失敗から学び強くなる!「奇跡のレッスン 将棋 森内俊之」
各分野の一流講師が、次の世代に経験や技術を教え込んでいく7日間の「奇跡のレッスン」。今回は中学校の将棋部に森内俊之(九段)がやってくる。教わる生徒たち、公立中学校なので、将棋部の強豪というわけではない。将棋部を選んだきっかけを聞かれて「他の部活はできないと思った」と答えるのがかわいい。
普通の部活動に、プロの棋士がやってくるというのが面白いのだ。それでも、7日間のレッスンは生徒たちにとって一生の思い出になるだろう。森内氏が将棋を教えつつ、人生を教えているって感じだったもんね。中学生相手とはいえ、時折垣間見える森内氏の抜群の能力と、謙虚な姿勢に好感を持った。前編・後編で100分になる番組だが、なかなか見応えあり。
失敗から学ぶ大切さ
面白かったのは、森内氏が4チームに分かれた生徒たちと多面差しをする場面。4つの盤を回りつつ、次から次へと駒を動かし、なおかつ、すべての対局を振り返ることができる。また、生徒たちの対局(盤面を撮影)を同時に見ながら、それぞれの生徒の持ち味や弱点を探っていく。
棋士の頭脳ってどうなっているんだ。
森内氏は印象的だった試合をもとに、振り返りを行い、どんな一手を打つべきだったかを生徒たち皆で考えさせる。将棋は丁寧に振り返りを行って初めて強くなれるのだ。この大事な教訓を教え込むために、森内氏は2009年の羽生名人との決勝戦の映像を生徒たちに見せる。これは、森内氏が優勢だったものの、一手のミスを境に負けてしまったという、いわば「大逆転」劇だ。
自分がミスした局面に対し、どの一手が良かったかを生徒たちに考えさせる。私だったら、こんな大事な勝負で逆転負けした自分の映像は二度と見たくない。自らの失敗を教材として使うとは、なんという器の大きい人だろうと感動した。この講義を機に、生徒たちの表情も変わり始める。
森内氏の強さは、自分の失敗を正面から見つめて修正することにある。うまく行ったときよりも、うまく行かなかったときのほうが大事だ。失敗から学ぶ人のほうが最後には強くなるのだ。生徒たちは、この教訓を心に刻み込んだだろう。将来、棋士になる人は、生徒の中にはいないかもしれないが、この教訓は忘れがたいものになったはずだ。
一人一人の弱点を修正する
レッスンの7日目は、他の学校の将棋部との対外試合だ。レッスンが進むにつれて、森内氏の指導は一人一人の弱点を修正していくことに向けられていく。生徒たちの対局を同時に観察し(これがすでにすごい)、各生徒の弱点をあぶりだすのだ。
ある生徒は、気持ちが優しすぎて、強く攻められると引いてしまう。また、別の生徒は詰将棋は得意なのに、時間制限がある局面では読み手を誤ってしまう。奇をてらった手を打って自滅する生徒や、攻撃重視型で守備が崩される特徴を持つ生徒もいる。
ほんと、将棋って性格が出るんだね。
森内氏は、それぞれの生徒の局面を振り返り、正しい一手を考えさせる。指摘する時は、歯に衣着せぬ物言いだ。プロを目指しているわけではない、普通の中学生にとっては指摘は手痛いかもしれない。でも、これがやがて財産になる。中途半端にほめて終わらせずに、きちんとしたフィードバックを与えることは、愛情なのだ。
自分の弱さを理解した生徒たちは、それぞれ、自分独自の強化メニューを作り弱点を修正しはじめる。時間制限や本番のプレッシャーに弱い生徒は、家族に手伝ってもらい時間を測りつつ詰将棋をこなすトレーニングを繰り返す。弱点を指摘された後に、自分自身でそれを克服するトレーニングを考えたのがエライ!強くなるための積み重ねはこういうことなんだ。
最終日の対外試合では、各生徒が森内氏の教えを実戦で活かすことができたようだった。最後のお別れで、森内氏からサイン入りの扇子をもらう生徒たち。わずか7日間とはいえ、プロに教わる機会というのは人生を変えるような力になるはずだ。これは、うらやましい経験だ。
学び続ける人しか教えられない
この番組ですっかり森内氏のファンになってしまった。しゃべり方も、たたずまいも決して格好いいとは言えないが(失礼!)必死で研鑽を積み、学び続けてきた人だけが教えられる深みがあった。一流とはどういうものかを見せつけられた。
森内氏は羽生名人と同期。森内氏が25歳で名人位に挑戦した時には、羽生氏はすでに7冠だった。大きく差をあけられた状態から、森内氏が30代で名人位を得るまでの道は平たんではなかった。とにかく負けた対局を分析し、ひとつひとつ悪手を改善していく地道な努力が必要だったのだ。森内氏は何も考えなくても強い天才型ではなく、努力・努力で強くなった秀才型だ。
だからこそ、中学生の将棋部のような子供たちにもわかりやすく教えられるのだろう。森内氏自身が学び続ける人だからこそ、教えのプロになれるのだ。私もそうでありたい。やっぱPDCAが大事だ。
とても興味を持ったので、これから森内氏の自伝本を読んでみようと思っている。影響受けやすい>自分・・・。
大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq)