読書家は人間力が高い?本を読むことで「感情コントロール」力が身につく。
本を読むことは、情動を育てるもっともよい方法だ。直接、いろいろな人と触れ合いながら学ぶこともできるが、多くの書物と向かいあい続けることも、人の感情を大いに育てる力になる。本を読んでいると「頭でっかち」と言われることもある。多くの場合、読書家は内向タイプなので、対人関係がうまいようにも見えないだろう。
しかし、本を読むことと「感情のコントロール」には密接な関係があるのだ。哲学・宗教学の著作が多い白取氏が「なぜ、本を読むと感情コントロールができるようになるか」について、興味深い指摘をしている。
本を読むことで受容力が育まれる
「自分の感情をコントロールするのは大人が身につけるべきことの一つである。怒りっぽい性格というものはあるが、その性格は変えることができる。本をたくさん読むことによって変えられるのだ。 特別な書物がその性格を劇的に変えるのではない。本を読んで理解する行為をくり返すことで変えられるのである。 」
「なぜならば、先にも述べたように本を読むということは異質のものをとりあえず今は理解するという行為だからだ。これには忍耐を要する。異質なものを受容しなければならない。それが感情抑制を育て、心を変える。」
真剣に本を読むことと、誰かと対面して話を聞くことは、同じことだ。本を読むということは、異質なその人の考えを理解しようとすることだ。一度で理解できないことも多いし、最終的に自分の意見と違うということが多い。しかし、まずは、その人の意見を聞き入れるのだ。本を読み進める時に、こういうことが頭の中で生じている。
短気になれば、自分の考えと少しでも違う部分を目にしたときに、読み進めることができなくなるだろう。なんだか違うよな~と思っても、それをいったん心にためおいて、そのうえで理解しようとするときに、肚が練られる。ぐっと心に湧いてくる反発の気持ちや納得できない感情を飲み込むことが必要だからだ。
白取氏はキレやすい人は、ともかく本を読んでいないと指摘する。だから、とにかく暴力団や非行少年には本を読ませないといけないと。にゃるほど、この観点は持ったことがなかった。
自分の意見とは違う本を読む
そこで、感情コントロールの一環として、読書を行うとすれば、自分の意見とは違う本を読むことも必要だろう。意識的にそうするのだ。そうしなければ、せっかくの読書の価値を半減させてしまうだろう。
ネット時代になってからは、その傾向が激しい。SNSでは自分と同じ考えの人をフォローし、その人に勧められた本を読む。検索結果はパーソナルカスタマイズされて、自分がよく見る言説ばかり上位表示されるようになる。気がつくと、自分の意見と同じ人にしか耳を傾けていないのと同じだ。
佐藤優氏と池上彰氏の本からそのことを学んだ。
あえて、自分の主張や主義と違う見方に耳を傾け、筆者がなぜそう主張するのかを理解しようとしなければ、いつまでたっても感情コントロールの技術は身につかない。
そうだ、リアル書店に行こう
このことを考えていて、ちょっと反省する点があった。それは、本の入手先がAmazon一辺倒になりつつある現状だ。
Amazonは非常に便利で、重宝しているが、その一方でデメリットもある。★レビューの数で読む本を選んでしまうことがある。実際に読んでみないと何もわからないのに、少人数の人のネガティブな意見に引っ張られて、異質な考えを理解するチャンスを逃している。
反論が多ければ多いほど、それは異質なものに触れる機会なのかもしれない。直接手に取れば、語り掛けてくる本も、さすがに表紙イラストだけが並ぶAmazonでは、その声が聞こえない。時にはリアル書店に出かけて、色々なことを語り掛けてくる本たちに耳を傾けるのも大事なぁと思ってる。