。二人の間にロッキー3で友情が生まれ、ロッキー3のメインのチャンピオン戦を終えたロッキーに対して、アポロが俺ともボクシングをまたやろうぜと持ち掛ける。「おいおい、まじかよ」というノリで二人はスパーリングを始めるのだが、その最初のパンチを出し合うその瞬間に映画が終わって、そのシーンが実写映像から絵に変わりながらEye Of The Tigerが流れてくる。このエンディング見たときに、やられた!と思った。

本当はロッキーシリーズをまだ見ていない人は1、2、3と順番に見てほしい。このロッキー3のエンディング部分の動画だけ見ても多分、あのかっこよさはわからない。

そういうわけでミュージックビデオはこちら。

Survivor - Eye Of The Tiger

出だしから小刻みにずっと鳴るリズムギターの音の響きと、そこに次いで合わせて入ってくる歪んだリードギターとドラム、そして、繰り返される印象的でかっこいいギターリフ、そしてとてもキャッチーな歌メロ。やっぱりいい。最高だ。音をあまり詰め込んでいないので、ハードさ(うるささ)はあまり感じないんだけど、これはきっちりとハードロック文法に乗っている。この曲を楽しめる人はもうハードロックが楽しめる人である。歌メロだけじゃなくてリフやリズムを楽しめるということだからね。

そして、無駄に街中を険しい顔をして歩きながら歌い続ける映像の安っぽさもいいではないか。当時はMTVが始まって間もない頃だったから、みんなオシャレなビデオクリップを作るノウハウがたまっていなかったのか、とにかくダサいものが多い。それも味わい深い。

この曲は全米でも売れまくって6週連続1位だったらしい。バカ売れするのも納得の完成度。


次にロッキー4の方なんだけど。これは映画としてはやばい…映画ではなくて完全にミュージックビデオなのだ。

とりあえず、曲を紹介しておく。

このビデオクリップを見るとだいたい話の内容がわかる。ソ連のスポーツ医学の成果に基づいて科学的トレーニングを徹底的に施されたドラゴに対して、ロッキーが原始的なトレーニングで殺されたアポロの仇を取ろうと戦うのである。東西冷戦構造をそのままボクシングに持ってきた感じ。この当時はソ連が国を挙げてのスポーツエリートへの集中トレーニングでオリンピックで金メダルを取りまくっていたしね。

Survivor - Burning Heart

この曲はメロディがいい。カラオケで歌いたくなる。

ただ、歌ってみるとわかるんだけど、基本的にハードロック・ヘヴィメタル系のバンドのボーカルってキーが高いことが多い。この曲もそうで、原曲キーだとぼくには声が出ない。

この「ハイトーン」っていうのもメタルっぽさのひとつである。サバイバーはわりとハイトーンなんだけど、きれいに歌い上げるからメタル入門者でも聴いてる分には不快感は少ないんじゃないかな。

この曲も全米2位とよく売れた。

サバイバーは音をあまりハードにしなくてもハードロック、ヘヴィメタルのかっこよさを表現するのがうまい。お茶の間で受け入れられるハードロックという感じ。

せっかくなんで、もう一曲、サバイバーの名曲を紹介しておく。サバイバー好きなんだよね。

いいメロディだ…たまらない。このハードロック文法に乗りながらも、ポップでキャッチーなメロディを乗せてくる感じが「ハード・ポップ(ハードでポップなロック)」「メロディアス・ハードロック」という後のメタル関連ジャンルへと繋がっていく。

この辺はぼくの大好物ゾーンなんで、正直、話し始めるとなかなか止まらないのだが、とりあえずサバイバーの話はここまで。

ファンクとメタル

少しメタルから脇にそれてロッキー4の話をもう少ししよう。

ロッキー4はミュージックビデオであって映画としてはヤバイと言ったが、じゃあつまらないのかというとそうでもない。ミュージックビデオとして見るととてもよい。アポロがジェームズ・ブラウンのLiving In Americaに合わせてロシア出身のドラゴとの試合に登場するシーンとか最高だ。このあと、アポロはドラゴにボコボコにされて死んじゃいますけど…

James Brown - Living In America

ファンクの帝王、ジェームズ・ブラウン御大本人が登場して歌って踊ってくれるサービスっぷり。

メタルもシャウトするけど、ファンクもシャウトするよな。ぼくはシャウト大好きだからジェームズ・ブラウンの歌い方も気持ちいんだけど、メタルがうるさくて苦手って人はジェームズ・ブラウンのシャウトも不快だったりするんだろうか?ファンクっていうのも必ずしもみんながみんな楽しめるというジャンルではないんだろう。

ああ、またメタルではない話をしてしまった。

でも、メタルとファンクって近いところがあるんじゃないかと思っている。実際、ファンクとメタルを融合させたExtremeというバンドもあるしね。

このファンクメタルのノリを気持ちいと思えるか不快に感じるかでExtremeへの評価は大きく分かれそうな気がする。

こういうのって、若いときはピンとこなくて急にあるときになって、気持ちよく感じるようになったりもする。何が起きているのかはよくわからない。音楽の好みってある日突然広がったり、逆に興味を失ったりすることもあるので、自分のことは自分でもよくわからないんだなとわかって面白い。

Extreme - Get The Funk Out

この曲は音数がそんなに多くないから、メタル入門者にも聴きやすいような気もする。

ただ、バリバリにディストーション効いたギターをかき鳴らしているし、ベースの音もがでかいし、ボーカルはメロディアスに歌い上げるのではななくて、割と雑に少し音を外しながらがなり立てるように歌う。このちょっと音程を外しながら歌うような感じになじむかどうかっていうのも、メタル耐性の有無と結構関係してくる。

いずれ、音痴なのにロックヴォーカリストとしては大変に華があるとされるデイヴィッドリー・ロスのことも紹介するか。

おまけ

今回の記事を書くためにYoutubeを漁っていたら、一時間ノンストップでずっとDanger Zoneが繰り返され続ける狂った動画を見つけた。318件もいいねがついているので、きっと需要があるのだろう…


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